中村ふみさんの『裏閻魔』①~③、読了~。
元々大好きな出版社、枻出版さんの本、雑誌、ムックは多く購買しているんだけれども、
ある時なに気なーくネットをうろついていたら
枻出版さんが小説分野にも進出しているというではないですか!
枻出版さんはどちらかというと、実用、ホビー向けのコンテンツが多く
しかも、かゆいところに手が届くような
本の作り方をしているので、元作り手としてはもー、
こんな風に創れたらどんなにいいか…と内容もさながら、うっとりしながら
手に取ってしまう本が多いのだ。
その枻出版さんが「ゴールデンエレファント賞」という賞を設け、
受賞者作品が商品化する…という形態で刊行するという流れ。
まだその賞の歴史は浅いながらも、
良本を多く輩出している出版社が新しい分野に進出するというのだから
これはチェックしなければ! と。
が、Amazonなどで販売はされているが、
ちょっと中身も確かめてからにしたいなあというのも本音。
そこで、今年の7月、毎年足を運んでいるブックフェアに
枻出版さんもいつも出展しているので、そこで3巻一気に購入。
すぐ読めなかったのは、その間、先に一気買いしていた小野不由美さんの本を
どっぷり読んでいたからw 後回しになっちゃった。
中村ふみさんはその第1回目の大賞を受賞した方。
主婦として家庭を切り盛りしながらも投稿を続けてきて、
ようやく…ということらしい。
大方のあらすじは、
時は幕末、維新の頃。
新撰組に追われた主人公が致命的な傷を負い、
命からがら転がり込んだのが「鬼込め」という
力を擁した刺青を彫る彫り師の家。
「鬼込め」とはその名のごとく、刺青に「鬼」を込め(鬼を宿し)、
ある時は断酒するための「鬼」を込め、
またある時は博打から足を洗うための「鬼」を込め、
込められた「鬼」の力によって依頼主の願望を封じる…といった形。
主人公は彫り師によって「不老不死」の「鬼込め」をされ、
死から最も遠い存在となって生きる…
と、いうもの。
元々、歴史モノには目がないので、
数ある受賞者作品の中からこの作品を選んで読んでみたのだが、
これまたどうして。
歴史はほんの「スパイス」であり、
不老不死なるファンタジーめいた要素が主となりながら、
かなりのヒューマンドラマであったよ。
文章技巧的にはよけいな飾りなどほぼなく、
非常に読みやすい。
ので、すらーんといけてしまう。
望まず不老不死となってしまった主人公は
最初はおのれの身を呪い、彫り師を呪うが、
愛おしむ存在ができ(「恋愛」が始まりではないのがニクイ設定)
苦悩と葛藤にさい悩む。
それらをかっこよく打破していくような主人公では決してなく、
「ホントに大丈夫?」と問いかけたくなるような性格で書かれ、
そこを補う周囲の人物描写がまたすごく魅力的なので、
物語がサクサク進んでいく。
かといって、起こる事件をサラリと描いているワケではなく、
あちらこちらにさりげなーく仕掛けがあって、
事件が解決するくだりを読み進めているうちに
「あら!」
と気づかされるような。
主ストーリーは3巻までには東京オリンピックまで登場してしまうのだが、
そうよね、幕末生まれで長生きなら、この頃まで御存命だった方も
多くいたわよね、という感じで違和感もさほどはない。
やー、久々に何度もすぐ読み返したい本に出会ってしまったわ。
『裏閻魔』を読み進めている途中、
上司というか会社のえらい人が村上春樹の『色彩をもたない~』を
貸してくれたというか「読んでみろ」と渡されたというか…σ(^_^;)
ひとまず、そちらを優先して読んでみたけど
ちっとも心に響かなかった。
やー、『色彩を~』も面白くはあったんだけど。
でも、心に響いてこなかったんだな、あたしには。
不老不死というと吸血鬼伝説めいたものに近いのかと思ったら、
全くそうではなく。
本当に「ヒューマンドラマ」。
時代背景等、第二次世界大戦のシーンもあるし、だし、
「歴史モノ」といえば「歴史モノ」なのだが、
そういった部分って知識披露よろしく、長々と説明めいた
文章が続く作品も多い中、
この作品はその辺、ブレない。
あくまでも「人間」「心」「生」に主軸がはっきりしているから、
読者にはある程度、理解できればオッケー、ぐらいにとどめているので、
物語に集中して入りこんでいくことができる。
早く続きが読みたい、けど、読み終わってしまうのがもったいない…
というジレンマで、通勤の電車の中だけで読もうと決めていたんだけど、
ダメー。
3巻目に入ったらもう一気に読んじゃった。
(家で読む本は通勤に持ち歩くには重たい本とか雑誌とか啓蒙書系にしてる)
また、活字を追っているのに、不思議と頭には映画さながらの
映像が浮かんでくるような描写の仕方にも恐れ入りました。。。
作者の新作が出ているらしい。
それも早く読みたいけど、またまた次に読む本を一気買い(5巻あるだよ)
してしまっているので、
これが読み終わったらかな…。
(一作品が終わりに近づくと、次に読む本が手元にないとどうにも落ち着かないので
「次読み本」をストックしてしまうんだな)
「作者追い」ならぬ「出版社追い」は初めてしてみたけど、
さすが枻出版さん、新分野でも魅了させてもらっちゃいました。