男性の避妊術であるパイプカット術(精管切除術)についてです。

 

精管という管を切除する手術ですが、この治療をとても小さな傷で行うことができます。

従来は左右1センチほどの傷を2か所作成していましたが、最近は1か所で行っています。

青い線が従来の傷、オレンジの線が最近の傷です。

従来の方法でも、ある点にこだわることで、傷を小さく、さらに無出血、治療中の痛みをほぼ無痛で行っていました。

傷は確かに残るのですが、「パイプカットを受けた証拠」と捉えれば、目を凝らして探すと見つかるくらいの傷はあっていいかもしれません。

 

ただ、もっと最小限の傷にこだわるのであれば、1か所の傷で出来ます。

No scalpel Vasectomy (NSV)と呼ばれ、欧米では標準治療になっていますが、日本ではほとんど行われていないようです。技術がより必要になります。

 

この手術、美容外科の医師でも特異不得意が分かれる手術の一つです。

簡単にできる医者にとってみれば、15分ほどで終わる治療ですが、そうでないと1時間以上かかってしまうこともあるようです。

陰嚢の中には、精管だけでなく、精管の周囲に動脈や静脈が流れているため、小さな傷で行おうとすると誤って血管を傷つけてしまい、出血して、手術部位が見えなくなり、結局大きな傷になったり、精管を探すのに大変時間がかかってしまうからだと思われます。

この場合、大きな傷、術後の出血のリスク増加、大きなテープで陰嚢ごと圧迫固定という大手術後の状態になってしまいます。

 

私は幸いにも、大手の美容外科勤務時代、この治療を教えてくれたある先輩ドクターの技術が高かったことと、そうではないドクターの治療や治療後の経過を多く観ることができ、自分なりに技術を追及するうちに、簡単に安全に行えるようになりました。

傷が2か所であっても、最近の1か所であっても、短時間で終わり、治療後傷口にカットバンを貼るだけで終わりますので、翌日からほぼ通常通り(シャワーは可能で、入浴は1週間禁止です)の生活が送れます。過去に、治療後感染や出血による陰嚢血種などの合併症が起こった患者さんは私の知る限りいらっしゃいません。

 

その辺のコツも含めて、男性器治療(包茎治療、陰茎を伸ばす長径手術、パイプカット術)の全体的な治療の解説と、実際のライブサージェリーを今月行いますので、参加される先生方よろしくお願い致します。