「というわけで、さっそく釜山行きのチケットをとってしまったわけだが、後悔はしてないよな」
「私はどこでもいいのよ、旅行ができるなら。それにしても本当に安いわね、連休期間中なのに」
「なにしろ往復で二万円強だからな。日程をずらすのが可能なら、15000円ほどで行けてしまう」
「新幹線の片道キップと同じくらいなんだから、なんか国内旅行がバカバカしくなっちゃうわね」

もっとも日本語が使える安心感と、それができないストレスをどうトレードオフするかになるが。
ただ物価を考えると、総額では圧倒的にアジア圏の旅行が安くつく魅力に勝てないだろう。

「とはいっても、最近の韓国の物価は高くなってるんだよな。無駄遣いはしないようにせねばな」
「どうせ屋台めぐりするんだから、そんなに気にする必要はないわ。釜山なら海産物かしらね」
「俺は、友人がすすめるアワビの雑炊を食べたいんだよ。800円程度で充分に満足できるらしい」
「こっちで食べたら倍以上は確実にするよね。見てよ、うにスープってのもあるわ。どんな味かしら」

残念ながらアレルギーがあるため、ウニ類は口にできない。子供のころには出なかったのだが。

「あれは二十歳すぎてくらいだったかなあ。とある飲み会で食べたウニに思いきりあたったんだよ」
「それってアレルギーじゃなく、たんにネタが古かっただけじゃないの。そんなの聞いたことないもの」
「俺も最初はそうかと思ったんだが、数年後にまた食べてみたら同じ症状だった。ジンマシンとかな」
「かわいそうに。あんなに美味しいのを二度と味わえないのね。どんなに哀しい人生か想像できないわ」

そんなことをちっとも思ってないくせに。とにかく、顔面が真っ赤にふくれあがるのは本当にゴメンだ。

「そういや女性アレルギーなんて言葉もあるが、あれはどこまで真実なんだろうな。考えられんよ」
「その反対なら結構あるかもね。じつは私も、それらしきものはあったのよ。あなたと出会う前にはね」

そのわりには、アレルギー反応は出なかった。ワクチン接種を口移しで念入りに行ったせいかもな。