万里の長城遭難、またあの会社 | Dragon Blog

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晴れているときの長城のイメージ



2007年7月に北海道の大雪山系トムラウシ山で中高年のトレッキング・ツアーで遭難事故が起きた。参加したのは55歳から69歳までの15人。この時、同行したガイドは3人もいた。だがこのツアーは遭難事故を起こして8人が亡くなった。


まったのく素人のパーティならまだしもある程度山歩きの経験があり、しかも、ガイドが3人もついたトレッキング・ツアーで遭難事故が起きたのはまったく想像し難い。しかし山岳事故に「気象遭難」という言葉があるが、この時の遭難事故も天候の急変が原因だった。


この遭難ではトレッキング途中に天候が激変し気温も急下降した。そして参加者からもう無理なので途中で下山しようと要求されていたのをガイドがツアーを強行したために大惨事ににつながった。


この事故で問題にされたのはツアー(旅行)といっても山歩きなのだ。日帰り登山なら不要だが、数泊の山行ではかならず予備日を1日は設けるのが山の常識だ。なぜなら山では何があるか分からないからだ。


しかしこの会社のツアーに予備日はなかった。予定の日程どおりに下山しないとその後のスケジュールが成立しないので悪天候でもツアーを強行したのが遭難を招いた。


このツアーを企画したアミューズ・トラベル社が今度は中国河北省張家口の万里の長城で日本人ツアー客が遭難して日本人3人が死亡する事故を起こした。


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雪の長城のイメージ



万里の長城といえば中国の観光地としてはとてもスタンダードな場所だ。なぜこんな人の多く来る場所で遭難などしたのだろうかと驚いてしまう。だが今回企画されたツアーは7日間で万里の長城を100キロも歩くコースとして企画されたものだ。


そして、このコースは一般の観光地から遠く離れており現地の万里の長城をガイドするガイドでさえ2回しか行ったことがない僻地だった。そのガイドの話では事故があった場所では長城が崩壊しており雨や雪が降ると遭難する危険があったという。

長城が崩壊しているということはただの山歩きと変わらないコースということになってしまう。今回の遭難事故の大きな問題点のひとつがこのコースの選定にある。


地元のガイドも入らないような場所になぜ行ったのか。このツアーに参加したのは日本人4人、中国人ガイド1人と添乗員1人の計6人。


遭難した人の年齢は62歳や68歳、79歳といった高齢者だ。崩壊した万里の長城の山中を7日間で100キロも歩くのは、もうトレッキングとは呼べない。

事故が起きたのは最終日の7日目だった。崩壊した道なき山中を歩いて6日間も行動して来たらかなりの山のベテランでも疲労がピークを超えていると想像する。

ツアー会社の明平銘添乗員によれば、当日は小雨が降っており、彼は雪は夜にしか降らないと考えていた。しかし雪は行動中の昼間に降ってきた。そして日本人ツアー客は寒さで体力を消耗して動けなくなったということだ。

動けなくなった日本人を背負って行動していたがもう無理と判断して地元ガイドを里に救援を呼びに行かせたというのが遭難事故の概要だ。

自分の経験から3泊4日の山行でも最終日は疲労困憊する。ましてや高齢者の体力を考えると7日間の山行は無謀というべきだ。


またアミューズ・トラベルは事前に現地の下見をしたのだろうか。日本の中国新聞によればこの企画は初めての企画だった。


しかし、長城のコースは現地人の方が情報収集力があり詳しいとして、中国人の明平銘添乗員(25)などの社員はまったく現地の下見をしなかった。


コースなど現地の情報はすべて中国の旅行会社に任せていた。またこの旅行会社とアミューズが取引をするのがこれが初めてとのことだ。

日本の山の場合は多くの経験者によるコースの地図や山行ガイドが沢山出廻っている。だから現地の情報も理解しやすい。そうした日本でも想定外の遭難事故が度々起きている。それは主に気象の激変だ。

今回のコースは海外だ。現地のガイドさえもほとんど立ち入らないコースであり旅行社のコース下見は必見と思われるのだが、これさえしていない。まったく危機管理能力に欠けた旅行会社といわざるを得ない。

2007年のトムラウシ山で起こした遭難事故の教訓をこの会社はまったく活かしていないことが明白になった。テレビにインタビューでも他人事のように淡々と語っている様子がすべてを物語る。


さらに事故の原因をアミューズは「大雪は想定外だった」としており、自社の責任ではないかのようなことを言っている。たしかに半世紀に一度の大雪に見舞われたことは予想ができずに運が悪かったと言える。

