2017年8月16日(水;受験157日前)

 

  8月16日の午後は、東京工業大学大岡山キャンパスに行ってきました。公開シンポジウム「現代の社会と宗教」です。理系大学にリベラルアーツ研究教育院という文系の機関があり、目玉の教授たちの4人がパネリストでスゴイ方々でした。池上彰、上田紀行、弓山達也、中島岳志の4人がパネリストでした。さらに司会が、渡邊直樹という有名な編集者(「宗教と現代がわかる本」編集長)でした。

 主催者たち(東工大リバラルアーツ研究教育院)は、お盆休暇中で東工大も昨日から夏休み休暇から開門したばかりで、そんなに人が集まらないと、予約なし入場無料で、250人の教室を用意していたそうですが、実際は、昨日、雨の中、開場の13:30には満席となり、会場の外には雨の中、延々と長蛇の列となり、開演14時までに、急遽、第4会場まで設定し、モニター中継で繋ぐという事態になりました。ということは500人以上来られたようです。

 開演は14時の予定が第4会場までの設定および入場が完了するまでの14:15分まで、池上さんと中島さんが、場つなぎトークをされ、私たち第一会場の者はラッキーでした。
 私は13:15に到着して、第一会場に入ったところ、4分の3が埋まっていましたので、右側の中間通路から2番目、後方の席に着けました。そこを通って生の池上彰さんやパネリストたちが入場されたので間近に見ることができました。

 今回のキーワードは、この時代の「生きづらさ」「むなしさ」と思います。何より、私の研究テーマの「宗教」「個人主義的になった宗教」に関して多くのヒントが得られたことが感謝でした。 

 

 

以下は、まとめのメモです。【逐次、編集して見やすくします】

 

(看護師などの仕事で出られなかった;何故か死生学院生には医療系が多い)院生後輩たちへのレポートメモ(正確でないかも;老眼でよく読めなかったため)ですが、シンポジウムの流れは分かるでしょうか?これから自分でも文献などで確認してみます。速報として、ご参考までに。 出版されるのが待ち遠しいです。 [?は不正確かも]  

                                                          2017年8月16日(水)14:15~17:10

東京工業大学大岡山キャンパス 西5号館W531教室他、

モニターで視聴する3教室の4会場になった

 

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院主宰公開シンポジウム

『現代の社会と宗教 1995~2017』

 

パネリスト

上田 紀行(東京工業大学教授 文化人類学 リベラルアーツ研究教育院長)

池上 彰 (東京工業大学特命教授 ジャーナリスト)

弓山 達也(東京工業大学教授 宗教学)

中島 岳志(東京工業大学教授 政治思想)

司会

渡邊 直樹(大正大学客員教授 「宗教と現代がわかる本」編集長)

 

14:00 開演時間になるも、会場外に雨の中、本会場と同じほどの250人以上の長蛇の列、モニター中継の第4会場まで準備中

 

14:06 池上さんと中島さんのつなぎト―クが始まる

 

14:15 第4会場への入場確認。上田さんから挨拶のことばとリベラルアーツ研究教育院の解説

  哲学:人間はどう生きるか? システム社会で奴隷となっていないか?人間にとって何が良きことか? 洞察力(人間性、精神性)を語ることができる人材養成 

 

14:30 中島さんのお話(プリント資料あり)

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2017年8月16日  「1995年論」  中島 岳志

1.1990年代前半

・「いきづらさ」の幕開け

・大澤真幸:「理想の時代」→「虚構の時代」→「不可能性の時代」

・岡崎京子『リバーズエッジ』(1994年)

・今、生きていることの「実感がわかない」「現実感がない」

・「平坦な戦場で僕らが生き延びること」

・死体と生のリアル…「自分が生きているのか死んでいるのかいつもわからないでいるけど」「この死体を見ると勇気が出るんだ」

(漫画挿入)

・鶴見済『完全自殺マニュアル』のベストセラー化(1993年)

 ・平坦な人生への絶望

  ・「あなたの人生はたぶん、地元の小中学校に行って、塾に通い受験勉強をしてそれなりの高校や大学に入って、4年間ブラブラ遊んだあとどこかの会社に入社して、男なら20代後半で結婚して翌年に子どもをつくって、何回か異動や昇進をしてせいぜい部長クラスまで出世して、60歳で定年退職して、その後10年か20年趣味を生かした生活を送って、死ぬ。どうせこの程度のものだ。しかも絶望的なことに、これがもっとも安心えきる理想的な人生なんだ」

