読者様からリクエストをいただきましたので、「仮面ライダー響鬼」について書きます。
響鬼(ひびき)は「平成仮面ライダー」の六作目に当たる作品。
仮面ライダーではないヒーローものを創る意図の下、「変身忍者 嵐」のリメイクとして
企画されたものの、紆余曲折を経て、スポンサーの意向で「仮面ライダー」のブランド名を
冠することとなったため、「仮面ライダー」らしくないヒーロー像に仕上がりました。
本作のライダーは〝鬼〟です。
人間は鍛え抜けば誰でも鬼に変身できるという世界観。
戦う敵は魔化魍(まかもう)と呼ばれる魑魅魍魎――早い話、妖怪です。
鬼に変身した人間が、妖怪退治をして、人助けするのが、物語の骨子です。
退治のし方がユニークで、ライダーキックなどの従来の必殺技ではなく、
楽器を奏でて〝清めの音〟を魔化魍の体内に響かせることによって斃します。
これを「音撃」と言います。
本質を表すなら「音撃戦士 響鬼」と呼ぶべきですが、「仮面ライダー」の名称が
付いているのといないのとでは玩具の売り上げが違うから、これはしゃーない。
バイクが苦手な響鬼さんは、サポートメンバーの運転する車で移動しますが、
れっきとした「ライダー」なのです(後半、苦手を克服してバイクに乗れるようになります)。
変身は「ベルト」ではなく「音叉」で行います。
仮面ライダーのデザイン上の特徴は「複眼」「触角」「クラッシャー(口と顎)」の三点ですが、
全部ありません。触角の代わりに角が生えています。鬼なので。
一見、口はありませんが、ツルツルのところがパカッと開いて火を噴きます。
響鬼の概要を説明し終えたところで、ここから本題。
作中に登場する「架空の土地」について述べます。
SF作家の半村良先生は、架空の土地を設定する際、実際の地図を利用します。
地図上の隙間――ちょっとした空き地などの空間を、街ひとつ分の大きさがあるものと
仮想して、地理の設定を作るのだそうです。何かで読んだ記憶があります。
そうすると、その架空の街を含む地理に、リアリティが生まれます。
その街に行く経路を説明する際、「○○線の△△駅で乗り換えて、三つ目の駅で降りる」
などと書けるのです。○○と△△は実在の名称が入ります。
このように書くと、土地勘のない読者などは、本当にその街が存在していると
思い込んでくれるかもしれません。
「響鬼」においても、上記の手法とはちがいますが、実在の地名を利用して
架空の土地を構築しています。
第七話「息吹く鬼」にて、鍛錬のため山籠もりをしているヒビキを、
彼を慕う少年・明日夢(あすむ)が訪ねます。
ヒビキの居場所は、「鹿島線の巴川駅」で降りて~と説明されます。
鹿島線は、JR東日本の路線。千葉県の香取市と茨城県の鹿嶋市とを結んでいます。
鹿嶋市は、鹿島アントラーズのホームタウンのひとつであり、常陸国一の宮である
鹿島神宮のある市です。
ところが、この路線に、「巴川駅」は存在しないのです。
巴川駅が存在するのは、「鹿島鉄道線」です。
こちらは茨城県の石岡市と鉾田市とを結ぶ鉄道です。運営会社は鹿島鉄道。
2007年(平成19年)に廃線となりました。「響鬼」の放送は2005年1月~2006年1月。
では、巴川駅が登場するシーンを見てみましょう。
明日夢くんは寝過ごして、次の常陸小川駅で気が付きます。
ここで四つの駅名が登場しましたが、どれも鹿島鉄道線に実在するものです。
ただし、順番が違います。
〇劇中の駅のならび
・八木蒔 ― 巴川 ― 常陸小川 ― 桃浦
〇実際の駅のならび
・常陸小川 ―(間に一駅)― 桃浦 ― 八木蒔 ―(間に五駅)― 巴川
実際の駅名を使用しながらも、順番を入れ替えることで、この路線が架空の存在で
あることを表現しています。
駅名板を造ったスタッフに拍手を送りたい気持ちです。
この駅名板こそが、虚構とリアリティを両立させている立役者だからです。
このときのエピソード(第七、八話)に登場する魔化魍の呼称は、
「奥久慈のイッタンモメン」です。
すると、ヒビキが籠っていたのは、奥久慈の山であることになります。
奥久慈は、茨城県北部、福島県との境に近い、久慈川に沿う地域のことです。
ところが、実在の「鹿島線」も「鹿島鉄道線」も、県北まで通じてはいません。
前者は県の南東部、後者は県南・県央を走る路線です。
劇中では、三時間くらいで「鹿島線」の「巴川駅」へ到ると説明されています。
出発駅を東京の柴又駅、到着駅を奥久慈の常陸大子駅と指定して路線検索すると、
京成金町線 - JR常磐線 - JR水郡線というルートがヒットします。
所用時間は四時間強~五時間弱です。
三時間で行くとすれば、常磐自動車道を使用するのがベストでしょう。
このように、諸々検討してみると、東京から三時間で奥久慈へ到る「鹿島線」が存在する
「響鬼」時空の茨城県は、現実の茨城県と似て非なるものであることがわかります。
(言い忘れていましたが、明日夢くんは柴又在住です)
――以上、「響鬼」に登場する仮想された茨城県について、でした。
以下、おまけ。
一時期、仮面ライダーのロケ地を聖地巡礼していました。
そのとき撮影した写真を紹介します。
「猿橋のバケネコ」が根城にしていたお寺は、茨城県石岡市にある善光寺という廃寺です。
猿橋は山梨県ですが、ロケ地は茨城県というわけ。
ちなみに「奥久慈のイッタンモメン」が棲息する池のロケ地は、静岡県です。
善光寺。撮影は私。
石段を上って、ヒビキさんとトドロキさんが来ました。
戦闘シーン。にゃんこがたくさん。
別角度から。撮影は私(しつこい)。
ちなみに、この善光寺は、「仮面ライダー ビルド」の第七話でも使用されています。
石段を下った、門の内側の広場がロケ地になります。
そこの写真もありますが、今回は割愛します。
にゃんこ爆殺! お、鬼ーっ! あ、鬼だった。
響鬼紅(くれない)は、夏の魔化魍(たくさん湧く)用の強化形態。
普段、鍛えているところへ、さらなる鍛錬を積んで、この形に到ります。
弱くては人助けができないのですよ。
人助けのために心身を鍛え抜く〝大人〟のヒビキとの交流を通して、
〝少年〟明日夢がたくましく成長していく様子を描いたのが、「響鬼」の物語です。
面白いですよ。













