267『ザシス』 | ブログのタイトル何にしよう…

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ザシス

              佐伯 遥人

僕はもともと友達を作るのが苦手だ。

中学になってからは、小学校からの友達の仁志和真くんくらいしかほぼ話し相手はいない。

和真くんのお父さんは有名な小説家で、小説を書くのが趣味の僕とは妙にウマが合った。

小説のネタを思いついた時のために常にICレコーダーを持ち歩いてて、少し引かれた事はあるけど、それほどクラスで嫌われていた覚えもない。

六年生の時に、天然パーマをバカにされていじめられた事があったけど、先生が注意してくれたらいじめは収まった。

その程度のものだ。

 

中学三年の九月

あれが始まった日の事はよく覚えている。

いつものように休み時間に教室で和真くんと話してると、誰かが突然僕に後ろからプロレスのスリーパーホールドをかけてきた

「うりゃあっ」

スズキくんだ。

「おーし頑張れ」

「ぐるじ…やめ…」

身体の大きいスズキくんは、太い腕でぐいぐいと僕の首を締め上げてきた。

「負けるな!頑張れ遥人!」

とコダマくんが僕に超えをかけた。

笑いながらかけてきたその言葉に 額面通りの意味はない。気づけばコダマくんは足で僕を蹴っていた。

「や…やめぐえ…」

苦しそうにしている僕のリアクションが面白かったのだろう。クラス中で笑いが起こった。和真くんも苦笑いしていた。

そろそろ離してくれるかと思いきや、そのままズルズルとバルコニーまで連れていかれた。

そして いすを台にして僕を手すりの上に持ち上げようとしている。

バルコニーの外に僕を吊り出すつもりなのだ。

「やめろ鈴木!何やってんだ あぶねーだろ!」そう言いながらコダマくんや仲間のカワセくんそしてシゲマツくんはあきらかに僕を吊り出すのを手伝っている。

スズキくんは僕の両脇に後ろから手を入れて両手で僕の左腕を掴んでいる。

「こうすれば安全だから 俺を信じろ」

何が安全だ! 悪ふざけにも程がある ここは三階だ!

特に制してくれそうな人は誰もいない むしろちょっと危なっかしいコントでも見ているようにみんな笑っていた

和真くんも笑っているが心配顔だ

そしてついに僕は三階のバルコニーから吊り出された 脚が完全に宙ぶらりんになった 小さな悲鳴が上がる

僕は必死にスズキくんの肩にしがみついた

「レスキューッ!」そう叫ぶとスズキくんは僕を一気に引き上げた

教室の中からは安堵まじりの笑いがどっと起こったように聞こえた

和真くんが駆けよってきた時も僕は放心状態だった

なぜいきなりこんなメに遭うのかさっぱりわからなかった

でもこの日から僕に対する四人のいじめは始まったのだ

ある日僕がローカをそうじしているとカワセくんが死んだネズミを見せてきた

そしてあろう事かそれを僕のシャツの中に入れてきた

僕の悲鳴がおもしろかったのか周囲の人はどっと笑った

シャツの裾を出してはたいてもひっかかってなぜか落ちてこない

僕の周囲をぐるりと囲んだみんなは走り回る僕を見てよりいっそう声をあげて笑った

おどけていたけど本当はあの時僕は涙が出そうな程悔しかった

 

僕をいじめていた四人の中でもコダマくんは学校一の札付きとして有名だった

クラスのみんなもコダマくんや他の三人が僕をいじめてる事は充分わかってたはずだ

でもコダマくんが恐くていじめに気づいても止めようという人は誰もいなかった

シゲマツくんには給食の時間に大量に牛乳を飲まされた

みんな言われるままに自分の牛乳を渡していた

最初は面白がっていたけど8本目あたりから教室は静まり返っていた

苦しくて苦しくて涙目になっても飲むのを止めさせてくれない

11本目を飲み切ったところで僕はとうとう吐いてしまった

みんなに注目される中 後始末も自分でやった 和真くんがぞうきんを持ってきてくれた

「……あいつらひどいな…」和真くんは僕にだけ聞こえるようにそう囁いた

いじめは毎日止む事がなかったけど 絶対にお母さんには心配かけたくないから毎日必ず学校には行ったし家では何事もないように装った

ある日 見かねた同じクラスのヤマウチくんが勇気を出して止めに入ってくれた

しかも止めてくれたのは一回や二回じゃない筈だ

その度ヤマウチくんは髪を掴まれたり殴られたり蹴られたりしていた

でも結局それはいじめをエスカレートさせる事にしかならなかった

そしてある日

僕は唇が荒れやすく その日も唇の皮をきにしていた

運の悪い事にそれにコダマくんが気がついた

「俺がはがしてやるよ」そう言うや否やスズキくんとカワセくんとシゲマツくんに身体を押さえつけられるとコダマくんは笑いながら僕の唇の皮をはがしにかかった

強引に爪を立ててわざと肉まで掴み大きくめくれるように引っぱられている

周りのみんなの顔は見えてないけど笑ってはいなかった

気づかないフリをする人もいた

「いい加減にしろよ!」ヤマウチくんだ

激痛で顔が焼ける

皮は左目の下3センチ程まで何ミリかの肉ごと一気にはがされた ボタボタと血が床に落ちた。

<2話>


クラスのみんなは、自分が次の標的になるのを恐れてか、ただ関わりたくないだけなのか、遠巻きにながめているだけだった。教室の隅っこの方で和真くんが少しだけ気の毒そうな目を向けて、でもすぐに顔を伏せた。

