オマージュの認定は難しい | 物語の面白さを考えるブログ

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甘露寺蜜璃の日輪刀は、鞭のようにしなる薄刃の刀である。

 

吾峠先生は、三浦健太郎先生の『ベルセルク』が大好きである。

そう編集者が証言している。

ファンブックで、『鬼滅の刃』の前身である『鬼殺の流』のネームが公開されているが、義手・義足の主人公の足から「バズーカみたいなのを出しますか?」と吾峠先生が提案し、却下されたエピソードからも、『ベルセルク』を好きなことが伝わってくる。

 

『ベルセルク』に、「鞭のようにしなる薄刃の刀」が登場する。

バーキラカの首領シラットが使う〝ウルミン〟である。

蜜璃の日輪刀は、このウルミンのオマージュである、と言ってよい――だろうか?

なるほど、発表した順序で言えば『ベルセルク』が「鬼滅」より先であるし、吾峠先生が同作のファンであることを考慮すれば、この説明は不自然ではない。

まったくあり得る話である。

ただし、条件が付く。

ウルミンが三浦先生の独創であるならば、と。

そうであるならば、後発の作品に登場する「鞭のようにしなる薄刃の刀」は、直接的にせよ間接的にせよ、『ベルセルク』の影響を受けていると断言してよい。

だが、実際はそうではない。

ウルミンは実在する武器なのである。

 

私がネットで目撃した話。

ある絵師――Aと呼ぶ――が、自分のイラスト――作品Aと呼ぶ――をパクられたと言って、絵師Bの作品Bとの比較を行った。

それらは人物のバストショットであったのだが、見ると、構図、ポーズ、指の曲げ方にいたるまで、そっくりである。

偶然に似たというには、不自然な類似である。

これなら、先に公開された作品Aが、パクられたという話も、説得力があるように思われるが……。

ところが、新説が登場したのである。

第三の絵の存在が明らかになった。

見ると、作品A・Bと、構図、ポーズ、指の曲げ方にいたるまで、そっくりである。

それは、人物デッサン用の資料として用いられるポーズ集の一コマであった。

市販されているので、誰でも入手できる品である。

つまり、絵師A・Bとも、互いの存在を知らず、偶然にも同じ資料を参考にして作品を描き上げたところ、先に作品Aを公開した絵師Aが、後に公開された作品Bを発見し、パクられたと思い込んだ可能性が出てきたのである。

真実はわからない。

ただ、ふたつの作品に類似の要素があるからといって、パクリなどと軽々に口に出さない方が賢明である、とは言えるだろう。

 

剣を主要な武器とするバトルものを構想するとき、まともな創作者なら、武器の種類や歴史について、ひととおりのことは調べるであろう。

であるならば、吾峠先生が『ベルセルク』を介さずしてウルミンを知っていた可能性もないとは言い切れない。

蛇柱・伊黒小芭内の日輪刀は、波状の刀身が特徴的である。

類似の刀剣は実在する。

ドイツの「フランベルジェ」、イタリアの「パリングダガー」、フィリピンの「クリス」、日本の古墳時代の「蛇行剣」などである。

吾峠先生は、「波状の刀身を持つ刀」の着想を、どこから得たのだろうか?

実在の武器から?

マンガやゲームなど他作品から?

まったくの独創?

それは本人に確認するまでわからない事柄である。

甘露寺蜜璃の日輪刀に関しても、また。

 

ふたつの作品に類似の要素を発見したからといって、やれオマージュだ、やれパクリだと、軽々に口にしない方が賢明であろう。

絵師Aのように、限定された視点から、物事を恣意的に解釈している可能性があるからだ。

もし口にするのならば、それなりの根拠なりソースなりを提示すべきである。

 

 

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