 ・「強く生きろ、自殺は弱いもののすることだ、などということが平然と言われている生き苦しい世の中に風穴をあけて、ちょっとは生きやすくしたいからだ」

 →死の手段を手に入れることによって、かろうじて生きることができるリアリティ

 ・1994年11月…いじめ自殺の連鎖、社会問題化

 

2.1995年という分岐点

 ・1月17日…阪神淡路大震災

 ・3月20日…地下鉄サリン事件(→オウム真理教問題)

 ・8月15日…村山談話(アジア諸国へ植民地支配と侵略を謝罪)

 ・10月4日…「新世紀エヴァンゲリオン」放送開始

 ・薬害エイズ問題

 ・日経連:「新時代の『日本型経営』」・・・「長期蓄積能力活用型」「高度専門性能力活用型」「雇用柔軟型」

 ・自由主義史観研究会の発足(藤岡信勝)

  →1997年、「新しい歴史教科書をつくる会」へ

 ・ベストセラー…春山茂雄『脳内革命』、松本人志『遺言』、小林よしのり『ゴーマニズム宣言』、宮台真司『終りなき日常を生きろ』

 

3.小林よしのり『戦争論』と不安型ナショナリズム

 ・小林よしのり『戦争論』【1998年】

  *浮遊する現代の生への反逆

  ・「平和だ…あちこちがただれてくるような平和だ」。それに対して、戦場の生は常に死にさらされていた。さらに国のため、公のために命をかけるという使命感があった。

  →生の意味と実感

  ・「今の人々には「死ぬことに生き甲斐を感ずる」なんてことは絶対にわかるまい」「しれどころかきみたちは生きることにすら生き甲斐を感じられないんじゃないか?」

  ・「この国を想って死を賭ける者にかつての人々は…国は…物語を用意した」「アジア解放 大東亜共栄圏の物語を信じて戦った兵たちも…確実にいたのである」「彼らは英雄であり神になれた」「ごーまんかましてよかですか?」「戦後のあらゆる物語を相対化させて 少女は売春 少年は殺人が流行の国になった」「本当にこの国には物語は要らぬのか?」

*サヨクのマスコミ・学者に日本は洗脳されている

 ・本当のことは隠されている。教育界やメディアが建前の平和論・歴史観を語りながら、真実を隠ぺいしている。

 ・戦後の空気に対するレジスタンスが必要

 ・「サヨクな空気に逆らうわし」=「本当に個のある者」

  →建前に対する本音

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14:55 池上さんのお話

 2001年9月11日  

 ISの若者(特にEUなどに暮らす移民2世3世たち) →生きづらさ  「自爆させてください」と集まって来る 「死」を見つめることは「生」を実感できる

 

 遡れば、1979年のアフガンへのソ連の侵攻… イスラム過激派の台頭

 グローバリズム vs イラン・イスラム革命

    ↓

 過激派のイスラム化

 ・自爆によって「生」を生きる = 天国に直結する(一神教の終末思想では、死後に裁きがあり、そこで天国と地獄へ行くことが決まるが、聖戦による死は、それ抜きで天国へ行けるという信仰)

 

15:15 弓山さんのお話

 スピリチュアル 

 「個人化した宗教意識」 組織を作らない宗教意識

2000年代 スピリチュアリティ

1998年 WHOの健康の定義案に spiritualの追加が提案されてから

  窪寺俊之(2000?)のスピリチュアル定義

  <生きる力を含む  拠り所   生きる意味や目的>

 

江原啓之 「オーラの泉」   2005年4月10月 60分 ~ 2009年9月まで

  スピリチュアル・ブーム

 

すぴこん(現すぴま)の開催   スピリチュアル・コンベンション

レイキ(霊気?) オーラビジョン(の写真)→3000円~5000円<高過ぎず、安過ぎず>

オーラソーマ、  チャネリング   クリスタルワーク

 

様々な宗教伝統?、宗教礼拝?、宗教技法?が くり返される  が 宗教教団とは無関係

パワースポットを巡り歩く人も 宗教の由来には無関心な スピリチュアル・ブーム

 

「宗教性」が、教団の枠を越えて溢れだしたイメージ

教団抜きの宗教性、教団から乖離する宗教性

 

 1980年代              1995年              2000年

 新宗教ブーム          地下鉄サリン事件       スピリチュアル・ブーム

                    新宗教ブーム頓挫

 癒しブーム                               2000年 心霊写真ブーム

  80年代~90年初め                       霊能者による迷宮入り事件捜査

 

