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さこっちQのブログ

ROCK★ミーハー、ライブ生音至上主義! 音楽雑食系でござる!
基本的に歌うたい、ギターとベースもちょっと触る。

出版社つとめー。大手のコトはわからないけど、へぇ~なあれやこれやがあったらこっちもUPしていくです!

海賊
映画化された『永遠の0』が文庫でミリオンを飛ばすなど
今、勢いのある作家さんの一人でいらっしゃいますねー。
これだけ話題の作家さんでありながら、実は初百田作品でありました。

きっかけは…
会社で部長が某書店に営業に行った際にもらってきたブックカバーを
「ブックカバーがたらなーい!」と、いつもわめいてるオイラに
「はい、さこっちさん、もらってきたよー」というやり取りを
横から眺めていた営業局長が
「さこっち、どんなジャンルの本が好きなんだ?」
「いや…雑食で…SFも読めば純文も読みますし…
一番多いのは歴史モノですかねえ」
「そうか。じゃあ、コレ、読んでみろ」
…と手渡されたのが『海賊とよばれた男』でして。

さて、こちらの作品、2013年度の本屋大賞受賞作品。
タイトルは知っていたけど、手に取ってはいなかったの。
手渡されて開くまでは(たいてい電車の中で本を読むので)
歴史モノと言ってたし、村上水軍とかの話かしら…と思ってたの。
読み始めたら、あら! いきなり終戦の場面!

ほうほう、戦時モノは初めてだわ…と読み進めていくと、
これは戦争がテーマなのではないことにすぐ、気づく。
主人公・国岡の経営哲学がを主軸に、
その辣腕ぶりを時代の変遷と共に描かれたものだったの。



国岡が生まれたのは明治18年の九州。
一商店の息子として育った国岡は、商人には学問は必要ないとの考えを押し切って、当時の高等教育を受けるべく奔走する。
学生時代、経営学に関して学んではいても卒業してから何を商品としようかと逡巡していた彼は
旅の途中にふらりと立ち寄った精油工場で石油と出会う。
当時は燃料といえば石炭が主流の時代。
しかし国岡は「これから石油の時代がくる」とここで確信し、当時大手の商社の内定をもらっていても「油」を売りたいと新興の小さな油商店に身をおく。

学生時代に知り合った資産家に出資してもらい、自身の商店を立ち上げる。
この資産家翁、学生時分の国岡を「この男は…」と見込み、ほとんどの私財をその後も国岡に投じる。
また彼も、翁に多大なる恩義を感じるが故、どんなに苦しい時もあの手この手で歯をくいしばる。
翁もそんな国岡の後なる成長を喜び、
「こんな老人でも夢見ることができたのはあんたはんのおかげや」
と最後の言葉を残して逝くくらいなのだから相当な傑物であったと言っても過言ではない。

「石油の一滴は血の一滴」。
確か本書には第一次大戦時にイギリス軍がアメリカに救援物資として石油を乞う際にこのような電信文でもって依頼したと出てくるのだが、後に起こる第二次世界大戦中は日本でも国民精神総動員の標語として使われていたようである。
国岡はこの一文の一件を耳にしてから終戦後も折に触れて心から取り出す。
読後にこの言葉が彼の人生を表すのに最適な一文のひとつであることがわかる。
日本が敗戦したのは「石油」によってだったのだと彼は考えたようである。

国岡の時代を見抜く目もこれだけで素晴らしいものだったと感服せざるを得ないが「本屋大賞」に選ばれた最もの理由はきっと彼の経営哲学であろう。
「最大の資本は人」として敗戦時に何もかもほぼ失った彼の会社であったが一人も馘首(クビ)にはしない!と言い切り、出兵中の社員の家にも給料を送り続ける。
創業時からその哲学は確立されていたようで、社員教育には相当に熱心であり、社員たちもそんな店主に報いようとがんばるものだから、こういう会社が成長しないわけがない。
ブラック企業云々が多く取り沙汰される昨今、ページを開いていて胸が熱くなり、電車の中だというのに泣きそうになるほど感動するシーンがてんこ盛りである。
本書エピソードに、国岡に仕えることができてよかったと実感する元軍人(結構な地位だった人)さんの社員が活躍する場面も多々あり、受付の女性にも優しさを見せる店主、国岡。

彼が大切にしたのは「人」だけではない。
「日本」をもである。
自分の会社が潰されそうになっても「日本のためにならない」と断じたことには真っ向から立ち向かっていく。
さすがに会社の重役たちが難色を示したことも確固たるリーダーシップと彼の「人間性」に惚れ込んだ社員をはじめ、GHQの高位のものから政府の役人、一国の首相までが難所難所で彼に手を差し伸べる。が、彼の人柄だけがそうさせたのではない。
手を差し伸ばされるだけの血を彼も流していた所以である。

書店員さんたちが一番売りたい!という声の元から選ばれる「本屋大賞」。
数々の小説に贈られる「賞」は多々あれど、選考委員の方たちは「よりよき文芸」として選ぶものがほとんどだ。
いわば「本屋大賞」は民意を一番反映しているとも言える賞であろう。
『海賊とよばれた男』が選ばれた時点で、民衆が「今、一番何を欲しているか」が伝わってくる。
国岡の生き様を通して「ブレない生き方」の強さ、(ひとつ間違うと大変だけど・笑)義理の厚さ、人情、勤勉、器量とはこうあれ、など学ぶべき部分も多いこともさながら、企業主としてだけでなく、今の日本には政治家をはじめこのような人物がいれば…という思いが書店員さんたちにも
あったからではないのか、と感じた。
なぜ「海賊」と呼ばれたかは、本文中からぜひお探しを。
(途中「商店」「会社」と入り交じってますが、本書で株式会社へと変わっていったことに準じてます)



読んでる最中に「この国岡商店で今もあるのかしら?」
「どの会社がモデルなのかしら?」と思ったのだが、上下巻からなる本書、上巻には参考文献を掲載していないのがこれまたニクい。
すべて読み終わって、下巻の参考文献を見て
「…あっ!」
はい、さっそくその会社のHPに飛んでみましたよ。
皆さん、誰でも知ってる会社であります。
本書ではその創業者さんの名前は「国岡」となっておりますが、その方の自伝も出版されているのでこちらも読んでみようかと思います。

…すっかり百田作品のトリコとなってしまったオイラと言えば、実はこの後すぐ『夢を売る男』(2013年2月刊)を購入して読了。
wiki等に百田尚樹さんは「様々な作風をもった…」と書かれておりますが、こちらも読んで納得。
この方はどれだけ引き出しをもってらっしゃるんでしょうね?
こちらは出版界をテーマ。
文中、自分を風刺してみたり、編集職やってた自分は「そうそうw」とクスリとする部分も多くあって面白い。
しかし最後はジーンと感動させてくれる。

しばらくは百田作品を追いかけることになりそうかな。
…いや、実は平岩弓枝さんの本をまとめ買いしてしまったのでこれ読んでからかなあ。。。