今日は科学ニュースからです。
科学ニュースを見てましたら、自分がこのブログで裏テーマにしている
「恐怖」と関係がある、興味深い項目を見つけたので。
昔から、危機的な状況にあるときには「時間がゆっくり過ぎていく」
感じがする、と言われてきました。

危険な状況というのは、たいがいが恐怖を感じる状況でもあるわけですね。
例えば、車に乗っていてカーブを曲がりきれずスピンしてしまったときとか。
ただ、厳密に同じかはわかりませんが、これは事故などの場合だけでなく、
スポーツでも聞く話です。古いことになりますが、
読売巨人軍の名監督だった川上哲治氏が現役で絶好調だったときに、

「ボールが止まって見える」と言ったのは有名な話ですね。
また、短距離走の世界的な選手が、わずか10秒前後の走ってる時間が、
普通に過ごしている10秒よりも長く感じられる、と述べているテレビ番組を
見たことがあります。つまり、極度に集中している場合に、
時間が長く伸びて感じられるということのようです。

名選手 川上哲治


これ、客観的な時間の長さが伸びるはずはありませんので、
ゆっくり感じられるということは、外部から入力される視覚情報
(もしかしたら聴覚なども?)を脳が処理する速度が速くなっているのでは
ないか、という仮説が持たれていました。

たびたび『ジョジョの奇妙な冒険』を持ちだして恐縮なのですが、
第三部の『スターダストクルセイダース』で、
「ザ・ワールド」という時間を数秒間止めることができるスタンドが
出てきてましたが、これは最強に近いですよね。

相手が止まってる間に、自分だけ動けるわけですから。
これに対し、主人公の操るスタンド「スタープラチナ」は、
きわめて正確かつ素早い動きができることが特徴でした。
作品中では、戦いによってその能力にさらに磨きがかかり、

 



最後には、敵と同じく時間を止めることができるようになっていましたね。
ただし、実際の人間の場合、手足などの動きを速くするのは
限度がありますが、脳内の処理速度は速くできますので、
意識の中だけで、時間が長く感じられるようになるのだと思います。

交通事故など「危ない!」と感じた瞬間には、
周囲の風景がスローモーションに見える
――そんな現象が本当に起こるとする研究成果を千葉大学が発表した。
危険を感じた時は視覚の処理能力が通常よりも高まり、
事態がスローモーションのように感じることを確認したという。

視覚の処理能力を測る実験:危険や安全の印象を与えるカラーの画像を
24枚用意し、それぞれ1秒間表示した後、10~60ミリ秒の範囲で、
モノクロ画像に切り替える実験を行った。危険な画像の場合は、
モノクロに見えるのに必要な時間が短くなった。これにより、危険な状況では、
通常より早く視覚情報を処理できる可能性が分かったという。

また、0.4~1.6秒の範囲で各画像を表示し、
1秒間の長さを感じるのにかかる時間も測定。危険な画像が見えている時間は、
実際より長く感じることを確認した。2つの実験から、
危険な状況では物事がスローモーションに見えることを証明したという。


(ITmedia) クリックで拡大できます


まあ、心理学的な実験ですから、つねにぴったり同じ結果になるということは
ないでしょうが、追試しても全体の傾向は大きく変わらないんじゃないか、
という気がします。しかし、この手の実験は難しいですよね。
実際に被験者を危険な目に合わせることはできませんから。

この場合も、被験者の頭の中には、どうしても「今は写真を見ているのだ」
という状況把握が根底にあるでしょうから、本物の危機状況の場合は、
もっとはっきりした結果が出るのかもしれません。たしか外国で、
もう少しハードな実験をしてたような、と調べてみたらありました。

キャプチャ

アメリカのベイラー医科大学というところの実験ですが、
被験者を45m!の高さ(ビルの10数階ですよね)から落とし、
安全なネット上に着地させるようにする。このとき落ちる経路に、
ランダムな数字を表示する掲示板をセットし、読み取れるかどうかを
調べる。しかしこれ、やった人は勇気がありますよねえ。

この結果としては、被験者の全員が掲示板の数字は読み取れませんでした。
しかし、やはり全員が、落ちている間は時間の長さが伸びているように
感じたんですね。まあこれはそうでしょう。「目」そのものの機能が、
突然向上するということはありませんから。



同じカメラを使っているので、その性能に違いはないわけです。
実験者は結論として、落下中の記憶力が劇的に向上したのだと
考えました。そしてあらゆる状況を詳細に記憶する。
これもまた、脳内の処理速度の問題なわけです。
なぜこういうことが起きるのか、仮説の段階でしかありませんが、

危機的な状況や、極度の集中力が必要な状況において、脳は他の
比較的不必要な情報を遮断し、その分の力を振り向けるのではないか、
というものがあります。これもなかなか実験では確かめるのが難しい
ことですが、いずれは、脳内の血流の動きやシナプスの発火などを、
脳生理学的に確認することができるかもしれません。

さてさて、自分は怖い話の中で恐怖の瞬間をたくさん書いていますので、
こういう実験結果は活かしたいなと思うのですが、どうすれば効果的
でしょうかね。単純に、怖い瞬間を字数を増やして長く書く、
ということでもない気がしますし、なかなか難しそうです。