「JOKER」(CX火21)の感想です。

初見時は、まあまあかな…と思いましたが、その後見ているうちに、とても展開が気になってきました。そして、公式で堺雅人さんが言っている通り、裏の仕事人でもない、正義として是としてやっているわけでもない、苦悩する人間である伊達があまりにも悲しくてかっこよくて。

堺さんの魅力が堪能できる作品だと思います。
堺さんは演技がうまいけど、これまでのTVドラマの役だと、どちらかというと優柔不断なふつうの人的役だったり、優等生になりたがっている人的役だったりして、あまり胸に来ない感じでした、私的には。ただ「ひみつの花園」みたいな普通の人役は、「婚外恋愛」とか「新選組!」とかよりは好きだったけれども、堺さんの演技のうまさとか、そういう深さみたいなものが、そこまではTVドラマでは出せていないように思っていたのが、この作品はまるで堺さんのために書かれた作品のよう! アテガキなんですかね?

舞台作品みたい…。でも舞台作品よりも、いわゆる典型的なヒーロー的な描き方もあったりして、ますます堺さんのかっこよさが引き立つ、みたいな。

傷を負って生きてきて、それでも懸命に生きていて、いわゆる「正義」をしていてもまだ迷いがあって、その迷いは「GOLD」で言うところの、全てを他人や社会に八つ当たりするような迷いとは正反対で、「ダークヒーロー」的な行為をしているのに、自分の中ではすごく考えていて苦しんでいて。あんなにつらそうに人を裁くのなら、裁くのをやめたほうが楽だろうに、苦しみながらもさばくのがまるで自分の償いであるかのように生きている…。

いやあ、堺さんの魅力満載ですね。
今話見ていて思ったけど、堺さんさあ、「永遠の仔」のモウルをやったら、最高だったのでは? あんなに優しくて繊細で、心がきれいで、すてきで、でもどうしても自分を責めて、そして他人に尽くして、自己が不安定になりながらも他人にどうしても尽くしてしまう。優希を愛していながらも、ただ見つめることしかできない、自分には資格がないと思い続けてしまって、でも優希の体を見て、苦しいように見つめるという「永遠の仔」である意味唯一のラブシーンも、堺さんなら、その意味が見ているものに伝わるように思います。
映画化するときは、堺さんで!

渡部篤朗はそりゃすごくうまい俳優さんなんだけど、ジラフ的な俳優なので、モウルはやっぱり苦しいものがあったように思うなあ。もちろんうまいからうまく演じられていたけど、モウルの苦しいまでの、息がつまりそうなまでの献身とか憧れとか、いまだに表面でジュクジュクした傷の痛みとか、そういうものが、そこまでは繊細には描けていなかったように思う。

映画化するときは、モウルは堺さんで。そしてジラフは渡部篤朗でもいいし、でもビジュアルのかぶらなさを考えると、もう少し精悍な顔立ちの役者の方がいいようにも思うので、堤真一とかどうかな? 絶対にうまそう。 大沢タカオでもいいと思うけど、大沢タカオは、モウルでもジラフでもいけそうだな。

あー。この話、ほんと、繊細な話です。

そして錦戸もとてもはまっている。「流星」とかよりも、こういう影を負った子の役の方が向いている。流星も影を負っているけど、苦しい過去がありながらも、根が明るくて優しくてたくましく生きていて、そういう役にしては、陰が表現しきれていなかった。

錦戸は、光対陰でいったら、陰が多い方の役の方が輝くと思う、「ラストフレンズ」しかり。どこか狂気を帯びているのに、でも明るくてやさしい的な。完全に伊達的役でも、明るすぎる役よりはいいと思うが、それよりもできるならば、この役のように、切ない過去や思いを抱えつつも、けなげに明るく生きている人、的役がはまる。
ジャニでいえば、「魔王」の生田とーまがやった役とかよさそう。生田とーまは、陰がある役よりは、明るい役の方が魅力が発揮できるように思うので、「魔王」とか「ハチミツとクローバー」の役を錦戸にやらせ、逆に「流星」を生田とーまにやらせたほうがよかったのではないかと思う。