bigbossmanです。今回もまたまた実業家にして霊能者、Kさんとの
話です。ただし、いつもの大阪のホテルのバーではなく、
前々から招待されていた石垣島の新居にうかがってのこと。
手作りのマンゴー酒をいただきながらの会話となりました。
「いやいや、このたびはご招待いただきありがとうございます」
「どうだ、感想は?」 「うーん、そうですね、沖縄本島には
何度か来てるので、わかってるつもりでしたが、暑くないですね」
「まあな、今日も気温は30℃いかなかった。これが大阪だと
36℃とかになるだろ」 「そうです。エアコンなしの生活は
絶対不可能です」 「沖縄は暑いってのは先入観で、夏場は
本土よりも気温は低いことが多い。まあ、湿度は高いが」

「いや、風が気持ちよかったですよ」 「それから?」
「・・・こう言っちゃなんですが、もっと豪邸かと思ってました」
「ははは、俺と家内の2人ぐらしだから、部屋数があれば
掃除が大変だよ」 「ああ、そうですよね」 「ところで bossman、
お前、聖痕現象って知ってるよな」 「あ、もちろんですけど、
何か最近かかわってる事件に関係ある話ですか」 「うんまあ」
「聖痕というのは、基本的にはキリスト教、カトリックで使われる言葉
ですね。ラテン語でスティグマータ。人の体から、特に原因は
ないのに急に血が流れ出る。血液は分析された例も多く、
おおかたは本人の血ですが、そうじゃない、誰のともわからない場合も
あります」 「さすがオカルト研究家、なかなか詳しいじゃないか」

「いえいえ」 「聖痕が現れる場所は?」 「基本は5ヶ所とされます。
イエス・キリストが磔刑に処せられた際、十字架に釘で打ちつけられた
両手足、それと、ロンギヌスの槍で止めを刺さされた脇腹。
ただ、それ以外にも、茨の冠を被せられたとされる頭部や、十字架を
背負った背中に現れる場合もあるようです」 「なるほど。
傷はどうなんだ」 「それがですね。医師が診察して、実際に
傷が見つかる場合と、まったくない場合があります」
「ふうん、どう違うんだ」 「それは自分にはわかりません。ただね、
聖痕現象が起きるのは、聖職者かキリスト教の熱心な信者がほとんど
なんです。ですから、こう言っちゃなんですが、傷がある場合は
自分でつけたんじゃないかって疑われたりします」

「うん、小さなカッターの刃なんかを持ってればできないことはないな」
「はい、それと、傷がまったくない場合はトリックを疑われますね」
「プロレス式か」 「ええ・・・ただ、作り物の血糊じゃなく、
本人の血液をあらかじめ取っておき、凝固させたものを手の中に握って、
体温で溶かすとか」 「それだと、簡単な分析では本人の血液と
なるだろうな。じゃあ、本物の聖痕ってないのか」 「いやあ、
思い込みというか、宗教的な熱情が高まった場合、人体に影響を
与えて出血するといった仮説はありますよ。例えが適切かわからないけど、
俳優の中には、悲しむシーンを演じる場合、実際に涙を流せる人が
いるって話じゃないですか」 「そうだな。ただ、涙腺と違って、
出血は無理があるように思うが」 「はい、だからバチカンに正式に

奇跡と認定されたものは多くないんです。それより事件の話を
してくださいよ」 「それが、今、調査中の事件はまだとっかかった
ばかりで、目鼻も何もついてないんだ」 「そうですか」
「またブログネタなんだろ。じゃあ、過去の聖痕現象と関係がありそうな
ケースをいくつか話してやろう」 「ぜひぜひ」 「これは10年くらい
前かな。もう亡くなったけど、60代の男性の受刑者がいてな」
「受刑者?」 「ああ、知り合いの刑務所長から依頼が来たんだ」
「それで」 「その人、殺人で懲役20年だったが、真面目に勤めて
仮出所が近づいたとき、右腕から出血するようになった。それもかなりの量」
「で」 「ところが医務室に連れてって確認しても、傷がない」 「ははあ」 
「でな、同じことが何度かくり返されて俺が呼ばれたんだ」 「はい」

