『10倍面白くなる漫画演出論』(グラフィック社)を読みました。
著者は樹崎聖氏。
『交通事故鑑定人 環倫一郎』の作画を担当した漫画家さんです。漫画編集者の仕事もしているそうです。
書店で偶然、目にとまった書籍です。
ページをぱらぱらとめくって中身を確認したところ、以下の一節に心を奪われてしまいました。
「面白さ」とは「期待」と「報酬」である――といった旨の文言。
面白さの本質をこうも端的に言語化していることに衝撃を受け、購入した次第。
言われてみれば、たしかにそのとおりです。納得。
ホラー作品に読者が期待のするのは「恐怖の感情を味わうこと」です。
その期待が満たされたとき(報酬)、「面白かった」という感想が生まれます。
想像以上の恐怖、予想もしなかった恐怖を味わえたなら、「すごく面白かった」となるでしょう。
バトル漫画なら「手に汗にぎる死闘と勝利のカタルシス」を、恋愛ものには「ときめき」を、読者は期待することでしょう。
ですから、面白い作品は、基本的に、物語の序盤で読者に「期待」を持たせるよう設計されているはずなのです。
たとえば、『ONE PIECE』の主人公・ルフィの決め台詞「〝海賊王〟におれはなる」は、読者に「期待」を植えつける機能を見事に果たしており、この台詞ひとつで読者の胸は「冒険への期待」でふくらんだことでしょう。
面白くない作品は、こういった演出や計算が欠如していることが多いのです。
「期待と報酬の仕組み」を、どのように漫画術の中に落とし込むか。
それを、構成、テーマ、キャラクター、プロット、ネーム、五つの項目を設けて解説しています。
いずれも筋道だった説明がなされており、わかりやすく、ためになりました。


