はちさん!!!そしてみなさん!!!あけましておめでとうございます!

そして大変長らく、お待たせいたしましたーっ!

今から、はちさんスペシャルを、3編にわたってお送りいたします!(なんとか、予定時刻に間に合いましたっ!!!)

まず、なぜ、
はちさんだけこのような特別編になってしまったのか、その経緯を、神様からお伝えいただきます。

神:「この方のご質問を龍から聞いたときに、
正直申し上げまして、これはお答えできない、と思いました。

公共の場に出してしまうと、さまざまな問題を引き起こすナイーブな問題もあり、過激すぎて事実を申し上げることができない問題など、人の世の弱みを突く、いい質問でした。公表するとショック状態に陥る方も何人か出てしまうほどの答えが待っています。

さらに、
あなた自身があまりにも悲しい体験をなさっていて、あまりにも生々しい問題が山積み過ぎでした。私はこれを、どうお伝えしようかと思いをめぐらせたところ、あなたの前世の旅が見えてきたのです。

前世の内容は、主人公のサチがあなたです。
あなたが成長して本当の聖の旅に出るまでの1年間にクローズアップして語ります。そこにおよそのヒントが集約されています。

あなたの過去に遡ると、あなたの昔の生き様が見えてきます。
どんな思いで、どんな生き方をしたのかを、じっくりとご紹介いたします。

その中から、
今後のあなたの生き方のヒントとしていただければと思います。さらに言えば、登場人物に、現在のあなたのまわりにいる人につながって行きます。この人は今の誰にあたるんだろうと思いながら読んでください。

最初に言っておきますと、
あなたを最終的に救ってくれる人とはすでに出会っております。魂がピーンと来たら、それを認めてください。お願いいたします。

ちなみに、
読みやすいように現代語での文体になっておりますので、違和感などあるかもしれませんが、気にせずお読みください。

さあ、お待たせいたしました。年越しそばの残り、あるいはみかん、
あるいは御節料理でもつつきながら、じっくりと読破していただければと思います。では、始めましょう。」


第一章 ~サチ~


昔々のお話です。場所は日本のとある山村。
荒れた社会の中にあなたは11歳で放り出されました。つまり、捨てられました。

女性です。
生まれてすぐに一番上のお兄さんが子守をしていましたが、釜とあなたを一緒に持とうとしたところ、あなたが伸びをしたこともあり、バランスを崩してあなたを土間に落としてしまったのです。

それからあなたは足と腰を悪くしてしまいます。

大きくなるにつれ歩くのがやっとで、股関節も変形してしまいました。そうなると、手伝いもできない、飯を食うだけの邪魔者扱いされるようになり、一番の味方だった上のお兄さんが小さなイクサの巻き添えで帰らぬ人になってからは、それはもう筆舌に尽くしがたい、いじめを受けました。

何もできず、サチという名があるのに、おばあと母親以外には、
そう呼んでもらえたこともありません。「ゴミ扱い」とはこのことです。

近所の人たちにも、
あんたの家のゴミはいつなくなるのかと、本人の前で言われるほど、あなたは虐げられました。しかし、その中で一番の味方は母親でした。

ただ、母親はとても心が弱く、
強いものには恐れをなし何もいえなくなってしまうほどでした。

父親は、丁寧すぎるほど丁寧な仕事をする几帳面な人で、
それが元で言われなき村八分にされたことのある、立場の弱い男だったこともあり、あなたに厳しく接することでようやく自分の面目を保っていたのです。

そういうわけだったので、あなたは、
父親の偏った心を平静に保つだけの道具、という存在でした。

悲しい生活は毎日続きました。

あなたはあなたで、そんな生活をあきらめていました。しかし、
唯一希望があったのは、二人の弟です。

弟は6歳と2歳。
2歳の弟はあなたを誰と比べることなく、笑顔を見せてくれました。おばあちゃんの膝の上で可愛い声を上げるたびにその顔を眺め、あなたはほっとする時間を持てました。

さて、そんなあなたを捨てようと考えたのは、
当時のおばあちゃんです。おばあと呼びます。

おばあも足腰が悪くなってきていて、
寝たきりになるのは目に見えていました。胸が痞える(つかえる)感覚と、鼓動の異様な変動感、食も細くなってきましたし、何よりもこの暗い毎日がやりきれなくなっていました。

