黒死牟は、無一郎くんを柱に串刺しにしたあと、切断した腕の止血をしてあげます。
子孫だから、特別扱い。
そんな黒死牟を、物陰から狙撃しようとする玄弥。
でも、黒死牟は気付いていて、一瞬で背後に回り込み、左右の腕と胴を切断。
鬼喰いをする鬼モドキの鬼狩りなど、生かしておく理由がないので、容赦なし。
黒死牟の敗因は、この二人に確実にトドメを刺さなかったこと。
余裕で勝っていたのにね。画竜点睛を欠くとはこのことよ。
無一郎くんを生かしておいた理由は明言されています。子孫だから。戦力補充のため。
でも、玄弥の場合は―― トドメを刺し損ねたのは、喋りすぎが原因。
手抜きはしていないけれど、ちょっと仕事が遅いわな。
仕事を完遂してからお喋りしろや。仕事中にくっちゃべるヤツは、やっぱりダメだな。
それにしても、黒死牟がここまでお喋りなキャラだとは思いませんでした。「上弦集結」を読んだ時点では、黙々と仕事をこなすイメージだったのですけど。
玄弥のピンチに、ヒーローのごとく現れたのは、風柱・不死川実弥!
頼りになる兄ちゃん登場! って感じだ。
兄弟の会話から、実弥の本心が判明。
弟には、平和に幸せに暮らしてほしかった。だから、鬼殺隊を辞めるように、わざと冷たく接していた。―― これは、大方の予想どおり。
だけど、この予想を全面的に支持することに、一抹のためらいを持たせたのが、柱稽古のとき、玄弥の目を本気で潰しにかかったこと。盲目にしておいて平和に暮らせもないもんだ。それとも、鬼喰いしていると聞いた直後の行動だから、目ぐらい潰さんと、鬼を喰ってまで戦うこいつは、隊を辞めないと思ったのか。鬼喰いできる体質なら、目を潰しても回復することまで計算済みの行動だったのか。真相は、何度読み返してもわかりません。
「兄弟で……鬼狩りとは……懐かしや……」
ほぉらまた! 黒死牟のおっちゃん、喋ってるがな。
こうやって、起きたことに、いちいち感想を述べているから、仕事が遅くなるんやで。
実弥 対 黒死牟、開戦!
黒死牟の横薙ぎの一閃を身体を沈めて躱した実弥は、黒死牟の股の間へスライディング。
足首を狙いに行ったが、黒死牟は前方へ大きく宙返りし、これを回避。
実弥は、実利重視の超実戦派。無一郎くんの流麗で整った剣技とは対照的なケンカ殺法だ。
どちらかと言えば正統派の剣士である黒死牟に対抗するに、実弥の戦闘スタイルは存外に有力であった。(と、わかるのは、次の百六十七話なのだけれど)
ここで、唐突に、将棋の話をします。
昔、NHKで、日曜日の将棋対局を観たのです。
対戦カードは、高橋道雄 対 羽生善治。
このときの、解説者の言葉が、いまでも忘れられません。
「一手指した方がよく見える。これは名局ですね」
対戦者が、互いに、手抜きも油断もせず、常に最善手を繰り出し続ける。
今の一手が、先に相手の出した一手を上回る。そして、今の一手を、相手の次の一手が越えてくる。この応酬の上で、勝負がどちらに転ぶか、まったく予測できない。
バトルもので、一番面白いと感じる勝負は、このようなものであろうと思います。
これができるのは、実力が拮抗していてこそ。
では、格上と格下との対戦で、格下が勝利するパターンを、面白く見せるには、どうすればいいか?
この問いに対する最適解を、私は持ち合わせていないのですよね……。
黒死牟戦がそれだとは言いません。
黒死牟おじさん、喋りすぎ、ってツッコんでる時点で、黒死牟戦は、ファンとしては残念ながら、最適解ではありません。
あとから、「ああすればよかったのに」という感想が出てくるようでは、作中人物は最善手を指していないことになりますから。あの場面では、ああするよりなかった、あれがベストだった、という感想を引き出さないと。
下剋上を説得力を持たせて面白く描くのは難しいですね。
格下が、格上を研究していて、事前に戦略戦術を用意しているならまだしも、黒死牟戦のように、予期せぬエンカウントをした場合は、特に、ね。
実弥の放った〝壱ノ型 塵旋風・削ぎ〟を、真っ向から刀で受け止めた黒死牟。
刀身には目玉がいっぱい並んでいる。
「気色の悪ィ刀だぜェ」
実弥がもっともな感想を述べたところで
次回へ続く!
黒死牟に目がたくさん付いている理由も、黒死牟戦のどこかの回で、考えてみたいと思います。

