bigbossmanです。今回はひさびさにKさんと大阪市内で
お酒を飲みました。場所はいつものホテルの最上階にある
バーラウンジです。Kさんは、自分のブログを読まれている
方ならご存知と思いますが、本業は飲食店・不動産経営などの
実業家。生まれつきその方面の能力があり、ボランテイアで
霊障事件の解決にもあたっています。以前は東京に住んで
おられたんですが、半年ほど前に沖縄、石垣島に転居され、
それからは自分がお会いする機会も少なくなりました。
「なあbigbossman、人間の寿命ってどのくらいなんだ」
「うーん、生物は、遺伝子によっておおよその寿命が決まってると
言われてますね。人間の場合、世界の長寿の人をみても、
 
ほとんどが115歳と120歳の間で亡くなっています。
ですから、だいたいそのあたりが限界なんじゃないでしょうか」
「ま、そんなもんだろうな。じゃあ、寿命を延ばす方法ってあるのか」
「120歳以上に寿命を延ばすのは現状では無理でしょう。ただ、
将来的には、人間の体のパーツを機械に置き換えていくなどの
ことが出てくるかも」 「ああ、マンガの銀河鉄道999か。
でも脳は無理なんだろ」 「うーん、これも遠い将来の話ですが、
その人の記憶も含めた全人格をAIに転写するなどのことが
できるのかもしれないです」 「なるほどな。じゃあもっと常識的に、
例えば、今60歳くらいの人が、できるだけ寿命を延ばしたい
というときは?」 「それは健康法を実践するってことですかね。

適度な運動、食事に気を遣って、タバコを吸っている場合は禁煙。
最近はタンパク質の摂取や筋肉量が健康寿命に関わるって
説が広まって、自分が通ってるジムでも、リタイア層の利用客が
すごく増えてるんです」 「そうみたいだな。けど、いくら健康に
気をつけた生活をしても、いきなり交通事故で亡くなったりもする」
「ああ、なんとなくKさんの言いたいことがわかってきました。
運命論ってことですね。人間の寿命は生まれたときからすでに
決まっていて、それはどうやっても変えられないという考え方も
あります。東洋思想はそういう感じですよね。冥界には名簿が
あり、その人の享年が書かれてるって、中国の古典に出てきます」
「うん、そこでだな、その運命ってのは絶対変えられないものなのか」

「・・・落語の死神の話はご存知ですよね。ある男が夜道で死神に
出会い、たくさんのロウソクが灯っている洞穴に連れていかれる。
で、これがお前の命だと指さされたロウソクは、今にも燃えつきる
寸前。なんとかならないかと男が死神に頼み込むと、他のロウソクの
火を消して、自分のやつの火を移せばいいと言われる・・・」
「それ、失敗するんだよな」 「はい、動揺してうまく手が動かず、
ロウソクの火は消えてしまう・・・ Kさん、何かその手の事件に
関わったんですね。話して聞かせてくださいよ」
「いや、これは俺が直接依頼されたことじゃなく、人から聞いた話」
「お願いします。最近、ブログネタに詰まってるもので」
「じゃあ。ある神職なんだ。大きな神社じゃなく、

地方の小神社をいくつか兼任で管理してる」 「ああ、はい」
「年齢は57歳だったが、顔に黄疸が出て、病院で検査をしたら、
かなり進んだ胆道系の癌が見つかった」 「お気の毒に」
「予後が悪いんだろ?」 「はい。女優の川島なお美さんがこの
癌で亡くなってますよね。希少癌をのぞいて、5年生存率は
膵臓癌に次いで悪く、たしか20%以下だったと思います」
「で、その神職、何ヵ所もセカンドオピニオンを受け、なんとか
手術してくれるところが見つかったが、開腹してみると腹膜に
癌が散らばってて、そのまま閉じた」 「厳しいですね」
「その手の癌は抗癌剤もあまり効かず、その時点で余命半年以内を
宣告されたそうだ」 「・・・kさん、この話、誰から

