手術が終わって病室に戻った。


徐々に意識がはっきりしてきた。


身体を起こせないのでよく見えないが、身体にはいろいろなものが付いている。

硬膜外麻酔PCA、膀胱留置カテーテル、廃液用ドレーン、両脚フットポンプ、20Gのぶっとい点滴など。


先ほど看護師が来てドレーンで体外に引っ張り出した赤い液体をジョボジョボと廃液していった。

結構出るもんだなと。

こちらは時間とともに赤みが薄くなっていくんだろうな。


明日、留置カテーテルが抜けたら歩行OK。

早く動きたい。


フットポンプは身動きが取れなくて不自由ではあるが、結構気持ちがいい。

適度に圧迫されて、脚の血流がじわーっと動かされる感じ。

自動的に血栓症を予防してくれるなんてありがたい機械だ。


硬膜外麻酔PCAもありがたい。

持続的に鎮痛剤が痛みを抑えてくれる上、痛いなと感じた時は自分でボタンを押すと鎮痛剤が出てきて自身で痛みをコントロールできる。

しかも、薬の使い過ぎを防ぐため、ボタンは30分に1回しか押せないという優れもの。

痛い時にナースコールをして看護師を煩わせなくて済む。


それにしても昨晩から何も食べてないので腹が空いた。口の中がカラカラだが、今日は絶飲食なのでガマン。


今朝は起きてから浣腸し、出たものは流さず見せてくれと言われ、看護師に見せた。

なに、このプレイ…笑


あんまり出なかったので手術中大丈夫だろうかと思ったが、肛門付近の便が出ればそれで良いとのことだ。

ちなみに前回片側の卵巣摘出術を受けた時は手術前日から禁食で、ニフレックという下剤をたっぷり飲んだ。便の色がどんどん薄くなって、最終的には薄い黄色になるまで飲んだ。


前回は大腸を徹底的にきれいにしてから手術だったが、今回は浣腸だけ。

卵巣と子宮では術前処置がだいぶ違うみたいだ。


歩いてオペ室へ行き、手指を消毒してヘアキャップをかぶった。


室内にはいつもお世話になっているバリバリの女医さんがいて、挨拶をした。

看護師、麻酔科医などたくさんの人がいた。


まずは硬膜外麻酔から。

「今日麻酔を担当する◯◯です」と。


あれ?昨日麻酔科診察の時の6年目の人じゃない。

昨日の人よりさらにもっと若い医師。

研修医か麻酔科1年目かわからないが、6年目の医師からスーパーバイズを受けながら私の麻酔をするらしい。


ちなみに自分も研修医の頃、麻酔科をまわり、同じ立場で患者に麻酔をかけたことがある。

その時の自分は不慣れで、でも患者には悟られないよう、おっかなびっくりやっていた記憶が蘇ってきた。

患者に育てられた自分が今度は若手医師を育てることになろうとは、などといろいろ考えながら背中を丸くした。


案の定と言ってはなんだが、やたら手技に時間がかかり、6年目の医師がヒソヒソ声で指示を出しているのが聞こえてきた。

ああ、不安…


やっとこさ硬膜外麻酔が完了し、いよいよ仰向けになって全身麻酔開始だ。


スタッフ皆に見守られ、これからプロポフォールが投入される時、なぜかとめどなく涙が溢れ出してきた。


それは、怖かったからではない。


今ではこんなにボロボロになってしまった子宮だが、奇跡的に子どもを持てたこと、そして後半は永遠に止まらない生理や大出血など本当に自分を悩ませ続けてきた子宮人生の記憶が走馬灯のように蘇り、感極まって泣いてしまったんだと思う。


生まれた時から今に至るまで、自分とともに生きてきてくれた子宮と今からお別れするんだな、と思った。


プロポフォールが体内に入って眠りにつくまで、主治医が身体をポンポンとタップして優しくヨシヨシしてくれた。

その優しさで更に涙が出てしまった。

こうして泣きながら眠りについた。


気づいたら手術が終わっており、覚醒が確認された後、病室へ。


まだ病室で寝たきりだが、こうやって記事を書けているのだからもう大丈夫だと思う。


あとは回復を待つのみ。

術後だからかサッパリしたもの、冷やっことかほうれん草のお浸しとかが食べたい。


退院したら生理のために今までできなかったことをいっぱいやりたいなと思う。