◇第86話◇ 妓夫太郎 | 物語の面白さを考えるブログ

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突如、妹の背中から出現した〝お兄ちゃん〟。

目下、作劇上の急務は、

彼のキャラを立てることである。

というのも、彼は、この後、無類の強さを見せつけ

鬼殺隊を圧倒するのであるが、

ポッと出の後出しキャラが主人公を追い詰めたら、

読者はそれを納得しない可能性があるからである。

現段階では、何の伏線もなしに、強力な第二形態が

現れたようなものである(本当は伏線はあるのだが)。

ご都合展開と思われかねない崖っぷちだ。

突然の登場に読者が呆気にとられている今のうちに、

早急に彼を魅力的な敵役に仕立て上げねばならぬ。

 

柱の場合、本来のキャラクターとは正反対の

第一印象を読者に与えることにより、

そのギャップを利用してキャラを立ててきた。

堕姫の場合、遊郭での振る舞いを描写することで、

その驕慢な性格を表現してきた。

しかし、〝お兄ちゃん〟には、

そのようなエピソードを用意する暇がない。

では、どうするか?

 

吾峠先生は、まず、彼の名前の由来を、

ナレーションで説明することから始めた。

遊郭における「妓夫」という役職の解説。

そして、それがそのまま、

彼の名前となっていること。

ここで与えられた知識により、

読者は、彼の生い立ちを語る過去編に

すんなり入って行ける仕組みにもなっている。

 

彼の名は〝妓夫太郎〟。

 

次に、台詞によって、キャラの特徴を

印象づけていく。

妓夫太郎は、ひたすらに妬みを口にする。

「~なぁあ」と語尾をのばす口調も耳に残る。

これで、ジメジメした陰キャであることが表現できた。

そして、決定的なキーワードの投入。

すなわち、〝取り立てる〟である。

彼が徴収人であったことが説明済みなので、

この語はピタリと嵌まる。

加えて、借金のない人間から取り立てを行う

理不尽さも表現されており、

読者は威圧感をも覚えるであろう。

「ぶっ殺す」などの月並みな台詞では、

このような効果は望めない。

 

最後の仕上げは宇髄天元との掛け合いである。

女房が三人いるという天元の発言に、

一拍の無言の間を置き、

妓夫太郎は嫉妬全開で許せないと応じる。

この〝間〟の存在により、

この会話は漫才として成立している。

つまり、妓夫太郎は、天元の〝相方〟として、

読者に認知される運びとなったのである。

 

ここまでくれば、読者は、妓夫太郎の存在を、

場当たり的な後出しジャンケンとは思わない。

天元とのさらなる絡みを見たいと望むはずだ。

吾峠先生は、短い間でキャラを立てるのが、

本当に上手い。

 

妓夫太郎が血鬼術〝飛び血鎌〟を繰り出せば、

それを凌いだ天元が、爆薬で逆襲する。

両者、互角の応酬。

堕姫の帯が防護の天蓋となり、

爆発の衝撃を防いだ。

妹を肩車した妓夫太郎が不敵に宣言する。

 

「俺たちは二人で一つだからなあ」

 

〝上弦の陸〟との真の戦いは、始まったばかり!

次回へ続く!

 

 

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