前日リハーサル、夜の部だけ参加できましたよ。
彼のネゴシエーションのおかげかな。
一流のネゴシエイターはこうする。
そういって彼はアネさんの前に進み出ました。
「土曜日がとうとうアネさんの先輩の主宰するオーケストラ、本番になりました」
「そうか・・・・・・あのさ、4月1日開院だろう。 おまえたちの結婚記念日とぶつかるんだよな。 だからさ、繰上げ法要してくれるとありがたいんだ。 新しい病院で、みんな不慣れで、ハイパーサーミアを使うにも、ハンチョウと櫻井ちゃんの手が必要になるから」
「繰上げ・・・・・・」
法要・・・・・・?。
「明日じゃダメか。 明日なら、これから月末は遊びに出られない日々が続くから、医師6人と看護師2人は午後4時から特別休暇ということにしてもいい」
「明日ですか・・・・・・。 うーん、いいでしょう。 その代わり、各自担当患者さんのお見送りには看護師でできるよう、万難を排しておきます」
「コンサートが終わって1週間程度で、先輩から喘息患者の子供のデータが、送られてくるんだ。 それは、使用前、使用後のものでさ。 X線1枚を比べても、急激に白みが引いていって、練習を毎日続けるような時期になってから、発作が無くなってる。 まだ、わたしには信じられない。 今、一番興味のある分野なんだよ。 彼らだけの特殊な能力なのか、万人が持つ能力なのか。 ハンチョウと志村以外は今回初めてだろう。 そうとうびっくりしてるもんな。 チャラが医学書を読んでるくらいだから。 だけど、そんなもんを読んで理解しなくても、彼らと時下に触れ合って学ばないと答えは出ないよ」
「いただきました。 じゃあ、学ばせてもらってきます」
わたしに向けてVサイン。
これが超一流のネゴシエート?。
土曜が本番です、患者さんのお見送りには、看護師でできるよう万難を排す。
それだけじゃない。
「いただきましたっ!」
は『SPEC』ネタ。
完全にのめり込んでる。 秋を過ぎれば使えなくなるから、思いっきり使っておくか。
きょうは午前11時から司法解剖の依頼があった。
ところが誰も応じようとしない。
病院の中では、外来もあわせると80名近い医師がいるというのに、一斉に引いてしまった。
残ったのはサコちゃんとわたし。
行くしかないでしょ。
ただ、場所が医大っていうのがね。
知り合いがいたりするわけで、おかしなことはできないわけで。
紺野看護師を助手にして、とにかく仏さんの前に立った。
56才男性。 身長158cm、体重は110kg。 完全なメタボ。
仏さんにかけられたシーツをはぐった途端、彼は言った。
「これは解剖の必要なし。 警察の鑑識で検案すればいい」
「解剖しないと遺族がうるさいんです。 刑事ドラマの影響で死体はすべて解剖するものだと思っているんで」
刑事は言った。
観たことある。 女性犯罪被害対策チームのハンチョウの旦那。
彼と、以前篭城事件の現場で2人で強行突入して犯人の手にしていた刃物の刃をつかんでてのひらに大怪我をした人。
「3割弱しか解剖してないのにね。 警察にも予算がね」
彼はため息をついた。
「だから、なんとか」
「わかりましたよ。 強行犯係にもかっこをつけさせてやるよ。 でも、不必要な解剖はしない。 検案だけでわかるから」
「それでもいいよ」
彼は頷いて仏さんの顔を首だけを見ていた。
「疑う余地もなく他殺。 扼殺だ。 相当争ってるな。 爪には犯人がいるから、後回しにして。 扼殺といっても珍しい特徴が見られる。 目の周囲まで扼殺によるうっ血が見られる。 これはおもしろい」
「目の周囲は扼殺によってできたのか? どこかにぶつけたとか」
「扼殺。 首の扼殺痕から見て、おもいっきり力を入れて、抜いて、また入れての繰り返しで出る典型的な特徴だ。 つまり犯人は、ものすごい力で締め付けたために、力の限界が来て、途切れた。 そして、また締めなおす。 それを繰り返したんだろう」
