青木晃のアンチエイジング日記

私自身は、日本の医科大学を卒業した医師ですので、大学では当然、現代西洋医学を学んでいます。


日本の医学部を卒業したての医者は皆ほとんど、代替補完医療に懐疑的ですが、永く医者をやっているうちに、現代西洋医学の限界を実感していき、やがて代替補完医療を取り入れていったり、あるいはどっぷりそちらに入り込んでしまう医者もいます。


もちろん、全く興味を持たず、いつまでも「医学は科学でなければならないので、エビデンス(科学的実証)の取れていないようなものはまともな医者がやるようなことではない」というのも多いですが(苦笑)。


私は、医者になって6~7年目くらいに代替補完医療に興味を持ちました。


フリーフォール式の遊園地のアトラクションで軽い頸椎捻挫を患い、それが慢性化して半年以上経っても、なかなか痛みがとれなかったある日、後輩のドクターで独自にカイロプラクティックを学んだのがいて、彼に冗談半分でこう言ったのです。


「○○、患者さんにもこそこそカイロやってあげてるみたいだなぁ。評判だぞ。そんなにスゴイんならこの首治してくれよ」


彼はちょっと躊躇しつつ、「いいんですか、先生。。。先生、いつも小馬鹿にしてたじゃないですか。」と言いながら、例のコキコキッっていうの(マニュピュレーション)をやってくれたのです。それが、見事に一発で良くなってしまい、びっくり!


それから、だんだんと代替補完医療に対しての壁がなくなっていきました。鍼を勉強していた先輩ドクターが、眼精疲労や肩こりに効く鍼を打ってくれたりもしましたっけ。これも確かに効いたと思っています。


医者になって12年。保険医療や大学病院での医療の限界を痛感し、防衛庁(当時)医官を退職して退路を断ち、一人アンチエイジング医療のフィールドに飛び込みました。その時の理念が「統合医療によるアンチエイジング医療の実践」でした。


統合医療ビレッジという日本で初めての統合医療コンプレックスにもお邪魔して、漢方、アロマ、ホメオパシー、鍼灸、整体をその道のプロ達に教わったりもしました。ですから、私自身は代替補完医療肯定派といえます。しかし、盲目的な信者でもありません。勉強すればするほど、その奥深さ故に難しさを痛感しますし、中には?と思うようなものもあると思っています。


昨年末に新潮社から出た『代替医療のトリック 』は、改めて代替補完医療の“科学的曖昧さ”をするどく指摘する書となっています。


この書の素晴らしいところは、一流の科学ジャーナリストであるサイモン・シン氏と元々は代替医療の第一人者でもある医療研究者(代替医療の分野では世界初の大学教授となった経緯を持つ)のエツァート・エルンスト氏によって書かれたサイエンス・ノンフィクションであるというところです。


この二人の著者が狙っていることは、全世界で年間数兆円規模の市場を持つといわれる代替補完医療を、インチキ医療として一刀両断にすることではなく、あくまでも科学的にその医療が実質的な効果があるのか否かを検証すること。


結論から言うと、この書の中ではほとんどの代替補完医療の有効性と安全性について下された判定は、残念ながら「否定的」でした。鍼もホメオパシーもプラセボ効果以上のものは期待出来ないと結論されています。


昨今、我々アンチエイジング医療のフィールドでも話題の「キレーション」、「分子整合(矯正)栄養医学:Orthomolecular medicine)」、「オゾン療法」などは、お金もかかるし、有害にもなりうるので受けるのは止めたほうがいい(ここはちょっと?だと思いますが)と結論付けされています。


もちろん、単に否定しているだけではなく、現代西洋医学の問題点を挙げつつ、科学的な分析ではこういう結果になったと主観抜きで論評している姿勢は読んでいて、むしろ爽快ですらあります。


それでも、私自身は代替補完医療の意義はやっぱりあると思っています。ただし、盲目的に良いと信じ込むのは危険です。経済的な損失くらいなら、まだしも、中には受診者が健康面での不利益を被るもの(下手すると命に関わる)もあるからです。


私のブログを訪ねて来て下さる方の中にも、代替医療に携わっている、あるいは、治療を実際に受けていらっしゃる方がたくさんいらっしゃると思います。そういった方々にもぜひ、読んでいただきたい本だと思います。読後のご意見など、お待ちしています。


因みに、日本抗加齢医学会は頭でかっちなドクター、学者さんばかりの集まりではありませんので、学会誌 でもちゃんと、代替医療をまじめに取り上げています(写真左の雑誌がそれ)。一般の方々でも読める特集もありますので、興味があったらご一読を。