私のコンパウンドはリヤドでは比較的中規模の部類に入る。私が入居した時は、隣人の多くは、アメリカやイギリス、スペインなど欧米諸国の人だった。が、2017年から開始された「サウジゼーション」(サウジの将来を見越した改革)によって、10年以上にわたって、ここで働いてきた米国やヨーロッパからの外国人労働者達は去っていった。

 

彼らと入れ替わりに入居してきたのは、ロシアや東欧、エジプト、スーダン、レバノン、エリトリア、シリアなどなど。一気にムードが変わったのを覚えている。英語を話さない国の人も多く、最初は皆緊張していたけれど、言葉が通じない分、お互いが譲り合って、どうにか収まるところに収まっていった。
 
後々、あるロシア人家族がこのコンパウンドのボス的存在になっていった。特に奥さんのEはやたらドラマチックでジェスチャーや言葉の表現も大袈裟。注目を集めるのが好きで、体格もファッションも派手派手笑い泣き
玄関の鍵は施錠せず、24時間家の扉は開いていた。というのも、寂しがり屋で常に誰かと一緒じゃないと不安なのだそうで、いつも誰かが彼女の家で食べたり、飲んだり、何か作ったり、、。彼女の家は、このコンパウンドの集会所と化していた。
このEは、毎日、自分のドライバーと一緒にショッピングや遠出をし、そして(もちろん毎日)朝昼は外食。一人の外出が嫌いで、私もよく誘われた。そして、彼女が湯水のようにお金を散財するのを眺めていた。
 
旦那様も素敵な方だったが、自分の欲をコントロールするというのが苦手な方達だったこともあり、頑張っているのは感じられたが、やはりサウジのライフスタイルはきつかったらしい。
奥様Eの散財の元:ショッピングテラピーも効き目が無くなり、旦那様は職場の移動を願い出た。
そして、1年数ヶ月のサウジ生活の後、旦那様は会社を変わることにした。彼らはケニアへ引っ越した。
引っ越す一ヶ月前、奥様Eは隣人一同にメールを送付した。「自分で会場を押さえるから、皆さん持ち寄りで送別会を開いて欲しい、、。」という内容だった。
彼女と特に仲の良かったポーランド駐妻が指揮をとって送別会の準備が始まった。私は出席出来ない理由があったので、送別のギフトを手配するボランティアを願い出た。すると、指揮者ポーランド妻から衝撃の一言が、、。
「Eちゃんからサウジ滞在記念に絵が欲しいってリクエストがあった。」
私:「えっ?滝汗
絵となると、さすがに値が張る。
こいつら正気か?と思ったが、本人達は大真面目だった。
私はリヤドにあるギャラリーを調べに調べた。
 
すると、Eが好きそうなカラフル(派手笑い泣き)で中東っぽいモチーフの絵を数点見つけた。
そして、そのEをギャラリーに連れていった。

ここでEはシリア人画家の描いた絵を選んだ。
お値段は十万円近くしたが、20人で割って、どうにか収まった。
Eは購入後、自分で絵を抱え意気揚々と車に向かった。彼女のドライバーが絵を受け取りに車から降りてくると、彼女の顔がみるみる赤く染まり、ブルッと震えたかと思うと、突然路上でワンワン泣き出した。
束の間、彼女の巨大な身体にハグされ、窒息しそうになる私。
するとEから一言:「ありがとー!私の夢が叶ったー!」
まあ、苦労して、絵を探し出し、皆を説得した甲斐があった、、、ような気がした。
 
 
 
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