「仏さんの頬の防御そうは?」
「防御そうじゃない。 犯人が手で引っかいたんだ。 犯人の爪にはこの仏さんのDNAがある。 さて、仏さんの爪を見るか」
彼は慎重に指の爪を見ていた。
「まさか、ふき取ったってわけじゃないよな。 必ずあるはずだ。 そこまでふき取ったとすれば、法医学関係者か、プロの殺人者ってことにな・・・・・・あった!。 シャーレをお願い!」
紺野看護師は慌てて彼にシャーレを渡す。
その間、わたしは仏さんの扼殺痕を顔から首までのイラストに書き足していった。
「やっぱり、残ってたか」
「証拠は貰う」
「ダメだ! 基本は手袋。 白手袋をはけ」
慌てて手袋をはめた刑事に、彼は慎重にシャーレを渡した。
「さてと」
始まるか。
彼は筆ペンを取り出し、仏さんの特徴を数枚の紙に書いていく。
ふうー、と一息つくと、まとめた紙をめちゃくちゃに破いて投げ上げた、
ひらひらと紙ふぶきが降る。
「いただきましたっ!」
『SPEC』の当麻か、おまえは。
それで?。
「犯人の親指にはかなりの圧がかかったことによる、内出血もしくは骨折の痕がある。 扼殺痕が右側のほうが強いので犯人は左利き」
「このDNAの鑑定は?」
「それは鑑識でやれよ。 法医学分野を逸脱してる。 最近は法医学をテーマにしたドラマのおかげで、法医学者が犯人を追い詰めるものだと勘違いしてる。 それは捜査一課の仕事だ」
「手柄をくれるってことか?」
「やる。 元相棒のプレゼントだ」
「ずっと相棒だぜ」
こうして、解剖は検案のみで終了した。
帰りにみよしので食事をして、病院へ戻った。
泣いてたよ、サコちゃん。
リハーサルでダメ出しを連発されて、目にうっすらと涙を浮かべてた。
どうしても、子供をテーマにすると、拒絶反応が起こって雑になってしまう。
本番は決めるのがプロのジャズマンだからね。
ジャズってリハーサルはそんなに真剣にしないという。
でも、本番になったらものすごいSPECを発揮するというから、心配なし。
明日は満員の観客の前で本来の力を見せよう、ねっ、サコちゃん。
紙吹雪はどうしたって?。
自分で片付けてたよ。
ドラマじゃないから。
彼のネゴシエーションのおかげかな。
一流のネゴシエイターはこうする。
そういって彼はアネさんの前に進み出ました。
「土曜日がとうとうアネさんの先輩の主宰するオーケストラ、本番になりました」
「そうか・・・・・・あのさ、4月1日開院だろう。 おまえたちの結婚記念日とぶつかるんだよな。 だからさ、繰上げ法要してくれるとありがたいんだ。 新しい病院で、みんな不慣れで、ハイパーサーミアを使うにも、ハンチョウと櫻井ちゃんの手が必要になるから」
「繰上げ・・・・・・」
法要・・・・・・?。
「明日じゃダメか。 明日なら、これから月末は遊びに出られない日々が続くから、医師6人と看護師2人は午後4時から特別休暇ということにしてもいい」
「明日ですか・・・・・・。 うーん、いいでしょう。 その代わり、各自担当患者さんのお見送りには看護師でできるよう、万難を排しておきます」
「コンサートが終わって1週間程度で、先輩から喘息患者の子供のデータが、送られてくるんだ。 それは、使用前、使用後のものでさ。 X線1枚を比べても、急激に白みが引いていって、練習を毎日続けるような時期になってから、発作が無くなってる。 まだ、わたしには信じられない。 今、一番興味のある分野なんだよ。 彼らだけの特殊な能力なのか、万人が持つ能力なのか。 ハンチョウと志村以外は今回初めてだろう。 そうとうびっくりしてるもんな。 チャラが医学書を読んでるくらいだから。 だけど、そんなもんを読んで理解しなくても、彼らと時下に触れ合って学ばないと答えは出ないよ」