毎日泣いているあなたを見て、不憫に思いつつ、この子は生きつづけるべきではないのかもしれない、と思い始めたのです。

何日も考えました。冬の間に考え続けて、
結論が出たのは土筆が顔を出し始めた春です。意を決して、息子夫婦に話しました。

『この子を捨ててきてもええか』

と。

父親も母親も、ぎょっとして言葉がありませんでした。
わが子です。そりゃあ、まんまだけ食って、たいして役に立たない子だけど、わが子です。弟たちの面倒はみてくれているみたいだし、さすがに悩みました。おばあは重ねて言います。

『この子を連れて山へ行って、わしもそのまま帰らん。』

母親は、はっとして目を上げました。
一緒に死ぬつもりだと察したのです。即座に反対しました。

しかし、おばあの言うことは家長の言葉です。さすがに母親はもうその場にいれなくなって外にでました。母親のせめてもの反抗が、その場から居なくなることでした。

父親は、膝の上に握りこぶしを作って考えておりました。
そんなこと、できるわけがねえ。しかし、今の暮らしから二人分のまま代が減るのは助かる。

人様に、『お前のうちのゴミはいつ捨てるのか』
と言われ続ける生活もたまらないものがあるし、かといって実際に捨てたとなると、また人に何を言われるかわからない。

うん、
と言えば二度と会えない娘と我が母。食べることに精一杯の暮らしの中で、二人がいなくなることの助かり具合は想像しなくてもわかる・・・

この葛藤は永遠に続くかと思いましたが、
おばあの一言に負けました。

『このままでは、みんながのたれ死ぬぞ』

それはこの時代、あり得ました。
実際に村がひとつ丸々消えてしまったこともあります。ひとつのほころびが、大きな落とし穴になることを、この時代の人々は骨身に沁みてわかっていました。

父親は、不甲斐ない自分を責めながら言いました。
村の人たちの迷惑そうな顔が浮かんで、笑っている自分の顔が浮かんで、吐きそうになりながら言いました。

『かあ、頼む。』

二人の親は、複雑な心持ちで泣いておりました。


これで生活がいろんな意味で楽になる。重い荷物が減って助かる。と思っている自分の心の鬼に対して、戸惑いながら泣いておりました

それから4日後、あなたはおばあに連れられて、家を出ました。

『あんたはね、その足と腰を治すために、
おばあと一緒に偉い人に会いにいくんだよ』

と、もっともらしい嘘で家を出たのです。いえ、
結局追い出されたことになります。

父親も母親もすでに働きに出て家にはいませんでした。
胸を痛めながら、叫びだしたい衝動に駆られながらいつもより力強く働きました。そうすることでしか、子どもと親を捨てる思いを消せなかったのです。

前の晩、
あなたの寝顔を見て、母親は声を殺して泣きました。

この家にいても幸せは来ない。出て行っても幸せをつかめるはずもない。哀れな娘の行く末を思うと、泣けて泣けて心が張り裂けんばかりでした。


第二章 ~旅のはじまり~


家を出て、かなりの時間が経ちました。しかし、
とぼとぼと歩き続ける二人は、遠目から見ると、止まっているように見えるほど、ゆっくりとした足取りでした。

おばあは、何度も何度も休みます。
ようやく山村を出て平地に出たときには、もう日が落ちる手前でした。

泊まる所などはありません。
どうせ死ぬのだから、宿なんぞに使う金などない。と思って出ては来たものの、春の夜の寒さは痛みすら感じます。

おばあは、
この寒さをなんとかしようとしている自分が可笑しくて笑いました。わしは死のうとしているのに、生きようと動いている。じっとしているこの子よりよほど執着がある。と思って笑いました。

そんなおばあを不思議そうに見るあなたは、
考え事をしていたのです。

自分は、ひょっとして捨てられるのだろうか。
あの家に帰れるのだろうか。

正直言って帰りたくはない。
私がいるからお母もお父も悲しい顔をする。おばあと一緒に行って、自分の足が治っておばあを家に帰したらそのままどこかに行ってしまおうか・・・。

誰も知らない場所に消えてしまおうか・・・!うん。そうしよう!