「さっきな、傷がないって言ったろ。けど、腕の同じ箇所に古傷があるんだ」
「どういうことですか」 「殺人のときについた傷だよ。殺された相手が
抵抗して噛んだ」 「え?」 「もちろん傷自体はとっくに治ってて、
出血はするが新しい傷はない。で、これは被害者の霊がやってるの
かもってなった。けど、俺が霊視しても、な~んにも悪いものは
ないんだ。霊なんていない」 「じゃあ」 「そう。娑婆に出る日が近づいて、
精神が不安定になり、聖痕現象みたいなことが起きてると思ったわけ」
「どうしました」 「いちおう除霊の真似事をしてやった」 「刑務所で
よくそんなことができましたね」 「いやほら、俺は僧侶やカウンセラーの
資格も持ってるから」 「ああ、そうでした。この話、まだ続きが
あるんでしょ」 「ああ。本人は喜んで出所していったんだが・・・

3日後に自殺した」 「う」 「簡易宿泊所で首を吊ったんだよ。
腕が血まみれになってて、警察が調べたが、やはり傷はなかった。
口から吐いた血か、鼻血がかかったってなったみたいだが」 
「うーん、まだありますか」 「ああ。30代はじめの若い奥さんが、
ある日家族とショッピングモールに行った。旦那とまだ小さい子ども2人で」
「はい」 「その店に行くのは初めてで、当日は体の具合が悪いことも
なかった。それが急に、足の間から床に血溜まりができるほど出血した」
「で」 「店が救急車を呼んで大病院の婦人科に見てもらったものの・・・
なんら異常はなかった。念のためということで2日入院したが、
特に何もなし。けどな、その奥さん、退院して数日後、家族には内緒で
俺のとこに来た。知り合いに俺を知ってる人がいたみたいだ」

「どういうことです」 「そのショッピングモールな、できてからまだ1年、
その前も別のビルで、さらにその前は私鉄の駅だったんだよ、
廃線になった」 「で」 「奥さんな、高校生のときに、その駅の
女子トイレで赤ん坊を死産してるんだ」 「う」 「まあ、未熟児での
死産だし、未成年だったから罪にはならなかったし、親もそのことを
ひた隠しにしたから」 「うーん、その場所の記憶が血を呼んだって
ことなんでしょうか」 「わからん。わからんけど、本人の心理的な
ものだと思う。これも軽~い除霊をしてやったけどね」
「なるほどねえ、何か見えてくるものがありますね。ところで、現在も
聖痕にかかわりそうな事件を扱ってるって、さっき言ってましたよね」
「まだ手を染めたばかり、情報収集の段階だよ」

「途中でもいいのでお聞かせ下さい」 「お前、天使園って知ってるか」
「あ、はい。キリスト教系の児童福祉施設ですよね。孤児、あるいは
親がいても育てられない子どもを養育し、学校に通わせてる」
「そう。名前は必ずしも天使園ってわけじゃなく、施設によって
バラバラだが、まあそういったとこの神父さんから依頼があってな」
「あ、今までの話で一番、聖痕に近いですよね」 「そこの卒園生、
ふつうは18歳の高校卒業の時点で就職して自立するんだが、
去年から、その子らが19歳になった誕生日に、両方の手のひらの
真ん中から血が出るようになった。けど、やはり傷はない」
「全員がですか?」 「いや、ここまでで4人、内訳は男3、女1」
「どういうことなんでしょう」 「だから今、それを調査中なんだよ」

「あ、スミマセン。それで」 「そこの施設はキリスト教系だから、
ミサやクリスマスの会なんかもあったけど、必ずしも生徒には
信仰を強要してはいなかった。実際、その4人も、宗教的な
行事には、そこまで熱心なほうではなかったということだ」
「興味深いですねえ。場所はどこですか」 「東北のほう」
「まだ、依頼者の神父さんに話を聞いただけなんでしょ」
「そうだ。これから一人一人をあたるつもりだよ」 「ねえKさん、
自分も休みを取るので、同行させてもらってもいいですか」
「・・・まあいいけど、結果によってはブログネタにはならんぞ」
「お願いします」ということで、その日は夜遅くまでマンゴー酒を
飲んだため、翌日、せっかくの好天なのに泳ぎに行けませんでした。

ぽぽぽ