「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」を読みました。
マッドサイエンティストもの。
ミスカトニック大学の医師ハーバート・ウェストが、死体蘇生薬を開発し、死者の蘇生実験をくり返すストーリーです。
本作の死体蘇生術は、「生命活動とは化学反応の連続のことであり、死体に再び化学反応を生じさせることができれば、死後の復活が可能である」という理論に基づいています。
ただし、死体が損傷していた場合、復活しても損傷は治らず、その影響を被ります。特に脳が損傷していた場合は深刻で、知能や人格に障害があらわれます。
そのため、完全なる死者蘇生を目論むハーバート・ウェストと彼の助手は、なるだけ新鮮な死体を手に入れようと四苦八苦するのです。
死体蘇生に取りつかれ、おぞましい死体漁りをくり返す主人公と、復活した死者による狂気の凶行が恐怖をもたらします。
本作は、六回にわたって連載された作品であるため、六つの節から成ります。
節ごとに恐怖シーンがあり、おまけに前節のあらすじまでも搭載している親切な構成なので、ラヴクラフト作品にはめずらしい通俗的な印象を持ちました。芸術性の低下は否めませんが、その分、読みやすくなっています。――あくまで、他の作品と比べれば、ですが。
死者への冒涜をくり返すハーバート・ウェストの性懲りのなさに、奇妙なユーモアと愛着すら感じてしまいました。やっていることは、おぞましいのひと言に尽きるのですけども。
注目したいのは、原題です。
『Herbert West–Reanimator』
後半に注目。「リアニメーター(Reanimator)」とあります。
アニメーター(animator)とは、命を与えるもの、といった意味です。
アニメーションの語源は、ラテン語で「魂」や「生命」を意味する「anima(アニマ)」に由来しており、生命のないものに生命を吹き込むという概念をふくんでいます。
無生命に生命を吹き込むことを意味する動詞が「animate」であり、それを行う者が「animator」です。
これに「再び」を意味する接頭語「re-」をつけて、「無生命に再び生命を吹き込む者(Reanimator)」すなわち「死体蘇生者」という意味になります。
さてさて――
『魔界都市ハンター』という漫画があります。
1985年から1989年にかけて週刊少年チャンピオンで連載された作品で、原作者は我らが菊地秀行センセ(敬愛度:センセ > 先生)であります。作画は細馬信一先生。
〈魔界都市〝新宿〟〉を舞台とした伝奇SFアクションです。
この中にドクター・モヒカンというキャラクターが登場します。
その名のとおり、革ジャンを着てナナハンを乗り回すモヒカン刈りの大男ですが、その正体は、ドクター・メフィストの兄弟子にして、もうひとりの〈魔界医師〉なのであります。
死者をも蘇らせるそのメス捌きから、〈再生者〉の異名を持っています。
〈再生者〉という名称に、菊地センセはこうルビを振っているのです。
「リ・アニメーター」
と。
これ絶対『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』が元ネタっしょ。
こっそりラヴクラフト ネタを仕込んでおますなあ、センセ。
ドクター・モヒカンはハーバート・ウェストだったんだぜい!
これをずっと言いたかったけれど、周囲に理解してくれそうな人がおらず、黙っていました。
しかしいま、ブログとはいえ、長年の念願がかない、ようやく言うことができました。
感激っす。
胸のつかえがとれた爽快な気分で記事を終わります。
スッキリ晴れ晴れ。やったぜ。


