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物語の面白さを考えるブログ

マンガ・映画・フィギュア・思索など

 

『影歩む港』を読みました。

著者は菊地秀行センセ(敬愛度:センセ > 先生)。

昔、単行本で読んだのですが、急に再読したくなったので文庫本を購入しました。

 

裏表紙の内容紹介によれば、ジャンルはホラー・サスペンス。――いつもの超伝奇ヴァイオレンスじゃないのよん。

 

北陸の港町。

女将と板前のふたりで営業するその小さな飲み屋には、六脚のカウンター席があった。

常連客は五人――座る席は暗黙の了解で決まっている。彼らの興味は、いつも空席となっている右端の席に誰が座るか、であった。

霧の深い夜、奇妙な事件がおき、常連客はひとり、またひとりと姿を消していく。

やがて最後のひとりになったとき、店の格子戸が開き、ついに六人目の客が現れ……?

 

わかりにくい作品。

初読のときもわかりませんでしたが、長い歳月を経て再読した今回も、やっぱりわかりませんでした。――いや、大筋は理解できているし、ラストも多分こういうことだろうと察しはつきますが、細部に関して「結局あれは何だったの?」という疑問が残るのです。

特に○○! おまえ、吸血鬼か何かなのか?

 

本作は、四話からなる連作短編集の形態をとっています。

最初の三話が怪談で、なるほど、菊地センセらしいなと思わせておいて、最終話で急に怪談でなくなるという奇妙な構成になっています。

でも、怪談でないとも言い切れないところが、もどかしい。どうして肩を掴んだはずの人影が霧になって消失するんですかね。

 

雪の舞うさびれた北の港町、夜の中に寒さに耐えるようにともる飲み屋の灯り、訪れるのは人か、人ならざるものか……。

菊地センセの抒情趣味と怪談志向が紡ぎ出した幻想譚。

これをサスペンスと呼ぶのは、おそらく誤りであり、その本質は、現実ではないどこかへ逃避したい大人の夢物語であり、それにしくじったひとりの男の失敗譚なのである。