そう心を決めつつあったのです。

おばあが笑っている横顔を見て、
あなたはあなたの素敵な未来を想像して可笑しくなってきました。おばあも、あなたが笑っているのを見て、思わず二人、顔を見合わせたままプフッと声をあげて笑ってしまいました。

笑う理由は違いましたが、その二人の状況で笑える幸せは、
それが最初で最後でした。

その夜は、二人で草をかき集めてきて、
その中に二人が包まって眠りました。

朝起きて、
おばあは自分が苦しい状態、つまり死に近い状態であることを再確認しました。しかし、ここで死んでしまっては、この子は家に帰ってしまう。

もう、
この子に家はない。帰れる場所がない。村においておくと、村につぶされてしまう。もう悲しい思いは誰にもさせたくない。もっと遠くまで行かねばならん。気力を振り絞って立ち上がり、あなたを引っ張るようにして歩き始めました。

長い旅の始まりです。

あなたは、おばあの気持ちも知らず、
いずれくる幸せの日々を想像しながら弾むように歩きました。

歩いているうちに気づいたのですが、
いつもは激痛が走る腰や関節の痛みが少なくなってきていたのです。あなたはこんなに長い距離を歩くのは初めてでしたが、希望を胸に歩き続けることで、痛みが消えていっていることに気づいたのです。

そうです。あなたはとても賢い娘でした。


自分で経験したことを分析して、
結論を出すことに長けていたのです。その結果は少しずつですが、いい方向にいくことにも気づきました。

あなたが現世でこれまで生きてこれているのは、
この能力のおかげもあるのかもしれません。

おばあの衰弱は日を追うごとに明らかになってきました。
あなたは心配しながらも、明るく振舞いました。

もう随分遠くまでやってきました。

小さな村があって、
その真ん中には小さなお社がたたずんでいます。おばあはそろそろ覚悟を決めるときだと気力を上げました。村の近くには、所々岩がとび出ている山が、そびえ立っています。その山を仰ぎ見ながら、おばあは言います。

『サチ。この山を越えれば偉い人の家があるからな。
急な山だから危ない。体を縛る縄を探してきておくれ。』

あなたは疑いもせず、村の人に縄を貰いに走っていきました。
おばあはその縄で、山の木にあなたを結わえ付けて自分も一緒に死のうと考えていました。

あなたはこの旅の中で、春の芽吹きを食べながら、
川の水を掬って飲みながら、歩きながら自分の健康が戻ってくるのを毎日感じていました。

走れるまでなってからは、
偉い人に会って足を治してもらうことよりも、おばあの健康を取り戻すために、その偉い人に会いに行こうと決めて歩いていました。

そんなあなたが村の人に縄を貰い、
村の社の前に帰ってきたときは、おばあの容態は最悪の状態になっておりました。

いわゆる、
危篤状態です。意識が朦朧とし、何も感じられないほどになってしまったのです。

あなたは、必死に呼びかけました。しかし、
おばあは戻ってこなかったのです。村の人に助けを求め、唇に水を含ませた後、おばあは還らぬ人となってしまいました。

あなたは、
自分の足を治すために病気を圧してまでここまでつれてきてくれたおばあに、感謝しました。

おばあは、そのあなたの姿を上のほうから見ていました。自分は死んでしまったことがわかっています。


サチに縄を探しに行かせた後、一人、
村の社の神様にこれから二人で死なせてくださいとお願いしたことを思い出していました。

『そろそろわしもだめなようで、
このあたりで終いにさしてくださいな。』

すると社の中から声が聞こえます。

『お主はサチを助けたのだ。よくやった。もういいぞ。』

おばあはびっくりして平伏し、褒められたことよりも、
旅をする中で考えていたことが間違っていなかったことに安心したのです。

おばあは、どんどん明るく、
健康になっていくあなたを見て、死ぬるのは、自分だけでいいのかもしれないと、思い始めていたのです。

しかし、このまま一人で生きていかせるには時代が厳しすぎる。やはり道連れに冥途まで・・・と思いながらも、心のどこかでこの子なら何とかなるのかもしれないと、成長を見ながらそう感じていたのです。