そのままヤマウチくんが保健室まで僕を連れて行ってくれた。ローカで ちょうど教室へ向かっていた担任の蔦先生と会った。

「先生、今佐伯くんが…。」

そう言いかけたヤマウチくんを僕は制した。大ごとにして、お母さんに心配かけたくなかったのだ。僕が階段で転んだ事を伝えると、

「そうか、気をつけろよ。」

たったそれだけ言うと、傷を確認する事もなく、先生はそそくさと教室の方へ歩き去って行ってしまった。

〈単行本〉15-16


僕は計画を淡々と遂行して行った。

 

まず手始めにスズキくんにされた事を

 

スズキくんは何度も命乞いをしたけど許すわけにはいかない

両手両脚をビニールひもで縛ってビルの屋上の端っこに座らせたスズキくんを僕は足の裏で思いきり蹴り飛ばした

絶望的な顔をしたスズキくんは情けないイモムシみたいなかっこうで空中で何度か身体をくねらせながら堕ちていくと鈍い音をたてて地面にたたきつけられた

 

カワセくんもスズキくんと同じようにスタンガンで気絶させた

カワセくんが目覚めた時には もう彼は地下室の片隅のベッドの上に裸で縛り付けられていた

カワセくんにはシャツの中に死んだネズミを入れられた ちょうどいい

彼には中世ヨーロッパや古代中国でポピュラーだった この拷問を味わってもらう事にした

僕はまず底に穴の空いた鍋を強力なアルミテープでカワセくんのおなかにしっかりと固定した

そして用意しておいた数匹のネズミを鍋の中に入れ すばやくフタをしてクリップで密封した

そして僕はバーナーでその鍋をゆっくり熱し始めた

だんだん熱くなってきた鍋の中でネズミたちは激しく暴れ出した

やがて逃げ場を失ったネズミたちは唯一柔らかいカワセくんのおなかの中に逃げ込もうと土を掘るようにかきむしり そして食い破り始めた

カワセくんのおなかの中に潜り込もうとするネズミたち まっ赤な血が鍋のスキマからにじみ出す

この世のものとは思えない苦しみにカワセくんはもがきながら絶叫した いい気味だ

<1話>

 

さぁ次はシゲマツくんの番だ

シゲマツくんには吐くまで牛乳を飲まされた

だから彼にはベッドに縛り付けてから口にじょうごを咥えさせて延々と水を飲ませ続ける事にした

そしてお腹がふくれてくるとバットでそのお腹を思いきり殴りつけた

そしてまた水を飲ませては殴りつけた 何度も何度も殴りつけた

ぐったりしたシゲマツくんは同窓会の前日にある人の家のすぐ近くの川に投げ捨てた

これらの映像を見たクラスメイト達の恐怖と後悔にのたうち回る様子が目に浮かぶ それでいい

僕のいじめを見て見ぬフリをした奴らに僕のいじめを座視した奴らに一生忘れられないトラウマが残ればいい!

<10話>

 

コダマくんは身体がごつくて丈夫そうなので まず金属バットで殴ってから スタンガンを使った

反撃されると困るので 息を吹き返さないよう長く長く当てた

<7話>


僕の顔には一生消えない傷が残っている。

コダマくんには一番痛い思いをさせられた。

だから彼には一番痛い思いをさせたかった。

僕はコダマくんを拉致するとイスに縛りつけて、指を噛まれないように口に野球のボールを押し込んだ。

そして僕はゆっくりとコダマくんの顔の皮をナイフであごからはがしにかかった。

口を開けさせているせいか肉がつっぱってなかなかうまくはがせない。

僕は思いきって深めに顔をえぐった。

顔の筋肉の組織が見える。血があふれ出す。

コダマくんが何か叫んでいるけど「うごうご」言ってるだけで何と言ってるかわからない。

でもまだ生きてる。

僕は思いきって充分にナイフを入れると渾身の力でコダマくんの顔をはぎ取った。

血の海の中でコダマくんは、まだバタバタ動いていたので仕方なく首のあたりをナイフで軽く引いたら噴水のように血が吹き出してようやく動かなくなった。

〈11話〉


スズキくんが死んだあと 僕は当時のクラスメイトたちにお別れの会を開催する旨の通知を送っていた

スズキくんは人気者ではなかったけど 久しぶりの同窓会を兼ねる事にしたら人は集まるだろうと考えた

欠席者が多ければ集まるまで延期すればいい

同窓会は必ず開く でも本当は

<3話>

 

はじめから自分の家を指定しても誰も来てくれない事はわかってるから…

同窓会をこの日に決めたのは毎年この日は母親がおじいさんの命日で家にいない事を知ってたからだ

 

