◇第17話◇ 矢印鬼  | 物語の面白さを考えるブログ

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炭治郎と矢印を操る鬼・矢琶羽の戦い!

 

私も、能力バトルものの漫画や小説は、けっこう読んだつもりでしたが、

〝矢印〟を操る能力を見たのは、初めてかもしれません。

こういう発想、どこから出てくるのでしょう。

刀では斬れず、自動追尾機能つきの矢印。

触れたが最後、矢印の方向へ運動ベクトルを変えられてしまう。

厄介な攻撃に、水の呼吸の技を応用して対抗する炭治郎は、

矢印を逆用して、ついに矢琶羽へ一太刀を浴びせます。

これが致命傷だと判明するのは、次の十八話。

 

炭治郎の剣技に関して、前々から疑問に思うことが

あったので、ここで書いておきます。

 

水の呼吸の技を出すと、視覚エフェクトが発生します。

水流のような線とか、波しぶきとか、波紋模様とか、です。

当初、これは、純粋に、漫画としての表現だと思っていたのです。

スピード感を表現する際、背景に引く平行線(スピード線といいます)

の類だとばかり、思っていたのですよ。

水の呼吸の動作は、水のイメージですよ、という表現だとばかり。

 

ところが――それは違うのではないか?

と疑念を抱くようになりました。

そのキッカケとなったのが、この十七話です。

 

今回、炭治郎は、陸ノ型・ねじれ渦で、矢印を巻き取っています。

巻き取った矢印を、刀身に纏いつかせたまま、振るっています。

矢印が刀身に触れたのなら、刀はその方向に軌道を変えるはず。

そうならないということは、刃と矢印との間に、

空隙が存在することを意味します。

矢印は、この空隙に捕獲されてしまっているのです。

ここでひとつの仮定が生まれます。

この空隙は、何らかの密度を持った〝力場〟なのではないか?

 

さかのぼって、第十話「人攫い沼」を思い出してみましょう。

沼鬼との戦いです。

地面から出現した、三体に分裂した沼鬼に、

上空から、捌ノ型・滝壺を見舞うシーン。

炭治郎の動作を見るかぎり、この技は、

大上段からの振り下ろしに見えます。

その一撃で、同時に、三体の沼鬼にダメージをあたえています。

疑問。剣による垂直方向の一撃で、足もとに水平に展開する

複数人に、同時に被弾させることができるのか?

この場面で、剣の周囲には、滝のような視覚エフェクトが発生し、

地面からは激しい水しぶきが上がっています。

技の行使と同時に、剣の周囲に〝力場〟が発生し、

それが地面に激突することで爆発のような衝撃を生み、

沼鬼たちにダメージをあたえたとすれば、

技の動作と、その結果の描写が整合します。

つまり、滝のような視覚エフェクトは、このような〝力場〟の挙動を

表したものだった、とも考えられるのです。

 

さらに言えば――

二体の沼鬼を相手にした炭治郎は、陸ノ型・ねじれ渦で、

彼らの頸を切断しました。

この場面の描写とナレーションから、刀そのものではなく、

剣技が生じさせた〝渦〟が刃となり、沼鬼の五体を

斬り刻んだ印象を受けます。

日輪刀で頸を斬らねば、鬼は殺せない――

〝渦〟で切断したのだとすれば、この設定と矛盾します。

この矛盾を解決するには、〝渦〟――〝力場〟は、

日輪刀の性質を伝播する、と考えるほかありません。

 

ともに、血液の〝特殊性〟によって人外のパフォーマンスを発揮する、

鬼と鬼狩りの剣士。

彼らが、過程は違えども、いずれ同じ地点に到達する存在ならば――

鬼が血鬼術という異能を使えるように、

鬼狩りの剣士もまた、何らかの異能を使えるのではないか。

その異能こそが、〝呼吸〟の剣技が生む〝力場〟なのではないか。

 

このように考えると、合点のいく事例がひとつ。

冨岡義勇の編み出したオリジナル技。

水の呼吸・拾壱ノ型・凪――

間合いに入った術をすべて無効化する技です。

これにより、下弦の伍・累の血鬼術は、

あっさり無力化されました。(第四十二話)

これはもう、剣技の域を越えています。

〝術〟と呼んでいい代物です。

血鬼術を無効化する〝力場〟を展開する異能――

それが拾壱ノ型の正体なのではないでしょうか。

 

さらに重ねて言えば――

恋柱・甘露寺蜜璃が、半天狗の超音波攻撃と雷撃を

〝斬って落とす〟ことができたのも、鞭のようにしなる特殊な刀で、

〝力場〟を高速展開することにより、一種のバリヤーを形成したと考えれば、

その攻撃的な動作と、防御的な結果とが噛み合います。

どー考えても、音と雷は剣で斬れないでしょーよ。

 

――長々と書きましたが、

〝呼吸〟の視覚エフェクトは、単なる漫画表現ではなく、

剣士の〝異能〟を示唆する伏線的表現だった、

という仮説を提唱して、記事を終わります。

 

 

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