警察デジタル無線の傍受により、あらゆる捜査の目をかい潜って暴走行為を繰り返すグループ“ルート・ゼロ”
この暴走族の幹部である“高村昴”の前に、“芥圭一郎”と名乗る不思議な男が現れた。
芥は取引を持ち掛ける。
昴にかけられている警察の嫌疑を逸らし、報酬として一千万円払う。
そのかわり、警察の捜査をかい潜るルート・ゼロのシステムを使って、あるものを運んでほしい。
閉鎖された病院の一室に案内された昴は、そこで信じられない光景を目にする。
医学的に脳死と判断されたにも関わらず、特殊な装置により意志を伝える少女、“葉月”がそこにいた。
“ある物”とは葉月の臓器で、それを必要としている人を選びだし、そこへ運ぶ。
それが、昴への依頼だった。
死へと向かう時間を止めてしまった“水の時計”を持つ葉月。
生きることも死ぬことも出来ない絶望の淵から、誰かが引き上げねばならない。
そのために、葉月は何故昴を選んだのか…?


美しい物語でした。
綺麗と言うだけでは足りない気がします。
“美”という言葉が適切。


悲しい物語という捉らえ方もあるようですが、私はそうは思えません。
昴、葉月、芥、その他みんな、それぞれ不幸な生い立ちだし、悲しい事件や事故もたくさんあります。
ですが、最後にはそれぞれに救いがあったような。
私はそう感じました。


伏線の張り方も非常に上手いです。
全く関係なさそうな人物や場面が、ひとつひとつきれいに回収されていく。
その方法も、無理矢理つなげたり、取って付けた様ではなく、「ああ、そういうことだったのか」と自然に納得できますし、その伏線が救いになっていて、悲しい物語にならずにすんでいるような気がしました。


文体は特徴的で始めは少し読みづらかったのですが、慣れればすらすら読めました。
なによりも、内容や雰囲気のよさが、そんな読みづらさを吹き飛ばしてくれます。
他作品も絶対にチェックしようと思います。