実はRENTを見にHollywood Bowlまで行っていたのですが、全然感想を書いていませんでした。

なんとなく書きづらいので、とりあえず備忘のために、箇条書きで。

・会場がすごく開放的でここちよかった。寒かったけど、あのすがすがしさは完璧。日本でもああいう会場があればいいのに。

・屋外だと音響が悪いのではないかと思ったが、日本の劇場は音響の悪いところが多いので、日本の屋内劇場よりかえって音響がよいように思った

・意外と迷わずたどりつけた

・RENT Tシャツが30ドルで売っていて、生地がものすごく薄くてやすっぽかったが、つい買ってしまった。Hollywood Bowl用のプリント(Hollywood Bowlと日付が書いてある)で、「this diva needs her stage!」と書いてあったので、ウケた

(ここから本題)
・MarkがAnthonyそっくり。OBCのMarkに非常に沿った演技。うまいが、ただし薄い。

・RENTが始まる前に、観客総立ちで、Roger役の人がギターでアメリカ国家を弾いてみんなで歌っていた。

・Rogerの歌を聴いたときに、どこかの劇評で、「Adam Pascalは確かにハンサムだ。でもハンサムなのにどこかうつろで、そこがRogerにとても合致していて、彼のOne Song Gloryはとても美しい」というのを読んだことを思い出した。AdamのRogerのOne Song Gloryは、いらだち、焦燥感、音楽に対する情熱、生きる力、熱い思い、熱、そしてどこかうつろな感じもある。いろいろな感情があって、そのそれぞれの感情がとてもきれいに生きているOne Song Gloryだったな、とかえってAPの歌を思い出してしまった。

ということで、要は、様々な感情までは歌い込めていないようなOne Song Gloryに感じてしまったわけです。今回の人については。特にうつろさがなかった。恋人が「We've got AIDS」と書き置きして一緒に住んでる自宅のバスタブで手首切って自殺して、ショックで半年ひきこもっている人に見えないというか、そういうRogerの苦しさというのが、伝わってこなかった。

でも、Broadway千秋楽のRoger役の人も、うつろさとか弱さとかはあまり感じられず、まあ私の好みではないが、あれはあれでRogerではあるとは思うのだが、今回の人は、いらだち、熱が前面に出ている感じだった。

私は、強いこといったり、ひどいこといったりするけど、でも心が弱くて優しいAPのRogerが大好き。

でも、今回の人は、最初は、「え?」って思った(ただ歌はとてもうまいので、One Song Gloryとしてはうまい。ただ単にRogerの複雑な気持ち、ごちゃまぜな気持ち、いろんな気持ちの中で、でもそんな怒りとか焦燥感を歌っているように見える中ですらも、音楽への情熱や生きる力、強さを感じさせるような、そんなすばらしさ、まではいっていないというだけ)。
けど、はっきりって、今回のキャストの中で、最後はRogerが一番好きだったw

なんか不器用さが伝わってくるような感じで、とてもすきだった。

Markにしろ、Rogerにしろ、全てのキャストにいえることだけど、魂が震える、RENTとしての完成系を考えたら、それはもう、Tourのときのキャストが一番それに近いのだと思う。なんといっても、APとAnthonyは、OBCで、各々の個性がキャラクターに入り込んでいる上に、さらに若いときの勢いだけではなく、年を経てから重みが出ている。

たとえば、Will I?で家を出るRogerっていうのは、これはもう、Broadwayに復活した以降のAdamぐらいじゃないと、出せないのではないかって思う。Adamの初演時も、ここまでの感じではなかったと思う。

あんな思いを抱えて、半年ひきこもって、でも彼女が自殺する前だって、うまくいかないと思っていたと思うようにも思うし、情熱があって生きる力が強さがいっぱいあるのに、それをどこにぶつけていいかわからないというか、何をやってもうまくいかないように思って、そういう空虚感みたいなものが、HIV感染で彼女が自殺したことを機にどんどん広がっていったんじゃないかって思う。

でもそんな中でも、思ってくれる友達もいて、自分でもこれじゃいけないと思っていたはずだろうけど、でもそれでも抜け出せなくて、そんな中、ふとMimiに会うことで何かがかわって、自分の感情を一瞬だけかもしれないけど、Mimiに対して顕わにできて(Another Day)、そんな中で、

I can’t control my destiny
I trust my soul, my only goal is just to be
There’s only us, there’s only this
Forget regret or life is yours to miss
No other road, no other way, no day but today
ってあんなに優しく、みんなが歌ってくれて、

みんながいるんだって思えるし、どんなに過去を悔やんでも、明日が不安で、AIDSになって死んでいく自分が怖くて、周りから見捨てられるのが怖くて、どうやって生きていけばいいか不安で、何をすればいいかわからなくても、でもそんなんでも、こんなにもすばらしい今がある、それを支えてくれる人がいる、自分を信じて前をみていきていきようと思える力があるって、そう感じられて、

でも、それでもAnother DayではRogerは強がってしまって…。

そんな中、きれいなハーモニーのWill I?では、
Will I lose my dignity, will someone care?
Will I wake tomorrow from this nightmare?
って、こういう歌詞は歌詞なのに、逆に
尊厳を失うほどの状態になって誰もが構ってくれないか不安でも、
明日こそこの悪夢から目覚められるのか不安でも、
でも、だからこそ、家を出るんだ、踏み出すんだっていうRogerの思いが伝わってきて、

