「月の湿原」を読みました。
主人公(語り手)が怪異に遭遇し意識を失い、後日、恐怖の体験を語るスタイルの短編。
アメリカで財を成したデニス・バリイは、アイルランドにわたり、先祖が住んでいた古城を買い戻して修復する。友人である主人公は、城に招かれ滞在する。
城の近くには湿原があり、デニスがそこを干拓する計画を披露すると、地元の住民は反対する。
湿原の底には古代都市が沈んでおり、湿原を荒らす者には呪いが降りかかるというのだ。
デニスが干拓計画を撤回するつもりがないことを知ると、地元民はよそへ移住し、城の使用人たちも出て行ってしまった。
デニスは外部から作業員を雇い、計画を続行する。
主人公は奇妙な夢を見た。湿原の小島にある遺跡から音楽が聞こえ、白い布をかぶった霊とともに作業員が踊る夢だった。
干拓が実行に移される前夜、小島の遺跡から赤い光が射し、音楽が鳴り響いた。
作業員たちは白布の霊に導かれて湿原に身を沈め、蛙と化した。
悲鳴をあげて逃げ出した主人公は、遺跡から月へ向かって立ちのぼる光の柱を目撃する。
光の中を上昇する影は、変わり果てた姿となったデニスのように見えた。
触れてはいけない土地を開発しようとしたら呪いが発動し、関係者が帰らぬ人となってしまうオーソドックスな怪談。
それにしても、ラヴクラフトの恐怖のイメージって、蛙なのね、と思わずにはいられない。
「インスマウスの影」に登場するインスマウスの住人は、魚のような両生類のような顔貌だし、「サルナスの滅亡」でもサルナスの市民は蛙のような姿に変えられて滅んでしまったし。「未知なるカダスを夢に求めて」では、月に蟇蛙のような醜悪な生き物が住んでいた。
そういえば、本作と「サルナスの滅亡」でも、蛙と月が関連していますな。月と蛙を結びつけると恐怖のイメージが立ち上がる――ラヴクラフトの感性、さすがに独特のものがあります。
