Early detection of venous thromboembolism after the initiation of chemotherapy predicts a poor prognosis in patients with unresectable metastatic pancreatic cancer who underwent first-line chemotherapy with gemcitabine plus nab-paclitaxel

PLoS One 2022 Mar 1;17(3):e0264653.

 

背景&既報:膵臓癌の一次治療としてGnPは標準的であり、治療前の予測因子としてCA19-9、Alb、高齢、NLRは報告されているが、下記のようにVTEと予後の関連は様々な報告があり、一定条件での関連ははっきりしていない。

・Leeらの報告(Medicine.2016;95:e3472.)では韓国1337人の膵癌患者の解析で欧米の集団とは異なり、VTE発生は予後に影響を及ぼさない。サブグループ解析では症候性VTEおよびDVT/PTEは、偶発的に発見されたVTEまたは腹腔内VTEより、VTE発生後の死亡率が高いことが示された(この結果はより早期のstageで見られた。)。

・Chenらの報告(Cancers.2018;10(12).)では台湾838人のUR-LAまたはM膵癌患者の解析で、VTEの有無は予後に起因しなかったが、化学療法開始後 1.5 ヵ月以内に発症した早期発症 VTE は、化学療法開始後 1.5 ヵ月以内に発症した VTE に比べて生存率が低下した。

目的:GnP治療を受けた切除不能転移性膵癌に対するVTEの関連を解析する。

対象:GnPによる一次化学療法を受けた切除不能転移性膵癌(UR-MPC)患者174人

研究方法:単施設後ろ向き

期間:2017年4月~2020年3月

評価項目:全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、重篤な有害事象、およびOSに関連する予測因子

定義:VTEは下肢エコーまたは造影CTで定義されたDVTあるいはPTE。早期発見は化学療法後初回の造影CTで発見されたVTE。最初から診断されていた&早期発見をVTE(+)群、それ以外をVTE(-)群とした。

(Chenらの報告では1.5カ月以内、これも初回って感じなのかな。しかし治療後初回で足まで造影CT必ずは撮らないよね…?)

結果/結論:VTEの早期発見は17例(9.8%)(治療開始時にVTEと診断された13人+治療開始後に診断された4人)

治療開始後から診断までの中央値は55日(範囲:31~71日)。

VTE(+)群は、VTE(-)群に比べ、OSとPFSが悪化した(259日 vs 400日, p<0.001、PFS:120日 vs 162日, p=0.008)。
OSの予後因子として単変量で残ったECOG PS、baseline CA19-9、VTE(+)、baseline D-dimerの4つを多変量解析すると、ECOG PS、CA19-9に加えて、VTE (+)も 有意(HR, 1.87; 95% ci, 1.02-3.03, p = 0.041)だった。

GnP 化学療法後に BSC を選択した患者の割合は VTE(+)群で有意に高かった。

考察

Although previous retrospective studies reported no association between VTE and overall survival (OS) in pancreatic cancer patients [19, 20], recent studies have reported that the diagnosis of VTE was associated with a 1.6-fold risk decrease in OS [21].

19,20の文献ではVTEとOSに関連はないと述べられているけど、21の文献では予後に起因すると述べている…19,20が2010.2016で21が2007で時系列は変だね?ま、いいか!
過去のレトロスペクティブ研究では、膵臓がん患者における VTE とOSの間に関連はないと報告され ているが最近の研究では、VTE の診断が膵癌患者のOSのリスク因子であることも報告されている。この差は、おそらく、化学療法の進歩に伴うOSの改善によるものと思われる。今回の研究でもVTE群ではCA19-9 値が高い患者の割合が多く、PS=0 の患者の割合が少なかった。病期が進行している患者が多いことが示唆され、それによりGnP後にBSCを選択する患者も多かった。

本研究では、VTE の総発生率(9.7%)は既報より低い、早期に限られていたから。

VTE(+)群の80%が無症状であったことは既報(Oncotarg.2018;30;9(24):168830-16890.国がん中央&東 Kondoらによるの報告)と同等。

VTEの有用なバイオマーカーとして、D-dimer, fibrin degradation product, IL-6 levels, factor VIII, von Willebrand factor, free tissue factor pathway inhibitors, microvesicle-tissue factor activity, CA 19–9 levelsなどが報告されている。

今回の研究でもわかったように、D-dimer測定が特に重要。

1003人の膵臓癌患者のメタアナリシスにより、抗凝固療法は大出血を増加させることなく、症候性VTEのリスクを有意に減少させることが明らかになった(Keyら J Clin Oncol.2020;38(5):496–520.)。International Initiative on Thrombosis and CancerやAmerican Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guidelineでは、化学療法を受けるがん外来患者において、Khoranaコ ラ ーナァ【kō-rä′nə】 score≥2、出血リスクなし、薬剤相互作用なしでアピキサバン(エリキュース)またはリバロキサバン(イグザレルト)による抗凝固療法を推奨している。下の表を見ると、膵癌というだけですでに2点を満たしているが、DOACが世の中に浸透していない理由は、出血とコストへの懸念であるだろう。

↓Khorana scoreと他の血栓スコア(他のは項目が煩雑であんまり浸透してない?Oncotevは聞くことあるけど)↓

YAKUGAKU ZASSHI 2021, 141, 611-622

 

・・・・・・・・・脱線・・・・・・・・

★CASSINI試験とAVERT試験★

【CASSINI】VTEリスクが高く(Khoranaスコア2以上)、新たに全身がん治療を開始する外来がん患者を対象に、リバーロキサバン10mg/日をプラセボと比較する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第3b相試験。 主要評価項目は、180日後および介入期間中(リバーロキサバンまたはプラセボの初回投与から最終投与2日後まで)に評価された深部静脈血栓症、肺塞栓症または血栓塞栓症に起因する死亡の複合エンドポイント。180日間の試験期間中、リバーロキサバン10mgによるVTEおよび血栓塞栓症による死亡の発生率は有意に減少しなかった(6% vs プラセボ8.8%、HR0.66、p=0.10)。しかし、介入期間中に主要評価項目に到達した頻度は、リバーロキサバン群で有意に低かった(2.6%対プラセボ6.4%、HR0.4、p0.05)。 重篤な出血のリスクは全体的に低く、有意差はなかった(2% vs. プラセボ1%;p=0.265)。47%の患者が予定より早く試験を中止し、癌腫も限られていたため、結果には限界がある。 

【AVERT】化学療法を開始した中~高リスクの外来がん患者のVTE予防としてアピキサバン2.5mg b.dとプラセボの比較が行われ、180日後のVTE発生率はアピキサバン療法 vs. プラセボにより著しく低下した(4.2% vs. 10.2% p<0.001)。アピキサバン群における肺塞栓症の発生率の低下(1.7% vs. 5.8%プラセボ)の一方で、大出血イベントの発生率が高くなった(3.5% vs. 1.8%)。

★GnP,FFXとVTE、ATE(動脈塞栓)★

有料でAbstructしか読めず。病院いけばダウンロードできるかな…?

VTE診断は死亡率の増加(移行ハザード比[THR]:1.59 [95% CI:1.21-2.09] )およびがんの進行リスクの増加(THR:1.47 [95% CI:1.08-2.01] )と関連していたが、ATEは関連していなかった。

cancer-associated VTE がVTEの最も強い予測因子。

化学療法のレジメンにはVTE/ATE発症リスクは関連していなかった。

Khoranaスコア(SHR:0.78[0.57-1.06])はVTEリスクの予測に失敗した。←え!!がーん。Khoranaスコアはあんまりなのか?