聞かれたんですか」 「それはおいおいわかるよ。でな、神職は、
死は覚悟したが、寿命をほんの少しだけ延ばしたいと思った。
というのは、嫁に行った娘さんが妊娠中で、あと8ヶ月ほどで
初孫が生まれる予定だったから。孫の顔を見てから死にたい」 
「ああ、わかります」 「医学的な治療法はないし、神道の神様に
おすがりするしかない。で、その神職が管理していた
社の一つが浅間神社の摂社だった」 「ああ」 「そのツテで、
浅間神社系の大きな神社に相談した。浅間神社系の御祭神は
知ってるか」 「はい。子孫繁栄を司る木花咲耶姫命、健康長寿を
司る磐長姫命」 「さすがだな。で、俺が話を聞いたのは、その
大きな神社の宮司さんからだよ」 「なるほど」 「もちろん、

その話は断ろうと思ったそうだよ。運命に抗おうとすると
ろくな結果にならないことを知ってたから」 「で」
「ただな、その神職、それまでに大きな善根を積んでたんだ。
東南アジアの孤児を救済する活動や、人身売買に反対する活動を
ずっとやってきた人なんだよ」 「ははあ」 「それでな、
ある方法を神職に教えた」 「どんな」 「これは場所は言えないが、
某県の山の中に洞窟がある。一説には、根の国に通じるとも言われる
深い横穴だ。そこを奥の奥へ入っていくと広間に出て、巨大な
水晶の石棺がある。長さ4mに近いものだそうだ」 「で」
「その中に石棺のサイズにふさわしい巨大な人間、女が眠っている」
「白雪姫みたいですね」 「ああ、けど、毒リンゴを食べたわけじゃない。

はるかな昔、神代と言われる時代から眠りについてるんだ」
「どういう女性なんです」 「わからない。石棺のフタは開いており、
中には、貫頭衣だけを身に着けた髪の長い女。ピクリとも動かないが、
かといって腐りもしない。普通の人間と違っているのは、体のサイズが
まずそうだが、両目がないことだ」 「つぶれてるんですか」 
「いや、そうじゃなく、最初から額の下は皮膚だけなんだ。鼻と口はある
のっぺらぼうと言えばいいか」 「・・・・」 「で、その石棺の
前で特別な儀式をし、一般には使われることがない祝詞を唱え、
それから・・・」 「それから?」 「女の体の一部を少し切り取って
いただく」 「う」 「宮司さんはもちろん食べたことはないが、
ずっと以前に、切り取る場面は見たことがあるそうだよ。

全身が真っ白で練り菓子のよう。二の腕に何ヵ所も切り取った跡が
見えたが、いつ行われたかはわからない。切っても血は出ず、
体の中も真っ白だったと言ってたな」 「で、神職はそれを
実行したんですね」 「そうだ」 「で、どうなったんです。寿命は
延びたんですか?」 「ああ」 「初孫の顔を見ることができた?」
「そうなんだが・・・ 一つ問題があった」 「どんな」
「赤ちゃんは、一点をのぞいては健康な女の子だったそうだよ」
「何が?」 「妊娠中のエコーなどの検査では何の問題もなかったのに、
生まれてきた子には両目がなかった。その石棺の女のように最初から
ないんだ」 「うう」 「神職は絶句し、その日から急に容態が
悪くなって、1週間後くらいに亡くなった。

それでも、余命宣告された期間を2ヶ月過ぎてた」
「すごいというか、ちょっと信じがたい話ですね。Kさんじゃなかったら
作り話だろうと思ってるとこです」 「まあな」
「で、その赤ちゃんはどうなったんですか」 「ああ、宮司さんのところで
引き取った。今後は巫女として育てられることになる。
現在3歳だが、目はなくても普通に物をつかんだり、歩いたりできる
そうだよ。おそらく本なども読めるんだろう」
「うーん」 「でな、神職の娘さん夫婦には、翌年すぐに五体満足な
次子が生まれた。男の子だったそうだが」 「その洞窟って・・・
もしかして山梨県の〇〇〇〇ですか」 「・・・そうだ。だが行くなよ」
「いやいやいや とんでもない。まだ命は惜しいですから」

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