(前回からの続き)
磯山弁財天をあとにし、涌釜神社と出流原弁天池におもむきました。
といっても、この三者は、実質的に同地点にあるといってよく、徒歩での移動でした。
「涌釜」と書いて「わっかま」と読みます。
「出流原」は「いずるはら」。
漫画や小説のキャラクターに使えそうな名前である(オタクの感想)。
あ、どちらも水と関連がありそうな名前ですね、などとマトモなことを呟いてみる(手遅れ)。
【涌釜神社】
鳥居。
社号標には、神社名ではなく、池の名前が刻まれています。
池の方がメインなのかしら?
神橋の向こうに社殿が見えます。
左側が出流原弁天池です。
拝殿。
扁額。
本殿。
本殿。
反対側の隙間から撮影。
詳しい御由緒などはわかりませんでした。
栃木県神社庁のHPから全文を引用しますと――
大正2年に旧地より現在地に造営遷宮し、名水百選にも指定されている「弁天池」の辺りに鎮座している。
水の神ならびに子守りの神として子連れの参拝者が多い。
――とあるだけで、「旧地」がどこか説明はありませんし、御祭神もはっきりしません。
「御神徳」の項に「水の神、子守りの神」とありますが、不自然な書き方です。「家内安全」「厄除け」などと書くのがふつうだからです。御祭神の性格を示唆しているのでしょうか?
人丸伝説が伝わっているので、柿本人麻呂を御祭神とする説がありますが、調べたかぎり、情報の出どころを特定できませんでした。
このようなわけで、私の調査能力では、涌釜神社について、記事にするに足る情報を集めることができませんでした。
【出流原弁天池】
説明板には、「出流原弁天池(県指定天然記念物)は、地下水が古生層石灰岩の亀裂から湧き出してできたもので、国の名水百選に選ばれています」と書かれています。
古生層って何ぞ?
という疑問から出発して、あれこれネットで調べていたら、おおよそ以下のようなことがわかりました。
古生層とは、古生代に形成された地層のことである。
古生代とは、地質時代の区分のひとつで、他には中生代とか新生代とかがある(詳しく述べればもっとある)。
すると、出流原弁天池の水は、古生代に形成された石灰岩を通過して湧いていますよ、と説明板は言っていることになる。
ところが、である。
栃木県の地質を調べてみたところ――。
出流原弁天池を擁する磯山は、石灰岩でできているのであるが、これはジュラ紀に形成された「付加体」であるらしい。
付加体とは何か?
それを説明するには、プレートテクトニクス理論が必須となる。
海溝において、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際、海洋プレート上の堆積物が剥ぎ取られ、大陸プレートに付着する。この付着したものが「付加体」である。
新しい付加体が古い付加体を押しやるため、海溝から離れるほど、付加体の年代は古くなる。
栃木県佐野市の地下にある石灰岩は、ジュラ紀に大陸プレートに固着した付加体である。
ジュラ紀は中生代である。
すると、説明板にある「古生層石灰岩」という文言は、正確さを欠いているのではないか、という疑問が、地質学ド素人ながらに湧く。
ただ、ここでジュラ紀と言っているのは、あくまでも付加体が大陸プレートに固定された時期であり、付加体そのものが形成された時期は、それよりも遡る。
もしかしたら、その時期が古生代なのだろうか? それで「古生層石灰岩」と言っているのだろうか?
さらに調べたところ、「栃木県の地球科学」というサイトで、栃木県内のジュラ紀の付加体の分布図を見つけました。
それによると、出流原弁天池のある地点には、確かに石灰岩の地層があり、形成年代が「石炭紀-ペルム紀」となっています。
石炭紀とペルム紀は、古生代に属します。
ここまでわかって、ようやく、説明板にあった「古生層石灰岩」の意味が理解できました。
はるか昔――古生代に形成された石灰岩が、海洋プレートに乗って移動し、大陸プレートと衝突。その際、海洋プレートから剥がれ、大陸プレートに固着した。それがジュラ紀の出来事である。長い年月がすぎ、やがてその場所は、日本列島の、栃木県佐野市と行政上呼ばれる場所となった。石灰岩で濾過され地表に湧出した地下水は、環境省によって名水百選に選定された。昭和60年(1985)のことである――。
出流原弁天池の湧水が澄んでいるのは、このような悠久の歴史によって磨かれたからなのです。
「説明長すぎ」
それでは、満を持して、出流原弁天池をご覧いただきましょう。
波紋ができず、凪いでいたら、鏡面のようになっていたにちがいないと思わせる、澄んだ水面です。
透明度が高いので、魚の姿がはっきり見えます。
澄んだ水を見ると、わけもなく感動しますね。
以上、涌釜神社と出流原弁天池でした。
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涌釜神社(わっかまじんじゃ)
御祭神:水の神?
子守りの神?
鎮座地:栃木県佐野市出流原町2123
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