まず自分をいじめた奴らを自分がやられた方法の何倍も酷いやり方で殺して それを映像に収める

そして真の目的は

<10話>

 

おじいさんの命日に僕は一緒に帰らない。

ランディとマットにご飯をあげて散歩させなきゃいけないからだ。

お母さんは早朝出かけに、彼らにご飯をあげすぎないようにと僕に言った。大丈夫。朝食はむしろあげない。お昼にしっかり食べてもらわなきゃいけないから。


お母さんを見送ると僕はすぐ準備に取りかかった。

同窓会の会場になる客間の窓には鉄柵がついていて逃げる事はできないけど、目かくしと防音を兼ねて 念のため中から板を打ちつけた。

地下室に取りつけたモニターと、生中継用のカメラやルーターの接続は昨日までのうちに済ませておいた。お母さんは地下室にはもう何年も入っていない。全く気づかれる事はなく準備は終えていた。

地下室に放ったままのコダマくんの遺体を片

〈単行本〉65-66


僕にはどうしても殺さなきゃならない奴があと二人いる。

同窓会の前日にそのうちの一人はうまく家の外におびき出して捕まえてあった。

大した強くもなく簡単に拉致できた。

そしてそいつの憎たらしさは特別だ。

そして僕は同窓会会場のモニターの映像を生中継に切り替えた。

そして僕はあいつを連れてきた。

僕が憎くて憎くてたまらない奴

仁志和真くんだ。

和真くんは僕がいじめられてる時、いつも黙ってじっと見ていた。

みんなと一緒になって笑っていた事があるのも知っている。

そしていつもいじめが終わったら急に心配顔を装って優しく近づいてきた。

「……あいつらひどいな…大丈夫?」

その度、僕はいつも吐き気を催し、怒りを募らせていた。

フザケるな!親友のフリをしやがって!

偽善者め!

僕はこの日のために用事しておいたクロスボウを取り出した。

そしてそれを和真くんの顔に突きつけた。

ただ座視するだけの目など貫いてやる。

モニター越しにクラスメートが騒ぐなか和真くんは叫んだ。

でもどれだけ叫んでも誰も助けてくれやしない。

心の底から絶望感を味わうがいい。

僕も毎日そうやって絶望してたんだ。

いじめを座視した事を後悔しろ!

そう言うと僕は和真くんの目を目がけて引き金を引いた。

〈11話〉


モニターの向こうで客間のクラスメートが悲鳴を上げる中、発射されたクロスボウの矢を見ながら、僕はヤマウチくんの事を考えていた。

僕が

いじめられているのにクラスメートの誰もが知らんぷりする中、ヤマウチくんだけは違った。座視しなかった。殴られてでもいじめを止めようとしてくれた。実際にいじめが止む事はなかったけど、助けてくれる人がいると思えるだけで心が救われた。

本当にヤマウチくんには感謝しかない。

だから彼は復讐の同窓会に呼ぶような事はしない。

ヤマウチくんだけは特別なんだ。

もし彼が窮地に陥る事があったとしたら必ず僕が助ける。必ずだ。

クロスボウの矢は右目から後頭部に突き抜けて、和真くんは死んだ。

でも和真くんが死んでも終わりじゃない。

僕はこのいじめには首謀者がいる事を知っていた。

〈単行本〉97-98


そいつはわりと普通のクラスメートだった。

そいつは家が金持ちな事が自慢だったが、僕の父さんが死んで僕に莫大な遺産が入った事を知って僕に嫉妬したらしい。

ある日 僕はあいつがコダマくんたちにお金でいじめを指示しているところを見てしまった。

そして自分は手を汚さず「やれ」の一言でいじめを高みの見物をしていた。

だから今度は僕が、高みの見物だ。

和真くんが死んだのを確認したあと、僕はカメラに向かって笑ってみせた。

最後に殺したい奴がそこにいるからだ。

僕を映し出しているカメラに向かって「来い」と一声かけるとランディとマットが客間に入ってきた。

そして僕は最後の命令を下した

〈12話〉


「やれ」

その合図でーーーー

二頭の大型犬は最後の一人に襲いかかった。

頭のいい彼らは同窓会に参加していた大勢の中から標的だけをキチンと選別していた。

標的はわかりやすい目印をつけていたからだ。

なぜなら僕はそいつの案内状にだけ特別な文言を添えていたのだ。

「必ず黄色いネクタイを御着用の上お越し下さい」

〈13話〉


二頭はまっすぐそいつーーー

タミヤシンタロウくんに走り寄り飛びつくと、そのまま頭とのどぶえに噛みついた。

黄色いネクタイは瞬く間に真っ赤に染まっていった。

クラスメートたちはどうする事もできず、恐れおののき、ただ遠巻きに座視する事しかできずにいた。

ランディとマットは僕が合図するまで襲うのをやめない。

ゴリゴリ!メキメキ!バキン!

タミヤくんの頭蓋骨と首の骨が砕ける音がモニター越しに聞こえてきた。

「まだだ!」「殺せ!」「殺せ!」

「殺せーーーっ!」

                               終わり 

〈単行本〉103-104


後々考察する用に書き起こしておこう…