でも、ヒーロー的な行動をするわけでも、かっこつけるわけでもなくて、
怖がる気持ちはまだありながらも、ふとジャケットをもって立ち上がる、そのRogerに涙してしまう。

毎回見る度に思うのだが、あそこで終わりでもいいのではないかというぐらい、すばらしい場面だと思う。

箇条書きで書くつもりが、Another Day→Will I?で恐ろしい長さになって、しかも、これHollywood Bowlの感想じゃなくて、Adam PascalのRogerへの感想ですが、まあいいや。

で、いいたいこととしては、こういうことを、さらにこれだけにおさまらない、様々な思いっていうのを、あのわずかの演技で体現するわけですよ。それこそが深み。
俳優としての技能の深みもあるけど、人間に対する思いっていうのもそこには必要だし、RENTのストーリーとRogerのキャラクターへの理解も必要だし、だからいいたいこととしては、これができるのは、やはりAPしかいないと思うんです。

Anthonyにしても、One Song Gloryの歌に入る前に、Chan your mindってRogerに言うけど、あれっていいようによっては偽善とかおせっかいとかそういう風に思えるだろうけど、年を経たAnthonyの台詞だと、本当にRogerを思っていて、でも自分はこういう、世間的なありふれたことしか言えなくて、もっと何か言いたいのに、Rogerに本当に前を向いてほしいのに…、という思いまで伝わってくるし、

Goodbye Loveの深みは、AnthonyとAdamの二人でしか出せないだろうし…。

とまあ、結局、完成したRENTを見たければ、APとAnthonyのでもう見れたし、あれ以上は多分ないようにも思うんです。

でも、違うの、いいたかったのか、ここからなんです。
いいたかったのは、そんな感じではあるけれども、でも、若さの勢いっていうのは、すごく今回感じられた。

APのRogerもAnthonyのMarkも人間としての深みがすごい。一言一言、億にはいろんな思いが踏まえられている。
でも、若さの勢いっていうものもある。若いと経験がないと、あえて何も考えずに突っ走れるところがあって、それが逆に強さというところもある。

あんなにいらいらしてどうすればいいかわからないRogerでも、若さの勢いがあるからこそ、がむしゃらに突っ走れるからこそ、あんなに絶望していたのに、あんなにも前を力強く見て生きていくことができる、こんなにも人生が輝くことができる。
がむしゃらに生きられる強さ、すばらしさ、勢いっていうのが、今回の舞台ではすごく伝わってきて、そこは若いキャストの強みだな、と思った。これはこれで、また深みのある舞台に劣らない、すごい強さだと思う。

今回のRoger役の人には、そういうがむしゃらさ、突っぱしり感が感じられた。舞台が進むにつれて、どんどんぐいぐい観客の思いを汲んで、どんどん強さを増していったようにも思うし、もっといっぱい舞台経験を積んだら、ものすごーくすてきな俳優さんになるだろうなあと思った。

かなりこのみなRogerでした。

長くなった。

・MimiのOut Tonightは恐ろしいほどのうまさだった。歌がうまくて、華がはんぱなさすぎる。おそろしいまでの華だった。
ただ、それ以外の点ではMimiではなかった。Mimiではなく、弱くなく、不安定な部分がなく、一人で健全に生きていける人で、あれはMimiではありません。

・Maureenのパフォーマンスは最高だった。あんなに完璧にきまっていて、かっこよくて、面白いパフォーマンスを見るのははじめて。ただMimiのOut Tonightの完成度は、これと同じぐらいのすごさだった。

だた、こちらもMimiと一緒で、Over the moon以外はMaureenらしさがない。たとえばTake me or leave meは、Joanneとともにものすごくうまかったけど、Maureenって、「私はナンパなんかしたことない。いつもナンパされるの!」っていったり、「この歌姫にはステージが必要よ!」っていったり、「道を行けばみんながBaby, so sweetっていうの。男も女もみんな私に夢中になってしまうの。でも仕方ないわ。私が魅力的だから」っていう、そういうものすごい自信の人なんだよ。それなのにまったく嫌みがない!

そういうMaureenらしさがなかった。すさまじい自信が感じられなかった。ただ歌とパフォーマンスは恐ろしいまでに完璧だったが。

・Gwenは、Gwenの他にもう一人、ふくよかな、高温な人がいて、その人と二人でSOLソリスト部分を歌う感じで、最後の最後はGwenだったけど、なんかそんなに高温部分が私が聞いたときは普通な感じだった。

・AngelはなんとTellyですよ。ものすごくきれいなAngel。白い鬘でほんときれい。こんなきれいなAngel初めて見た。で性格も優しいし、美しいし、まさにAngelだった。でも、美しすぎてアクがなくて、ある意味目立たなかった。

TellyはLife Caféの店員役のときのような、はじけぶりがAngelでは出ていなかった。もっと遊んでもいいように思った。ただ、歌もダンスももちろんうまかった。創造よりTelly,歌もダンスもうまいんだね。そしてアンサンブルの時は英語にアジア系なまりを感じたのに、Angel役では全然感じなかった。

・Collinsについては特に感想がなかったような機がする。思い出したら書く。

・まだまだ書き足りないので、思いついたら、改めて書きます。