「そういや、一緒に住みだして何年になるっけ」
「そうねえ、三年くらいかしら。なに、そろそろ私のこと飽きたの」
「バカ。そうじゃなくて、引越しでもしようかなと思ってね」
「いきなり急だわね。なにか変なもの食べた?」
まるで本気にしない彼女に、ちょっとした気分転換の旨をつたえる。
このまま安アパートで暮らしつづけることに、なんとなく疑問を感じたからだ。
「私はべつに気にしないけど。家賃が安いから、いろいろと遊べるしね」
「金銭面ではメリットはあるけど、なんかすっかり飽きちゃってなあ」
「あなたは何年すんでるんだっけ」
「丸10年。学生のころからだから、俺も部屋とともに歳をとるわけだよ」
親元をはなれての初めての一人暮らし。思えば、この部屋でいろいろあった。
その間の喜怒哀楽が部屋中にしみついているかと思うと、すこし感慨ぶかい。
「私が最初に思ったのは、なんて殺風景なのかしらってことだったわ」
「何かをためこむクセはなかったからな。布団と冷蔵庫があればいい」
「気がつけば、私の荷物ばかりになってたわね。占領された気分はどう」
「とくになんとも思わないよ。整理と掃除さえしてくれれば」
「なんか私の部屋にあなたが居候しているみたい。ごめんなさいね」
だからこそ、彼女の思うように着飾れる部屋へうつりたいと思った。
そして次へのステップを踏むためにも。
「どうする。俺は本気で考えているよ、引越しを」
「うーん、私はまだいいかなあ。だって、まだたった三年だもの」
すこし考えこんだ顔をしながら、彼女はつぶやいた。
「もっとね、この部屋の空気を吸いたいの。感じたいのよ、あなたに何があったのかね」
するとクンクンと体を嗅いできた。犬の真似は結構だが、もう充分にマーキング済みだよ。
「そうねえ、三年くらいかしら。なに、そろそろ私のこと飽きたの」
「バカ。そうじゃなくて、引越しでもしようかなと思ってね」
「いきなり急だわね。なにか変なもの食べた?」
まるで本気にしない彼女に、ちょっとした気分転換の旨をつたえる。
このまま安アパートで暮らしつづけることに、なんとなく疑問を感じたからだ。
「私はべつに気にしないけど。家賃が安いから、いろいろと遊べるしね」
「金銭面ではメリットはあるけど、なんかすっかり飽きちゃってなあ」
「あなたは何年すんでるんだっけ」
「丸10年。学生のころからだから、俺も部屋とともに歳をとるわけだよ」
親元をはなれての初めての一人暮らし。思えば、この部屋でいろいろあった。
その間の喜怒哀楽が部屋中にしみついているかと思うと、すこし感慨ぶかい。
「私が最初に思ったのは、なんて殺風景なのかしらってことだったわ」
「何かをためこむクセはなかったからな。布団と冷蔵庫があればいい」
「気がつけば、私の荷物ばかりになってたわね。占領された気分はどう」
「とくになんとも思わないよ。整理と掃除さえしてくれれば」
「なんか私の部屋にあなたが居候しているみたい。ごめんなさいね」
だからこそ、彼女の思うように着飾れる部屋へうつりたいと思った。
そして次へのステップを踏むためにも。
「どうする。俺は本気で考えているよ、引越しを」
「うーん、私はまだいいかなあ。だって、まだたった三年だもの」
すこし考えこんだ顔をしながら、彼女はつぶやいた。
「もっとね、この部屋の空気を吸いたいの。感じたいのよ、あなたに何があったのかね」
するとクンクンと体を嗅いできた。犬の真似は結構だが、もう充分にマーキング済みだよ。