『アニメーション紀行「マルコ・ポーロの冒険」』を観ました。
もとは1979~80年にかけてNHKで放送された作品。作品発掘プロジェクトにより、放送素材を発掘・修復し、4Kリストア版として再放送したもの。
再放送期間は2025年4月5日~2026年1月31日。
13世紀のベネチアの商人マルコ・ポーロの旅を記した『東方見聞録』を基にした作品。
各国の文化・風土を紹介する実写ドキュメンタリーパートと、ストーリーを担当するアニメパートから成る。
実写とアニメとを並列表記するかのような手法に、当初は戸惑いました。
しかし、なれてくると、日本人になじみの薄い異国情緒を感じさせるのに実写パートが効果的に働いており、アニメパートの描写不足を補ってくれていることに気付きました。
現在のアニメになれた目で四十数年前のアニメを視聴した感想。
作画技術の進歩は言わずもがななので、これに関しては特に触れません。
気になるのは、脚本について。
心情描写などは、現在の方が丁寧で繊細だと感じました。
しかし、それが即、現在の方が優れている、とはならないので、話はそう単純ではありません。
昔の脚本の方が粗いです。
ですが、雑とは感じません。
例えば、別れのシーン。
マルコ・ポーロは、他国へ嫁ぐお姫さまを護送する任務を請け負います。船旅です。
道中、密航者の少年を伴うこととなり、彼はお姫さまと仲良くなります。
目的地に到着し、お姫さまとはここでお別れです。
少年は別れるのは嫌だといって泣きます。
現在のアニメなら、「旅に別れはつきものだ」とか「別れが人を大人にするんだよ」とか、何かそれっぽいことを誰かが言いそうなものですが、昔のアニメは特に何もありません。ただ、少年が泣くシーンだけ。
すぐに翌日のシーンになり、「元気でねー!」と少年は笑顔で手を振っている。
描写はこれだけです。テンポ早いな!
ただし、前日泣いていた少年が、翌日に笑顔で手を振るまでの間、彼の心にさまざまな思いが去来したであろうことは、想像するのが難しくありません。
視聴者に何かを感じさせる・想像させるという意味では、このくらいのあっさり描写(=省略)でちょうどいいのかもしれません。テンポ早くなるし。
現在のアニメ脚本でも、こうした省略の手法は用いられますが、現在の方がわかりづらい印象です、個人的には。
「点」と「点」とをつなぐ「線」を視聴者に想像させるという観点では、昔の方が丁寧で、現在の方が雑、という評価も成立するかもしれません。
スタイリッシュと勘違いした難解な省略と、くどすぎる説明セリフの氾濫――視聴者に対する「不親切」と「おせっかい」の針の振れ方が、現在の方が極端なような……。
脚本の良し悪しは単純に答えが出せる問題ではありませんが、時間の経過がそのまま進歩・向上につながるわけでもなさそうだ、というのは興味深いです。でなければ、温故知新なんて言葉、生まれなかったでしょうしねえ。
マルコ・ポーロの旅は、イタリアを出発し、中東を経て、中国の元にいたる壮大なものでした。
元で十七年間をすごしたあと、年老いた父と叔父を故郷ベネチアに帰すため、再び旅の人となりました。
印象深いエピソードはいくつかありますが、衝撃的だったのが最終回。
無事、帰郷できたマルコですが、驚異にみちた東方の旅の話は、当時のヨーロッパの人々には信じてもらえず、「うそつきマルコ」と呼ばれて淋しい晩年を送ったのだとか。
哀しくなりました。
作品内容とは無関係ですが、スタッフの中にマッドハウスの川尻善昭さんの名前を発見してビビりました。
こんな昔から活動されていたんだ。すげー。
【オープニング主題歌「いつの日か旅する者よ」】
前期と後期で映像がかわります
「明日はまた 希望で私を蹴って起こせ」
この歌詞がすごすぎる
