Efficacy of Pembrolizumab in Patients With Noncolorectal High Microsatellite Instability/ Mismatch Repair–Deficient Cancer: Results From the Phase II KEYNOTE-158 Study

 

J Clin Oncol. 2020;38(1):1-10.

 

背景:dMMR(mismatch repair deficiency)は全癌の約2%から4%を占める。ミスマッチ修復欠損腫瘍は、ミスマッチ修復能のある腫瘍に比べて10倍から100倍の変異を持つ、ユニークな遺伝的特徴を有している。これらの腫瘍は、特にマイクロサテライトと呼ばれる反復性のDNA配列に変異が生じやすく、その結果、高レベルのマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を引き起こす。リンチ症候群では、一方の対立遺伝子が生殖細胞で変異してもう一方の対立遺伝子が自然発生的に変異するのに対し、散発例では一方の対立遺伝子が自然発生的に変異し、もう一方はエピジェネティックに不活性化される。ミスマッチ修復遺伝子は、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2などがある。ミスマッチ修復欠損腫瘍の細胞は、その膜上にprogrammed death ligand 1 (PD-L1)の発現を認める。リンパ球などの免疫細胞はPD-1、cytotoxic T-lymphocyte‒ associated protein 4(CTLA-4)やlymphocyte-activation gene 3(LAG-3)を示す。

 

Gene of the month: lymphocyte-activation gene 3 (LAG-3)より引用)

Pembrolizumabは、 humanized immunoglobulin G4 monoclonal antibody(ヒト化免疫グロブリンG4モノクローナル抗体)で、リンパ球に発現する免疫チェックポイント阻害性受容体PD-1に結合し、PD-L1およびPD-L2の結合を阻害し、それによってT細胞の腫瘍破壊を再活性化させる。MSI-H/dMMRの大腸がん、非大腸がん、およびマイクロサテライト安定大腸がん患者41名を対象とした最初の研究では、大腸がんおよび非大腸がんでORRがそれぞれ40%(10例中4例)および71%(7例中5例)であり、マイクロサテライト安定大腸がんでは0%(18例中0例)だった。その後、ペムブロリズマブは、2017年5月に米国において、標準治療歴がある切除不能または転移性MSI-H/dMMR固形がん、あるいはフルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンによる治療後に進行したMSI-H/dMMR大腸がん患者の治療としてFDAより承認を取得した。今回の報告は、27種類の組織型からなる進行性MSI-H/dMMR非大腸がんの前治療歴のある症例において、ペムブロリズマブ200mgを3週間隔で静脈内投与し、抗腫瘍活性と安全性を前向きに評価した第II相試験データを報告する。

 

方法:非無作為化、非盲検、多施設共同、第II相試験

dMMR/MSI-Hの評価は、免疫染色でMLH1/MSH2/MSH6/PMS2の4つのMMRたんぱくのいずれかの欠損、または PCRでmononucleotide loci [BAT25, BAT26, NR21, NR24, Mono27]、混合遺伝子座[BAT25, BAT26, Di 5S346, Di 2S123, Di 17S250]

 

評価:主評価項目ORR、副次評価項目DOR、PFS、OS、safety and tolerability

結果:2016年2月1日から2018年5月8日で55施設からMSI-H/dMMR非大腸がん患者233名が登録。23人(9.9%)がCR、57人(24.5%)がPRを達成した。ORRは34.3%。奏効期間中央値は未到達であった。ベースラインからの腫瘍サイズの縮小が最も多く見られた腫瘍は子宮内膜がんであった。233例中160例(68.7%)がPDであり、中央値は4.1カ月。233例中113例(48.5%)が死亡し、OSの中央値は23.5カ月。151例(64.8%)に治療関連の有害事象が発生し、34例(14.6%)にグレード3~5の治療関連の有害事象が発生し、そのうち1例はグレード5(肺炎)であった。免疫介在性有害事象またはインフュージョンリアクションが原因で治療を中断した患者は12名(5.2%)だったが、致命的なものはなかった。最も一般的な免疫介在有害事象は、甲状腺機能低下症だった。

 

hereditary genetic syndrom:遺伝性疾患

endometrial cancers:子宮内膜癌

harboring:(遺伝子などを内在的)にもつ、(犯人など)をかくまう

epigenetically silenced:epigeneticに不活化される

neoantigen:変異抗体。腫瘍細胞の遺伝子変異の結果、新規に生じた抗原のこと。

flameshift mutation: the insertion or deletion of nucleotide bases in numbers that are not multiples of three. 3 の倍数ではない数のヌクレオチド塩基の挿入または欠失による配列の読み方がずれることで生じる遺伝子変異

had confirmed disease progression but were benefiting clinically without additional increase in tumor burden

:病勢増悪が確認されたが、腫瘍負荷がさらに増大することなく、腫瘍の臨床的恩恵がある

loci:遺伝子座

Patients who did not achieve a response were excluded from the duration-of-response analysis.:奏効が得られなかった患者は奏効期間の解析から除外した。

had not been reached.:未到達だった。

 

 

 

進行性、切除不能な胆道がんの初回治療として、Pembrolizumab+Gem/CDDP vs. PlaceboとGem/CDDPの無作為化二重盲検第3相試験。1069名の患者さんが登録され、最大約2年間ペムブロリズマブ200mgの3週毎の静注とゲムシタビン1000mg/m2、シスプラチン25mg/m2の3週サイクル毎の1日目と8日の静注にランダムに割り付けられた。ペムブロリズマブは最大35サイクル、シスプラチンは最大8サイクルまで投与される。主要評価項目はOSで、副次的評価項目はPFS、ORR、DOR、Safety。