あいつらが来ると、人が死ぬ。 辻村深月、初の本格ホラーミステリ長編!

転校生の白石要は、少し不思議な青年だった。背は高いが、髪はボサボサでどこを見ているかよくわからない。優等生の澪は、クラスになじめない要に気を遣ってこわごわ話しかけ徐々に距離を縮めるものの、唐突に返ってきた要のリアクションは「今日、家に行っていい?」だった――。この転校生は何かがおかしい。身の危険を感じた澪は憧れの先輩、神原一太に助けを求めるが――。学校で、会社で、団地で、身の周りにいるちょっとおかしな人。みんなの調子を狂わせるような、人の心に悪意を吹き込むような。それはひょっとしたら「闇ハラ=闇ハラスメント」かもしれない。「あの一家」が来ると、みんながおかしくなり、人が死ぬ。だから、闇は「祓わなくては」ならない――。辻村深月が満を持して解き放つ、本格長編ホラーミステリ!

 

 

いやー、なんだか感想の難しい小説でした。

ホラーといえばホラーですが、幽霊とかそういうことではないのでそんなに怖くないんですが、

辻村さんの描こうとしているものを思うと存外怖い。

 

それぞれの章で起きた出来事が最終章の『家族』で繋がる感じ。

人怖のような人でないもののような曖昧な存在たち。

 

しかし小説の冒頭に書かれている闇ハラの説明を読むとあーあるあるって思う。

俄然闇ハラが身近になる。

 

ヤミ-ハラスメント【闇ハラスメント】

精神・心が闇の状態にあることから生ずる、自分の事情や思いなどを一方的に相手に押しつけ、不快にさせる言動・行為。本人が意図する、しないに関わらず、相手が不快に思い、自身の尊厳を傷つけられたり、脅威を感じた場合はこれにあたる。やみハラスメント。闇ハラ。ヤミハラ。

 

人じゃないものが近づいてくることは現実にはないだろうけれど、こういうハラスメントに巻き込まれることは大いにありうる。こういうハラスメントをするということは中身はこの作品に登場する神原一家のメンバーのように人間というよりは人間の皮を被った何かに既になってしまっているということなのかもしれないですね。

 

ストーリーは澪のクラスに謎の転校生が転入してきたことから始まる。

転校生の白石の態度が奇妙じゃなかったらもっとすんなり受け入れることができたんだけれど、まあそれではお話になりませんから。

 

転じて第二章は梨津が家族で引っ越してきたおしゃれにリノベーションした団地の話。こういう子供の学校の父兄との付き合い辛いなあと思う。そういう話かと思っていたら更に悲劇的な結末。

 

第三章は感じのよい年配の中途入社のジンさんが加わってから少しずつ何かがおかしくなっていく会社の話。

第四章は三章と同じようにかき乱される小学校と転校生の二子。

そして最終章で全てが繋がるという作り。

 

神原という家族ユニットが気味が悪いわけですが、その一人一人は使い捨てのように言わば背乗りされていくのはもっと気持ち悪い。

家族という体を成したユニットであれば一人一人は適当に見繕えばいい、ただし全員揃っている必要があるというわけだ。

一人一人の意思というよりはそのユニットそのものが闇ハラを振りまいていく。神原家というものが続いていくことが大切なんです。

 

これは日本の家制度に対する皮肉なんだろうかと思うと、辻村さんだからそういうこともあるかなと。

めちゃくちゃエンタメなんですが底辺が薄気味悪い。

 

他人を弄ぶ人、親切で良い人そうなのに裏があるんじゃないかと思える人、不幸を生み出したい人、それがこんな風に組織的なものだったらと思うとなんだかぞっとしてしまいます。

 

映像化にも向いてるんじゃないかと思う。