 こころへの関心                           2006年  陰り

   80年代~90年                          檀れい 

 

今後の予想

 1.パワースポット・ブーム

 2.瞑想、マインドフルネス

 3.スピリチュアル・ケア 2011年 東日本大震災

 4.スピリチュアルから宗教へ

    2010年 NHK無縁社会    死、慰霊、追悼への宗教の力の再考

 

15:33  上田さんのお話し

 

・癒し、生き甲斐        <ささえと自由;=表裏>、救い

 

・3つの敗戦   

1945年     

1990年 バブル崩壊   

2006年? 信頼、安心の欠如 ・・・・ 「生きる意味」

 

日本人の宗教性の特徴

・私の集団は、そこそこだから・・・大丈夫?

  集団への帰属(心)が重要な日本   ムラ社会

 

オウムの犯人  誰か別の人の人生を生きさせられている

宗教性は

集団の中に入って行く    個の救い vs  集団に入れば(属すれば)救われる?

 

15:57から休憩タイム

 

16:20から再会、4人のシンポジストによる追加補足など

 

16:20  中島さん

  「生きづらさ」死に直面することによって、「生きる」感覚を感じる

  「生きづらさ」→戦場へ向かう   超国家主義?に似ている?

 

  戦前の青少年たちは・・・・「生きづらさ」「格差」を感じている

                   ↓

          国体を汚す奴らのせいだか奴らを殺せば・・・と、テロ

 

16:28  池上さん

   戦争中の(シリアの)人には、自殺はない、生きるのに一生懸命

   戦後、生きる意味 →自殺する

             USAでは、中西部の白人たち(トランプ支持者)

             鎮静剤による緩慢な自殺 

   宗教は 「永遠のいのち」の信仰   心の平安

           ↓

       平穏に死を迎える=自分の存在を認める

 

16:34  弓山さん

  「生きづらさ」  新宗教 カルト

           入団の理由→  貧、病、争(人間関係)

 

  オウム真理教は・・・・・・「虚しさ」

・・・・・上祐さん(宇宙を目指すが意味が無いと)から入信の例

 

人生に意味が無い、虚しいの処方箋は?

 

現代では、ボランティアが「宗教」の代わりになっているのでは? 

  自分の人生を他人のために捧げる

 

16:38  池上さん

   スピリチュアルは、政治家にも  政策判断や行動の助けを求める  

   夫人たち

   ナンシー・レーガン;星占い、 鳩山元首相夫人;水晶玉占い、 阿倍総理夫人;神道?

 

16:40  弓山さん

   占いは、人気商売の人  不安定な人にも

 

16:42  上田さん

 

  超越性、信仰    

  「生きている価値」が欲しい   この一瞬のためという光が欲しい

   意味を徹底的に作り出せる人になれ

              →超越者

  ニーチェ   

 

 ムラ社会での イジメは  優秀な人、出来る人へ

 

「志」を持った人はイジメに強い?    

 

仏教(ダライ・ラマ)に取材では、「慈悲」からの「怒り」は正当性がある

 

16:53  池上さん

 

   ダライ・ラマに取材した。人(敵)に慈悲をかける凄さを感じた。

 

(東工大の二人の教授がダライ・ラマに取材されている!そして同じようにダライ・ラマから”慈悲”の強い影響を受けた。)

 

16:55  中島さん

 

    超越とのつながり、→とまどい

             信じることは、構造的に違う

 

  万物は「有限」を知ったという人間、同時に、「無限」の観念を持った

 

仏陀の祈り・・・保守   絶対者 vs 有限な存在

 

トポス・・・自分が位置付けられたもの・・・超越性を前提としている

 

17:03 弓山さん

   宗教  いつ救いは手に入るのか  救われるのか

   教団の力・・・教団の力抜きでやろうとするとあせる

 

   仏教の苦=生老病死  →超越性が垣間見える  その意味がある

 

17:07 渡邊さんの終りのまとめ と 上田さんの案内PR                

 

 以上

 

追記:

CHRISTIANTODAYに関連記事に出ました!

      ↓

現代の「生きづらさ」の向かう先は? 池上彰氏らが発題、シンポ「現代の社会と宗教」

2017年8月23日06時16分 記者 : 坂本直子 

 

http://www.christiantoday.co.jp/articles/24329/20170823/tokyo-institute-of-technology-symposium.htm