「アンチエイジングサプリメントといえば、何を思い浮かべますか?」と質問した時、3割(ひょっとすると半分以上)くらいの方が「CoQ10(コエンザイムQ10)」と答えるかもしれないくらい、アンチエイジング分野の中では有名なCoQ10ですが、抗加齢医学の分野では、「?」が付いているのをご存じでしょうか?


青木晃のアンチエイジング日記

これは、3年前の日本抗加齢医学会で出している学会誌で取り上げられた特集記事です(日本抗加齢医学会雑誌 2007.8 Vol.3 No.3 319-327)。


この学会誌のユニークなところは、まだ確定していない(エビデンスの出ていない)医学的事象を相反する立場のプロフェッショナルが誌上でディベートするということ。


これまでに、「サプリメントは摂るべきか否か」とか、「加圧トレーニングは本当にアンチエイジングなトレーニングなのか」とか、「牛乳は飲むべきか?否か?」とか、「水素水は体にいいのか?悪いのか?」などを真剣に論じあってきました。


さて、CoQ10は本当のところアンチエイジングサプリメントなのでしょうか?


まず、アンチエイジングサプリメントって何なんでしょう?美肌になる?元気になる?生活習慣病にいい?長生きできる?


抗加齢(=アンチエイジング)医学はそのエンドポイント(目的・目標)を健康長寿においています。


あるサプリメントがアンチエイジングサプリメントであるか、否かは、そのサプリメントを使っていた群の方が、使っていなかった群に比べて、医学統計学的に「疾患罹患率が低かった」、「総死亡率が低下していた」ということが確認出来て初めて、アンチエイジング的な効果があったといえるわけです。


今のところ、CoQ10にはそのような医学的根拠のあるデータは何一つ出ていません。と、いうか、そういったサプリメントは何一つまだないのが現実です。


アンチエイジングなサプリメントはあるといえます。


例えば、


抗酸化サプリメント、メタボを改善・予防するようなダイエットサプりメント、免疫力をアップする作用を持つサプリメント、脳代謝に良いサプリメント、女性ホルモンをサポートする作用を持つサプリメント・・・


それでは、何故、CoQ10はこのように騒がれた(騒がれている)のでしょうか?


CoQ10は、細胞内のミトコンドリアという器官で合成されるATPというエネルギーを合成するのに不可欠な補酵素であることがわかっています。生命活動に欠かせない基本的な物質であるとされているのは、こういう理由からです。そして、このCoQ10は加齢とともに減少していくことも知られているので、それを補給することで、細胞のエネルギー代謝活性を維持(あるいはアップ)させることがアンチエイジングにつながるというのが、CoQ10肯定派の意見になります。


肯定派は、また、CoQ10そのものが持つ抗酸化的作用もアンチエイジング的であるとしています(抗加齢医療においては、活性酸素、フリーラジカルによる酸化ストレスを出来るだけ少なくすることを推奨しています)。


まとめると、、、


1.CoQ10は、ミトコンドリアでのエネルギー代謝活性をアップさせる補酵素なので、それを補充すれば細胞レベルでの元気度がアップ!


2.CoQ10は、抗酸化作用があるので、“錆びない体を維持する”ことが出来、アンチエイジング医療の目的に適うサプリメントだ!


ということですね。


さて、一方否定派は…


1.CoQ10サプリメントの成分が、細胞内に取り込まれ、その一部でもがミトコンドリアに取り込まれたという実証がない。


2.もし、例え、摂りこまれたとしても、成人以降にCoQ10を摂って、ミトコンドリアレベルでエネルギー代謝活性を上げることが果たしてアンチエイジング的だろうか?これは、いわば、スーパーカーが大量のガソリンを使って、一気呵成にドーンと走ることと似ている。その時は爽快極まりないが、ガソリンはすぐに枯渇してしまう。真のアンチエイジングはエコカーモードであるべきで、少ないガソリンで長く走れることこそが長寿につながる。前者が「太く、短く」に対し、「後者は細く長く」ともいえる。


3.CoQ10は、エネルギーを産生するのと同時に、副産物として活性酸素をも生みだしてていて自らが作りだした活性酸素を取り除くために抗酸化作用をもっているに過ぎない。


2.に関しては基礎研究レベルではもっと細かいことまでわかっています。線虫での研究において、CoQ10は発生初期には必須であるが、成虫になってからはむしろ無い方が長寿であった(アンチエイジングに有効だった)ことが実証されています。ミトコンドリア内にCoQ10が少ない方が、有害な活性酸素の発生が抑えられるからではないかと考えられています。線虫での現象がすぐそのまま人にも果てはまるかは疑問の余地がありますが、現在のところ、老化に関与している遺伝子は、酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウス、人を通して進化的に良く保存され、種が違っても同じ働きをしていることが明らかにされつつまります(先の雑誌の高橋真由美先生の本文より引用)。


さて、あなたはどう思われますか?


因みに私は、サプリメントとして、CoQ10を摂ってはいません。