しかし日本では11月といえばすでに登山シーズンは終わっており、熟練者しか入れない冬山シーズンに入っている。山を知っている人ならもうこのシーズンに山には入らない。もし山へ入るなら冬の装備をするだろう。

「万里の長城を歩く会」の福田久勝さんは遭難事故があった現場を過去に歩いた人だ。彼は事故現場付近は11月には道が凍結するので歩くには適さないコースだと語っている。


また、北緯40度にある北京は日本でいえば秋田と同じだ。11月の秋田がどれほど気温が低いか考えれば分かることだ。まして万里の長城は山の上にある。平地と山の稜線では気温差が大きく、また風が吹けば体感気温もさらに下がる。


これらは登山をする人なら誰もが知っている常識だ。そうした危険をはらんでいる企画なのに雪山装備を求められていなかった参加者は、軽装のまま大雪に見舞われたとみられる。



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雪の万里の長城のイメージ


私も過去にテント泊で冬山を経験したことが何度かあるが、一番きついのは夜間になると気温が急激に下がることだ。事前にそうしたことも想定して身体が温まるような食糧や衣類などを準備しておくがそれでも深々と冷え込んでくる寒さは堪えた。


この旅行会社が登山の常識を持ち合わせていないことは3年前のトムラウシ遭難事故で明白になった。なのにまだ企業自体が存続していることが不思議だ。そしてそうした経験を活かさずに再びこのような無謀な企画を作り参加者を募ったことは犯罪にも等しい。


客を案内するコースの事前調査を現地の旅行会社に任せたことの無責任ぶりに驚くが、そもそも中国という国民性を知らなさ過ぎる。


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雪の長城のイメージ


私ごとで恐縮だが自宅で使っていた炊飯器を2日前に買い換えた。以前使用していたものは象印の高額のものだが驚く事に2年もしないうちに内釜のメッキがはがれてきたのだ。普通に使っていたのにだ。

よく聞くことわざに中身の悪さを隠して外面だけ飾るのがバレることを「メッキがはがれる」というが、あのメッキがはがれたのだ。多くの場合デザインが飽きて買い換えることはあったが内釜のメッキがこんな短時間ではがれてことはなかった。

Made in Chinaの品質の低さも悪いが、それを管理できない日本企業はもっと悪い。言い方を変えればそれは確信犯だからだ。日本人の管理者がいないとすぐに手を抜くことを日常的に行って品質の低下を招いている中国人を日本企業が仕方のないことと妥協していることは許しがたいことだ。

中国人の悪口になってしまい申し訳ないが、私は物造りをしてきた経験から下請け加工を中国に発注して製品が届いた時の落胆を毎回のように経験しているので中国という国がいい加減な仕事をすることをよく知っている。

中国人は、日本人のように仕事に真面目に取り組む姿勢に欠けているといって良い。これはロシアなども同じことが言える。お金に対する欲望は強いが労働に対する真剣度が低過ぎる人が多いようだ。

同じアジアでもベトナムやタイでは仕事を真面目にする人が多くて好感が持てる。ベトナムも中国も元農民が製造業に関わっているだけなのだが中国製品の品質の悪さには本当に閉口する。


日本の企業はこうした品質の悪いものしか作れない中国企業に下請け加工を依頼して続けて今日に至る。コストが安いというのが一番の理由だ。儲けるためには部品をいかに安く作るかにかかるからだ。


今回のアミューズ社も7日間もの山行を企画するなら日本人スタッフが行ってコースの下見調査をすべきだった。はじめて取引をする中国の旅行会社の信用度も調査せずして任せきりにしたことが今回の事故の大きな原因だ。


コースの下見など情報収集を地元業者に任せたこと。

コースの天候などの山に関する知識が不足していること。

万が一の危機管理体制ができていないこと。

日本の山を歩いて感じることは多くのデータがあり万が一の場合はすぐに下山できるコースもある。それでも急な天候の悪化で遭難する事故が毎年のように起きている。


そうしたことを考えると、トレッキングとはいえ、コースの状況や安全体制、天候など十分に検討してから参加を決めることが必要だと言える。

安易に旅行業者の甘言に簡単に乗ってはいけないというのが今回の教訓となるだろう。儲けるためならなんでもする企業が増えている昨今だ。


過去に事故も起こしている企業がどのような安全対策をしたのか、そうしたことを調べてから参加したかのかは不明だが今となっては亡くなった方のご冥福をお祈りするしかない。

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5月の中央アルプスにてゴールデンウィークでも山は冬装備が必要です。

これは休憩の時の写真ですが、下着は汗をかいても濡れないものを着ています。また強風の時の防寒具や防寒用手袋なども用意しています。

by Yasuo