呪術廻戦 第26巻 (ネタバレあり) | 物語の面白さを考えるブログ

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『呪術廻戦』第26巻を購入して読みました。

以下、ネタバレありで書きますので、未読の方はご注意ください。

 

ネタバレする前に、本作に対する私のスタンスを説明しますと、週刊連載は読んでいます。

でも、一回立ち読みするだけなので、細かい点は忘れています。

コミックスは、興味のある巻だけ、つまみ食いのように買っています。なので、所有していない巻のおまけページで、設定の補足などがなされていたら、知らない場合があります。

 

第26巻では、五条悟と両面宿儺との戦いの結末が描かれます。

これに関する賛否や、面白いか否かは、人それぞれでありましょうから、言及は保留します。

本稿の主題は、「『呪術廻戦』は、やっぱり、わかりづらいな!」です。――前にもそういう記事を書きましたっけ。

 

今回、一番わかりづらいと感じたのが、「魔虚羅の適応を伏黒恵に肩代わりさせた」という文言です。

「適応」も「肩代わり」も、言葉の意味はわかりますが、「適応を肩代わりさせた」になると、文意を汲み取りにくくなります。

「肩代わり」とは、義務や責務、面倒な仕事などを代行することです。ほとんどの場合、肩代わりする内容がネガティブな意味合いを持つのは、「駕籠を担ぐのを交替する」ことが語源だからでしょう。

「適応を肩代わりする」を、素直に解釈すると、魔虚羅が無量空処に適応するべきところを、伏黒恵が代わって適応した、となります。

しかし、実際に適応したのは、あくまで魔虚羅であって、伏黒恵ではありません。

つまり、上述の解釈は間違いということになります。

 

本編の描写を見るかぎり、伏黒恵(の魂)が肩代わりしたのは、魔虚羅が受けるべきダメージです。

すなわち、「伏黒恵に適応を肩代わりさせた」は、「適応が完了するまでに魔虚羅が被るダメージを、伏黒恵に肩代わりさせた」と解釈するのが妥当と思われます。

それを五条悟は「肩代わりしたのは あくまで〝適応の過程〟であって〝結果〟じゃないだろ」と言い表したのだと思います。補足説明であるはずのこの台詞も、わかりづらい範疇に入ると感じましたが。

私はこのように解釈しましたが、正解かどうか、一抹の不安を拭えずにいることは白状しておきます。

 

本稿を執筆するにあたり、24巻と25巻を読み直してみましたが、〝わかりづらさ〟の正体が見えたような気がしました。

内容が難解なのではなく、小難しい語彙を使用しているからでもなく、文章が成っていないからだ、との結論に到りました。

実例を出したほうが理解しやすいと思われますので、そうします。

24巻おまけページに、

 

「〝浴〟に選ばれたのは 禪院家の忌庫奥の懲罰(訓練)部屋でした」

 

とあります。

これは、わかりやすく書くなら、「〝浴〟を行う場所として選ばれたのは」とするべきでしょう。

妙に語句を省くから、わかりづらくなるのです。

ですが、まあ、これくらいの省略なら、許容範囲でしょう。

次に示すのは、許容範囲を逸脱した例。

25巻より、万の〝虫の鎧〟の特性を説明しているシーン。

 

「そして中距離戦闘を 一度構築してしまえば 呪力を通し続ける限り 自在に操ることのできる液体金属でカバーする」

 

とあります。

少し長いので、余計な修飾句を排除してみます。

 

「中距離戦闘を 自在に操ることのできる液体金属でカバーする」

 

文章は短くなりましたが、文意はよくわかりません。

必要な文言が省略されすぎている印象です。

本編の描写と照合して、省略されている部分を補うと、以下のようになりました。

 

「近接戦闘では、エネルギー効率を極めた〝虫の鎧〟のパワーがものをいう。しかし、間合いをとって行われる中距離戦闘では、そのパワーを十分に活かせない。その対策として、自在に操れる液体金属を飛び道具のように用いることで、中距離戦闘における不利をカバーする」

 

このように記述すれば、わかりづらいということはなくなると思います。

全編を通して、このような語句の省略は、随所に見られます。

うまく省略すれば、コンパクトでエッジの利いた文章になりますが、下手に省略すると、文意を損います。どうも私には、後者の例が多いように感じられます。

 

〝わかりづらさ〟に関する話題はここまでにして、魔虚羅に関する疑問。

「渋谷事変」のとき、宿儺は魔虚羅を倒しているわけですが、そもそも、これは「調伏」として認定されているのか、という疑問です。

伏黒恵は、重面春太を巻き込んで〝調伏の儀〟を始め、魔虚羅を呼び出しました。勝てないとわかり、重面春太を道連れにしようとしたのです。

しかし、伏黒恵に用のある宿儺は、彼を生かすべく行動します。〝儀〟に参加していない宿儺が魔虚羅を倒すことで、〝儀〟そのものをなかったことにして、伏黒恵を救ったのでした。

複数人による調伏は無効になると作中で明言されていることから推察すると、「調伏」として認定されるには、厳密な条件があるように思われるのですが、〝儀〟を始めた時点で〝調伏者候補〟としてそこにいなかった者が魔虚羅を倒した場合、それは「調伏」したことになるのでしょうか?

まあ、でも、宿儺は魔虚羅をちゃんと使役しているので、調伏したことになっているんだろーなー(棒読み)。

 

長々と、重箱の隅をつつくようにケチばかりつけてきたので、最後によかった点を挙げて、稿を〆ます。

空港のシーン、夏油の目尻に涙が滲んでいるコマは、グッときました。

 

以上!