先日観戦した「昭和プロレス」@後楽園ホールのお話 その壱。
この日は、メインイベントの初代タイガーマスク対藤原嘉明の一戦に尽きるだろう。
昨年胃ガンの手術をしたばかりの組長復帰第一戦。
「ワルキューレの騎行」に乗って藤原組長が登場。
開腹手術の傷跡がとても生々しく痛々しい。
そして、初代タイガーマスク。この曲に乗って颯爽と?登場(歌ってるのは元・敏いとうとハッピーアンドブルーの人)。
タイガーというと、コーナーにサッと上り、観客に手を挙げてリングインするスタイルが定番だったけど、これがうまく上れない。
それもそのはず、タイガーは現役時代の三倍はあるんじゃないかというボリュームになっていた。
私もよく言われるけど、よく言うと「貫禄がついて」、悪く言うと「デブになった」。とにもかくにもタイガーはファットになって帰ってきた(今でも現役ですけどね)。
さぁ、試合開始。
タイガーのキックに対して、組長の脇固めにアキレス腱固め。これは新日本じゃなく、往年のUWFスタイルだ。
タイガーのキックが容赦ない。角度はないけど、重さは当時以上ではないか。音もバシッ!と半端なく腹や背中を蹴りまくる。腹にキックが入った時の組長の本当に辛そうな顔。傷口がいつ開いてしまうか心配で見ていられない。
対する藤原組長。キックを体に受けながら、そこから寝技に持ってって関節をかけるのは現役時代と変わらないけれど、関節がなかなか決まらない。
この試合、たとえアングル(シナリオ)があったとしても、ガチでいこうっていう二人の共通認識があったうえでのことだろう。それだけリアルファイトに見えた。試合を見るまでは”すぐに藤原がやられて、セコンドのライガーとタイガーが対峙する時空を超えたジュニア対決みたいなシナリオなんだろうな”なんて思ってたけど、全然違った。時々こういうのがあるから格闘技は嫌いになれない。
タイガーのキックに何度倒れても、立ち上がる不屈の闘志。おそらく組長は自分と闘っているんだろう。鬼の形相で、白目をむき、泡を吹いてもなお、立ち上がろうとする組長。キックを受け、ボロボロになっていく姿は悲惨だ。だけど・・・
やがてセコンドのライガーがタオルを投げた。
終わりか・・・
しかし、組長はすぐにタオルを投げ返した。
試合続行。
「ここから劣勢の藤原が盛り返して、関節決めて終わるんだろうねぇ」
このとき、いけPさんとそんな会話をしたように思う。
プロレスのストーリーはいつも、そんなものだ。
しかし、この試合、そんなことはなかった。容赦ないキックは続く。タイガーは一切、手を抜いていない。
倒れても倒れても起き上がろうとする組長。
でも体がついていかない。
10分15秒ドクターストップ。壮絶な戦いは終わった。
写真はコチラに
試合後、マイクを持った組長。
「みんな、ありがとう・・・去年の12月、私は死を覚悟しておりましたっ。でもこうして皆さんのお陰でリングに上がれて……」と涙そして嗚咽。
組長のむせび泣きに思わずもらい泣き。
自分は今日ここに昭和のプロレスを懐かしみに、そして、少しだけ笑いに来たはずなんだけど最後に涙してしまうとは。
おそらくここにいた多くの人が想定外の涙を流したのではないだろうか。
プロレス、侮れません。
写真はこの日のパンフレット。往年の選手たちがカレンダーに収まってます。
その他の試合はまた今度書きます。