それを言い当てられてしまったような気がし、
自分の思いが間違いじゃなく、結果、これで良かったということが、その一言でわかったのです。

おばあは、心底安心しました。神さんがこれからは、
あの子を守ってくださるのだ。わしはもう果たした。これでよかった。

そう思ったら急に力が抜け、その場に崩れ落ち、
今に至ったのです。

おばあは、その風景と、泣いているサチを見て、
上へ上へと昇っていきました。


第三章  ~おばあの知恵~


ここからは、『あなた』という呼び方を『サチ』に変えます。
より多くの人にサチの立場を思いやって読み進めて頂きたいのです

一人ぼっちになったサチは、村の人に手伝ってもらい、
村のはずれの寂しいところでしたが、簡単な墓を作ってもらい、手厚くとまではいかなかったのですが、葬ってもらいました。

サチは、
おばあと交わした会話の数々を思い出しながら涙が枯れるまで泣きました。

村の人々は、
不憫な女の子をこれからどうするかを話し合いました。

結論は、
誰も養えない。でした。村の長が、ここから海に向かって真っ直ぐ歩けば、山のふもとでなにやらたくさんの人が集まって、何事かをしているらしいといううわさを耳にしていたこともあり、そこまで行けば、この娘もなんとかなるかもしれない。となり、それを勧められました。

その言葉を聞いて納得したサチは、干した芋や餅を貰って、
毅然として海の方角へと歩き出しました。

近くにあるようなことを言っていましたが、
それらしき場所に辿り着くことがなかなかできませんでした。うわさはやはりうわさであったのかと、がっかりしながらも、とりあえず海というものを見たくて真っ直ぐ真っ直ぐ歩き続けました。

何日か経ち、空気の匂いが変わったのがわかりました。

小さな峠を越えたとき、
サチの小さな胸は感動で一杯になりました。

海です。話に聞いていた大きな雨壷とはこのことだったのかと、
一人納得しました。

お天道様が海に煌いて、
一人の少女を上からも下からも照らし出します。海の、甘く優しい薫りが風に乗って鼻の奥をくすぐります。

思わず走り出してしまいました。
サチの足腰はこの旅で鍛えられて美しく伸び、筋肉の躍動がわかるほどにまでなっていました。

海についたとたん、なぜだかわかりませんが、涙が溢れてきました。私は一人ぼっちなんだということが、
海風にあてられて身に沁みてきたのです。

搾り出すように泣いていると、
とびの声が笑うように聞こえてきました。その声に耳を澄ますと、なにやら遠くのほうからコンコンコン、コンコンコンと音が鳴り続けていることに気づいたのです。

立ち上がり、周りを見渡しました。
その音がしている方角を見定めると、足が自然に動き出していました。

コンコンコンという音を探して歩く途中、村の中を通りました。サチの姿を見てどこの坊やろかいと興味を持って話しかけてくれます。泣きはらした目をしていたので、可哀想に思ったのかもしれません。やさしい言葉かけにサチはまた涙が出そうになりました。

しばらく歩くと、左手になだらかな山があって、
その中腹あたりに白い服を着た男の人達が、塀の様なものを作っていました。杭を打っている音が聞こえていたことがそこで初めてわかりました

サチは、その男達の作業を眺めながら、
もしかしてこの人たちが長が言っていた人達なのかもしれないと思い、近くまで行くことにしました。

近くに行くまでに、
サチはおばあに教えられたことを思い出していました。

『サチ。よっく聞け。もしこの旅で、かどわかしに会うたらの、
お前は男になれ。いいか。じゃから髪も必要ないからいつも今みたいに刈っておくんじゃ。それと、小賢しくなってはいかんぞ。なまじ賢いと使われて終わりじゃからの。ちょっと足りんと思われておったぐらいがちょうどいい。』

おばあの知恵は、サチの身を守るための技術として、
ちゃんと伝わっていました。風呂に入らない日が続き、ぼろい着物と色黒さと、彫りの深い目鼻立ちが手伝って、サチはまるで男でした。

どんどん近づいていくと、
音と一緒に男達の声も聞こえてきました。中でも、一番声を張り上げている男がいて、おそらくこの工事の棟梁だと思われました。

サチはゆっくり、その男のそばまで近づいていきました。


(つづく)

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