世間はイブかあ

 

EUS-TAで得られた膵癌組織のNCCオンコパネルの解析に適正に合致する割合 phaseⅡtrial

 

Proportion of unresectable pancreatic cancer specimens obtained by endoscopic ultrasound-guided tissue acquisition meeting the OncoGuideTM NCC Oncopanel System analysis suitability criteria: a single-arm, phase II clinical trial

 

J Gastroenterol. 2022; 57:990–998.

 

背景:膵癌は予後が悪い癌として知られており、推奨レジメンはあるものの、依然として満足いく結果ではなく、最近ではcomprehensive genomic profiling (CGP) が推奨されている。例えばBRCA遺伝子変異を有する膵癌に対するプラチナレジメン後のオラパリブの有効性などが言われている。MSI-HighまたはTMB-Highの腫瘍に対するペムブロリズマブ、NTRK融合遺伝子変異に対するエントレクチニブなどもある。EUS-TAを用いたCGPの結果に基づいて、57.4~97.0%の範囲でCGP解析の成功率を報告した研究がいくつかある。パネルの種類や、腫瘍細胞の含有量、組織の大きさ、解析基準を満たすDNA量などの基準が異なるため結果にはばらつきがあり、ほとんどが様々な被験者を対象としたレトロスペクティブな研究であり、異なるタイプの穿刺針を使用しているため、結果の解釈は難しい。FNB針に関する研究はいくつかあるが、19G穿刺針に関する報告は少ない。19Gを使用した2件の研究によると、いずれも100%の割合で解析基準や評価可能な割合を満たしていた。いずれの研究も症例数が少なく、十分なエビデンスは得られていない。

日本では、OncoGuideTM NCC Oncopanel System(NOP)と FoundationOne CDx(F1CDx;Foundation Medicine, Cambridge, MA)が保険適用されている。2019年1月にNOPが承認されたが、これまで膵癌の検体がNOPの解析適性基準を満たす割合を検討した報告はない。

目的:19GのFNB針を用いて、前向きな研究を行い、EUS-TAの組織についてNOPの解析適正基準を満たした割合を報告する。

方法:国立がん研究センター中央病院、単施設前向き第II相試験。

評価

主要評価項目→NOP(NCCオンコパネルシステム)解析適性基準を満たす割合。

副次評価項目→F1CDx 解析の適合基準を満たす割合、nCounterシステム を用いて測定した腫瘍細胞量と組織サイズ、NOPおよびF1CDx解析の実施割合、手技の成功率、悪性腫瘍に対する感度、特異度、正診率、有害事象発生率、遺伝子治療を行った群と行わなかった群の全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の比較。

 

サンプルサイズ:必要症例数は30 例、a-error(片側)および検出力はそれぞれ 0.025 および 0.9 であった。偏差値10%と仮定し、目標サンプル数は33例とした。

 

結果:2021年2月から2021年9月の間に、33名のUR-PC患者を登録。腫瘍径の中央値は35mm、11例(33.3%)が膵頭部、およ22例(66.7%)が膵体部/尾部であった。UR-LAが11例(33.3%)、UR-Mが22例(66.7%)。穿刺回数の中央値は5回であった。細胞診では全例でclass Vが認められ、病理組織学的診断は、腺癌および腺扁平上皮癌(2例)であった。NOP解析の適応基準を満たした割合は63.6%(21/33)であった。実際に評価可能だったのは12名。そのうちKRAS変異は12名(100%)に認められ、4人の患者は(BRCA1/2変異3名、KRAS G12C変異1名)は薬剤投与可能な遺伝子変異を有しており、そのうち1名は治療を受けられ、poly (ADP-ribose) polymerase inhibitorを投与された。解析成功群は失敗群に比べ、腫瘍サイズが有意に大きかった(P = 0.006)

 

有害事象は9%、今までの報告よりやや多め。膵炎3.0%(1/33)、出血3.0%(1/33)、感染症3.0%(1/33)。有害事象があった群となかった群で各因子の比較を行ったが統計学的に有意な差は認められなかった。

 

考察:Carraraらが、33例のUR-LA PCを対象とした単一施設の前向き研究を実施したところ、CGP解析の成功率は97.0%であった[Side-by-side comparison of next-generation sequencing, cytology, and histology in diagnosing locally advanced pancreatic adenocarcinoma. Gastrointest Endosc.]が、この本研究の結果と大きく異なるのは、解析に必要な条件が異なるためと思われる(10ng vs 200ng)。

FNB針とFNA針の比較の報告も2個あり、FNB針の方が有意にCGP解析基準を満たす割合が高かった。

FNB針(90.9%) vs FNA針(66.9%) p=0.02、FNB針(90.9%) vs FNA針(66.9%) p=0.001。

 

結論:19G FNB針を用いたEUS-TAのNOP分析適合基準を満たしたUR-PC患者の割合は、主要評価項目の達成に有効だった。