ふらりと立ちよったショッピングモールに、大型の笹が飾りつけられている。群れる子供たち。

「一所懸命に書いている姿って、やっぱりかわいいわね。ちょっと覗き見しようかしら」
「そっとしてやれよ。そばの親に叱られちまうぞ。でもなんだなあ、いい光景だ」
「希望に満ちあふれているからね、どの子供も。願い事がたくさんあるのは、すばらいいことだわ」

笹にくくられた短冊をながめると、じつにシンプルな言葉でうめつくされている。
たどたどしくも力づよく、かつ大きく書かれた願いはどれも叶えてやりたいほど、愛らしい。

「見ろよ、これ。メロンって書いてるぜ。あまりにも素直すぎて、感動しちまったよ」
「あなたなら特盛ラーメンってかくところよね。いいお友達になれそうで、よかったじゃない」
「わるいが、いまはその気分じゃない。むし暑い時期にこそ、かるく10皿ほど寿司をたべたい」
「どっちでもいいけど、もうちょっと夢のある願いを書きなさいよ。ほ
、これも素敵だわ」

きれいなお嫁さんになれますように、と小さな文字で名前つきの短冊を彼女がさした。
花嫁姿は、いつの世も最高の美を演出するから心配する必要はない、と裏書きしたくなった。

「逆に、素敵なお婿さんになりたいなんて願いはないんだな。まあ、あたりまえか」
「いくら男女平等だといっても、なんかそれはね。本当はどうでもいいはずなんだけど」
「とりあえず俺たちも書いてみるか、せっかくだからな。いっとくが予算の範囲内で頼むぞ」
「バカ。クリスマスじゃないんだから。でも、あなたがそういう
もりなら、書いちゃおかな」

くだらない失言をやってしまった。おもわず臨時ボーナスが出ますようにと、書きたくなるほどだ。

「冗談にきまってるじゃない。私はこの瞬間だけは子供に戻るんだから、安心しなさい」

くくられた短冊には、私の彦星様がいつまでも光を絶やさぬようにと綴られていた。
すかさず、織姫様を照らす燃料を台所で一生作ってくれますように、とその隣にくくりつけてやった。