「いやあ、今夜はしこたま飲んでしまった。それにしても下品な食事会だったな」
「そうねえ。あんな話題ばっかりで正直、ちょっと席を離れたかったわ。でも楽しかったけど」
「やっぱり少し年齢が高くなってしまうと、そのへんの歯止めがきかなくなるんだろうかな」
「男女関係なく喋ってたもんね。私は女友達だけでも、あまりそういう話はしないから」

といいながら舌をだす彼女。まあ、それはよしとしておこう。よけいなことをいう必要はない。

「でもな、男の大半があんな話題を四六時中しゃべっているわけじゃないからな」
「わかってるわよ。というより仕事の話がまったく出なかったのがすばらしいわ」
「これが男だけなら違うんだけどな。たぶん会社の愚痴や政治の話になる瞬間がある」
「女同士だと、そうねえ。やっぱり彼氏の話とか会社の話とか。あまり変わらないかもね」

どこかしら互いに男女の差を意識することで、下品なトークにも花がさくのだろう。
それは自身の体験上の自慢であり、他人との比較対象としての情報収集でもある。

「みんな、ほかのやつらがどうしているのか気になるのさ。そういったことは、とくにさ」
「アルコールが入ってなければ、なかなか踏みこめない内容よね。明日には忘れてるのかしら」
「どうだろうな。案外、そういうことは覚えているもんだよ。ふとした瞬間に思いだすのさ」

なんかイヤラしいわね、とすこし顔を赤らめる。さんざんスケベな話へ聞き耳を立てたくせに。

「学生時代にもどったようで楽しかったわ。でも、いっとくけど私は清純だったんだから」
「わかってるさ。大和撫子を地でいくかのようなお嬢様だったんだろ。そら、わらってみな」

さっそく箸をテーブルに転がしてみた。おい、それで俺の腹の肉をつまみながら笑うのはよしてくれ。