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城南大学病院産婦人科の女性医師“柊 奈智”は今戦っていた。
深夜の緊急帝王切開手術。
術野は血の海だ。
産科病棟医長“君島”によってこの手術はなんとか成功する。
しかし、数日後再び出血し、二度目の手術により止めることは出来たが、出血の原因がわからない。
医局をあげて治療に当たるも、またしてもの出血により患者は亡くなってしまった。
その死に打ちひしがれる奈智。
それに追い撃ちをかけるように訴訟を起こされ、奈智は被告にされてしまう。
奈智は全力で治療に当たった。
原因不明の出血に力及ばず助けられなかったが、過失はない。
現場で必死に働く奈智ら医師達を救おうと教授の“須佐美”は応訴するが、奈智の心には恐怖が芽生えてしまい…。


現役医師による、迫力の医療サスペンスです。
それだけにリアリティがあり、恐怖すら覚えました。


産婦人科の訴訟率は他科の約三倍だそうです。
基本的に病気ではない“お産”を扱っているので、無事に帰れて当たり前、と思われているようです。
それだけに、なにかあった時には、遺族の悲しみをぶつけられやすい。


労働条件も凄まじい。
お産を扱うだけに当直が多い。
実に、月に十回以上“36時間勤務”があるらしい…。
これは知りませんでした。
産科の医師達はこれだけ過酷でも患者のために頑張る。
それだけですでに感動しました。
自分でどの科に行くか選べるのに、こんな産科をを選んで、そこで勤め続けるだけで立派だなと思います。
それだけに産科の医師は絶望的に不足しているそうです。
勤務だけでも大変なのに、訴えられる確率が高いんじゃやってられませんよね。


作品の話に戻ります。
現役医師のデビュー作ということもあり、読む前はあまり期待していませんでした。
あわよくば、病院の内部事情を知れたらいいな、くらいで読み始めたのですが、驚きました。
展開にスピード感があり、引き込まれました。


主人公の心情にも共感できます。
よくある正義の味方みたいに、強すぎないところが納得できます。
医師だって人間ですもんね。
こういったところが現役医師の強みでしょうか。


時々主人公の一人称に他の人の心情が入っているのは気になりましたが、
そこは医師ですから。
訳がわからなくなるほどではないので、私は大丈夫でした。
厳しい人ならツッコミ入れそうですが、そんなこと気にならないくらい面白い作品でした。


日頃知り得ない医療の実情や、緊迫感のあるストーリー展開、主人公の揺れ動く心と、医師達の人間味。
読み所が満載でした。
オススメです!