(RIM社のブラックベリーで日本語入力を実現)

早いもので入社から2ヶ月が過ぎておった。ハネムーンのようだった楽しい準備作業は終わり、いよいよ日本人チームのキックオフパーティーが迫っておった。ハッピーバレーのジョッキー倶楽部(競馬場)のスタンドVIPルームに香港日系企業大手のお偉さん達を100名程ご招待し、着席のフルコースディナーと、ワシらの商品であるブラックベリーにNihonGoポータルをインストールし、日本語入力を可能にした機種のプレゼン、そして最後が競馬鑑賞。癇癪持ちのCEOも挨拶と会食に参加する為に参加予定と、、、企画したマーケティング部は無事終わるまでの当面は夜も眠れぬ重要イベントじゃった。当然相当な金をかけており、勿論CEOとしては全員が大満足、翌日からは問い合わせの電話が鳴り止まんと自信満々でおるのじゃ。そのプレッシャーと言ったら半端なものではなかったと思う。そういう引込み思案のワシもこの手のパーティーで接待するのは大苦手。逃げ出したい気持ちでいっぱいであった。
(バルコニーで準備を終えた褒美に1杯。左がワシ)

皆の心配を他所に、パーティーは大盛況の内に幕を下ろし、ワシらのファースト・ミッションは夜11時の最終レースの終了と共に終了した。緊張で汗ビッショリになり、長かった1日から開放され飲んだビールは最高に旨かった。

翌日からは問い合わせの電話が鳴り止まずとは行かず、フォローアップの電話でアポ取り。当日の記念品を届けに上がりつつ押し付けがましい営業、、、少しづつ日本語入力ブラックベリーはシェアを広げていった。ある程度広まると不思議なもので、それを使って社メールを処理しとる所を見た人が "それ何ですか?" となる。特に香港中国のボーダーは当時長蛇の列で時間もかかり、そこはまさしく営業員不在の営業所、お客さんが新規顧客を獲得してくれるのであった。ワシらは紹介先を回る日々に代わり、毎日忙しく紹介先回り、配送、インストール、トレーニングと追われる日々にシフトしていった。

そんなある日、忙し過ぎてガッツリお得の同僚が破水し倒れた。そう妊娠しておったのじゃ。ワシの姉が入社研修中にツワリで大手の就職を棒に振ったのにも驚いたが、同僚は妊娠しておるのを知っておっての就職活動。産休もシッカリ給料貰おうという魂胆だったんじゃろう。それだけでも相当に図々しいが、それも総務のお茶汲みならまだしも、大手企業が勝負を掛ける新規チームの立ち上げスタッフで重要な存在。それで産休狙ってたんかい、、、汗。本当に呆れて物も言えん女じゃが、退院してきて早々何言うかと思えば、「上司が倒れたその日の夕方にはブラックベリーのチャージャーを持って病院に来て、毎日メールに追われてたんですよぉ!」「当たり前じゃ、ボケ!」と言ってやりたかった。そして秋口には狙い通りサッサと産休に入ってしまったのじゃ。また憎らしいことに、総務の定める入社に後産休を取れるようになる迄の日数をキチンと計算しておった。そんな暇があるなら、もっとガッツリ働いてもらいたかったものじゃ、汗。

     (でかい腹して1日歩き回るのはツラかった筈)

皆はそれを "ハッピー・プロブレム" と呼んでおったが、ワシにとってはチットもハッピーでなんかありゃしない。営業3名体制のところ2名しか採用出来ておらず、片方が産休。すなわちワシ1人なのじゃ。毎朝営業ツールとブラックベリーを持って出掛け、営業2件。配送はインストールとトレーニングも含めて2件。1件に2時間半は掛かる。そして帰社は夜の8時から遅い時は9時頃。それから翌日分の配送品のセットアップと、営業ツールの用意。訪問顧客のWebからビジネスパターンの解析。移動中に処理しきれなかった社メールの返信。毎日就業時間は夜中の2時から3時。やっと夕食をして帰宅といった毎日が続いた。因みに帰宅は4時、6時半には起床して仕事に向かった、、、それも毎日じゃ、涙。毎日が同僚や上司にサポートされて、特にクレームや問題を起こすことなく、恙無くこの繁忙期を乗り切って行ったのじゃった。
さて当のガッツリお得なオネエちゃんは、そんなワシの苦労の微塵も思っておらんのじゃろうのぉ。そう思うと憎たらしくさえ思えてきたものじゃった。ガッツリお得な産休後の復職の日も "すみませんでした" の一言もなかったような気がする。

(当時の残業は軽く150時間/月を超えておった)

さてこんだけ過酷じゃとHIVでまた倒れると思うじゃろう? 所が気が張っておるのか、不思議と倒れんのじゃった。しかし週末は寝たきりじゃったがのぉ。寝溜めは出来んと人は言うが、それは嘘じゃのぉ! ワシは身を持って体験し、寝溜めが出来る事を実証したのじゃった、笑。
しかし夏休みで上海までASKAのコンサートを見に行き、帰国して熱を出して入院したかのぉ。気の貼って追った暮らしが休暇でバランスを崩してしまった感じじゃった。まっ 上海に滞在中もブラックベリーの社メールに追われ休む暇なかったんじゃがのぉ。RIM社もとんでもない物を開発したもんじゃ。これからワシは8年間、この仕事に追われる人生を背負い込むことになるのじゃった。彼氏と旅行に出掛ければ、必ずブラックベリーが原因で喧嘩になるほどで、酷い時は1日メールを溜め、夜寝ずに1人メール返信した事もあったのぉ、、、まだまだ若かったわぃ。