帰宅ラッシュ時の地下鉄駅構内。ほとんどの者がケータイやスマホをいじりながら、電車をまつ。
手持ちぶさたをうめる最強のツールだが、どこかしら均一化されたその光景に違和感をおぼえた。
「皆がみな、首をすこしうつむかせながら、スマホに向かってるんだよな。なんか異様でさ」
「あらためて眺めてみると、妙な気分にさせられるわね。私は本を読むからいいけど」
「たまには外の景色を見ながらぼうっとしてもいいじゃないか。地下鉄だったら見応えはないけど」
「なんだろうね。べつに否定する気はないけど、クセってやめられないものだから」
いま、これらを強制的に取りあげられたら、生活リズムをくずす者であふれるだろう。
ネット社会は刹那的だ。あらゆる情報が瞬時に流れるなか、正常な判断などできるのだろうか。
「たぶん、それに取り残されたくない無意識が、スマホを手にさせるのかな。疲れちゃうわ」
「君はマイペースだからいいけど、世の中の大半は他人の情報量を気にするんだよ」
「あら、私が気にしてないとでもいうの。たしかに筆不精というかメール不精なところはあるけど」
緊急時以外は、メールをほとんど送らない彼女。一緒に住むのだから必要ない、という。
「たしかに四六時中、連絡をとりあっているのもおかしな話だな。窮屈でしかたない」
「あなたなんか、とくにそうじゃない。丸一日、私と一緒にいることないでしょ」
「そうだっけ。べつに嫌ってるわけじゃないからな。なんだろうな、一人の時間がほしいだけさ」
「妙なところで神経質だからね、あなたは。それがわかっているから、不必要なメールはしないのよ」
なるほど。それが理由だとはしらなかった。それではとばかりに、今夜の献立のリクエストをメールする。
「当方、豚とキャベツを大量に盛った塩焼きそばにキュウリの漬物、味噌汁は赤ダシを希望」
「ラジャー。焼きそばにはニンジンにタマネギ、ニラ、モヤシをいかがされるか、どうぞ」
「プラス、ニンニクを少量入れたし。了解の合図は左目にてどうぞ」
すると右目をウィンクしてきた。同時に口をとがらせたので、食後の牛乳で回避と打電しておいた。
手持ちぶさたをうめる最強のツールだが、どこかしら均一化されたその光景に違和感をおぼえた。
「皆がみな、首をすこしうつむかせながら、スマホに向かってるんだよな。なんか異様でさ」
「あらためて眺めてみると、妙な気分にさせられるわね。私は本を読むからいいけど」
「たまには外の景色を見ながらぼうっとしてもいいじゃないか。地下鉄だったら見応えはないけど」
「なんだろうね。べつに否定する気はないけど、クセってやめられないものだから」
いま、これらを強制的に取りあげられたら、生活リズムをくずす者であふれるだろう。
ネット社会は刹那的だ。あらゆる情報が瞬時に流れるなか、正常な判断などできるのだろうか。
「たぶん、それに取り残されたくない無意識が、スマホを手にさせるのかな。疲れちゃうわ」
「君はマイペースだからいいけど、世の中の大半は他人の情報量を気にするんだよ」
「あら、私が気にしてないとでもいうの。たしかに筆不精というかメール不精なところはあるけど」
緊急時以外は、メールをほとんど送らない彼女。一緒に住むのだから必要ない、という。
「たしかに四六時中、連絡をとりあっているのもおかしな話だな。窮屈でしかたない」
「あなたなんか、とくにそうじゃない。丸一日、私と一緒にいることないでしょ」
「そうだっけ。べつに嫌ってるわけじゃないからな。なんだろうな、一人の時間がほしいだけさ」
「妙なところで神経質だからね、あなたは。それがわかっているから、不必要なメールはしないのよ」
なるほど。それが理由だとはしらなかった。それではとばかりに、今夜の献立のリクエストをメールする。
「当方、豚とキャベツを大量に盛った塩焼きそばにキュウリの漬物、味噌汁は赤ダシを希望」
「ラジャー。焼きそばにはニンジンにタマネギ、ニラ、モヤシをいかがされるか、どうぞ」
「プラス、ニンニクを少量入れたし。了解の合図は左目にてどうぞ」
すると右目をウィンクしてきた。同時に口をとがらせたので、食後の牛乳で回避と打電しておいた。