今回は怪談論にします。変な題ですが、

これ怪談の構造に深く関わっているんですよね。自分が収集した話、

ネットにある話、プロの作家の先生方が書かれた話などから

目撃談の大ざっぱな傾向をまとめてみたいと思います。
あと、心霊画像・動画については今回は取り上げません。
 

まず最初にあるのは、その体験者が幽霊、怪異を見慣れているか

どうかです。いわゆる「霊能者、霊感の強い人」であれば、

すでに何度も超自然現象を経験しているでしょうから、
「ああ、まただ」と当然思われるでしょう。

この場合、超自然現象を初めて体験した人とはまったく反応が
異なりますので、ここでは取り上げません。
では、初めて不可思議を見た、あまり幽霊など信じていない人の
場合はどうかというと、これは何を見たかでだいぶ異なってくるようです。

まず、人型ではない、あるいは顔のない何かを見た場合。
どういうことかと言いますと、例えば「夜道を歩いていたら、塀の上に
20cm四方くらいの透明なゼリーが乗ってプルプル震えていた」
こういう場合、多くの人は頭の中で合理的な説明を見つけようとします。

っこいう

「えっ! なにこれ、何かの化学物質だろうか?」
「見たことないけど、生き物なんだろうか」

まあ実際、イタズラで寒天を置いてるなんてことも

なくはないでしょうし。


次、自分の知り合いではない「人型のもの、顔」を見た場合。
これは自分の幻覚や錯覚を疑う人が多いようですね。

「もしかしてガラスがあってそれに映ったのか」 「人が入れそうに

ないけど、実際はしゃがんでいる人が一瞬立ち上がったんだろう」


こんな具合で、幽霊を見たということをまず否定しようとします。
信じていない人なら、幽霊だと思うと
自分のそれまでの世界観が崩れてしまいますからね。
ただしこれにも付帯条件があります。



「夜中の2時に塀の上に幼児の顔が出てきた」
「マンションの12階なのに窓の外を人がよぎっていった」
「肉がグズグズに崩れたゾンビかミイラのような顔が懐中電灯で見えた」
このようにありえない条件になるほど、幻覚かもと思う反面、
もしかしたら幽霊かも、という思いも出てくるようです。

また、目撃する前の状況とも関連してきます。これは
どういうことかというと「会社帰り、電車に乗るときに飛び込みがあった」
「さっきチャリで通った交差点に花とペットボトルがお供えされていた」
こういう体験があってすぐ血まみれの顔を目撃した場合、
「もしかして幽霊!?」という思いは自然にわきあがってきます。
これは当然といえば当然ですね。

さて次、もし見たのが友人や肉親の顔だったらどうでしょう。
学生時代あまり親しくなかった友人とかならともかく、
肉親や恋人の姿を、もしありえない状況で目撃してしまったら、
「ああこれは、あの人に何かあったのかもしれない」と思うようです。

で、その後すぐ携帯などで安否を確かめる行動をとる。
このケースは、虫のしらせということとも関連しているのでしょう。
だいたいこんな感じでしょうか。あえて書きませんでしたが、
これらの目撃例の多くは短時間、あるいは1回きりのものです。



それはそうですよね。もし塀の上に生首がずっとあって、
しかも笑ったりしてる。これは通報すべきでしょう。
それで警察が来ても消えなかったら大事件です。
マスコミが取材に来るでしょうし、科学的調査も入ります。
そして「幽霊は存在する」という結論が出るかもしれません。

しかしそうはならないですよね。現象は基本的に再現性がない、
というのはお約束なのです。
あと、同じようなものを繰り返し見てしまう場合。これはまず、
自分の体調を疑って医者にいくケースが多いのではないでしょうか。
 

そこで異常がないと診断されれば、だんだん霊現象を信じていく

ということもあるかもしれないです。自分で似たような事例を

調査したり、あるいは何かの宗教団体に相談に行ったり。そうして、

一番最初に書いた「霊感のある人」になっていくのかもしれません。

なぜ、このようなことを書いているのかと言いますと、
怪談では読む人に違和感を感じさせることは避けなくてはなりません。
ですから目撃した場合の反応も自然であるのが望ましい。
「えー、ふつうこんな反応しねえよな」と読む人に思われるのは
やはり多くの場合マズイのです。ただし、「本当にあった」話の場合、
不自然とか言ってもしょうがなく、事実を受け入れるしかないわけですが。

っきう

さてさて、最後に目撃談を聞いた人の場合ですが、
ふつうは「えー、何かの見間違いだろ。疲れてたんじゃないか」
みたいに信じてもらえないケースが多いでしょう。
すぐに「それ幽霊だよ、間違いなく。怖いねー」とか言われたら変ですよね。
この場合、社会常識に照らして相手は判断するでしょう。

「昨日の夜じゅう部屋に幽霊がいて一睡もできなかったので今日は欠勤します」
会社にこういう電話をかけたら、「おいちょっと何言ってるんだ、待てよ」
となるんじゃないでしょうか。すんなり受け入れてはもらえない。
ただ、「お盆の夜にぼーっと仏壇の前の灯籠を見ていたら、
そこに去年死んだお父さんの顔が浮かんで消えた」

こういう話をして、真っ向から否定されることも少ないでしょう。
「ああそれ、きっと帰ってきてたんだよ。子ども思いの人だったから」
こんなことを言われても不思議ではないですよね。
このように怪談の場合、世間常識と怪異の内容が大きな齟齬を起こさないよう、
距離感をはかりながら成り立っている場合が多いのではないでしょうか。
 

へいあかおあおあ