「いただきました。 じゃあ、学ばせてもらってきます」
わたしに向けてVサイン。
これが超一流のネゴシエート?。
土曜が本番です、患者さんのお見送りには、看護師でできるよう万難を排す。
それだけじゃない。
「いただきましたっ!」
は『SPEC』ネタ。
完全にのめり込んでる。 秋を過ぎれば使えなくなるから、思いっきり使っておくか。
きょうは午前11時から司法解剖の依頼があった。
ところが誰も応じようとしない。
病院の中では、外来もあわせると80名近い医師がいるというのに、一斉に引いてしまった。
残ったのはサコちゃんとわたし。
行くしかないでしょ。
ただ、場所が医大っていうのがね。
知り合いがいたりするわけで、おかしなことはできないわけで。
紺野看護師を助手にして、とにかく仏さんの前に立った。
56才男性。 身長158cm、体重は110kg。 完全なメタボ。
仏さんにかけられたシーツをはぐった途端、彼は言った。
「これは解剖の必要なし。 警察の鑑識で検案すればいい」
「解剖しないと遺族がうるさいんです。 刑事ドラマの影響で死体はすべて解剖するものだと思っているんで」
刑事は言った。
観たことある。 女性犯罪被害対策チームのハンチョウの旦那。
彼と、以前篭城事件の現場で2人で強行突入して犯人の手にしていた刃物の刃をつかんでてのひらに大怪我をした人。
「3割弱しか解剖してないのにね。 警察にも予算がね」
彼はため息をついた。
「だから、なんとか」
「わかりましたよ。 強行犯係にもかっこをつけさせてやるよ。 でも、不必要な解剖はしない。 検案だけでわかるから」
「それでもいいよ」
彼は頷いて仏さんの顔を首だけを見ていた。
「疑う余地もなく他殺。 扼殺だ。 相当争ってるな。 爪には犯人がいるから、後回しにして。 扼殺といっても珍しい特徴が見られる。 目の周囲まで扼殺によるうっ血が見られる。 これはおもしろい」
「目の周囲は扼殺によってできたのか? どこかにぶつけたとか」
「扼殺。 首の扼殺痕から見て、おもいっきり力を入れて、抜いて、また入れての繰り返しで出る典型的な特徴だ。 つまり犯人は、ものすごい力で締め付けたために、力の限界が来て、途切れた。 そして、また締めなおす。 それを繰り返したんだろう」
「仏さんの頬の防御そうは?」
「防御そうじゃない。 犯人が手で引っかいたんだ。 犯人の爪にはこの仏さんのDNAがある。 さて、仏さんの爪を見るか」
彼は慎重に指の爪を見ていた。
「まさか、ふき取ったってわけじゃないよな。 必ずあるはずだ。 そこまでふき取ったとすれば、法医学関係者か、プロの殺人者ってことにな・・・・・・あった!。 シャーレをお願い!」
紺野看護師は慌てて彼にシャーレを渡す。
その間、わたしは仏さんの扼殺痕を顔から首までのイラストに書き足していった。
「やっぱり、残ってたか」
「証拠は貰う」
「ダメだ! 基本は手袋。 白手袋をはけ」
慌てて手袋をはめた刑事に、彼は慎重にシャーレを渡した。
「さてと」
始まるか。
彼は筆ペンを取り出し、仏さんの特徴を数枚の紙に書いていく。
ふうー、と一息つくと、まとめた紙をめちゃくちゃに破いて投げ上げた、
ひらひらと紙ふぶきが降る。
「いただきましたっ!」
『SPEC』の当麻か、おまえは。
それで?。
「犯人の親指にはかなりの圧がかかったことによる、内出血もしくは骨折の痕がある。 扼殺痕が右側のほうが強いので犯人は左利き」
「このDNAの鑑定は?」
「それは鑑識でやれよ。 法医学分野を逸脱してる。 最近は法医学をテーマにしたドラマのおかげで、法医学者が犯人を追い詰めるものだと勘違いしてる。 それは捜査一課の仕事だ」
「手柄をくれるってことか?」
「やる。 元相棒のプレゼントだ」
「ずっと相棒だぜ」
こうして、解剖は検案のみで終了した。
帰りにみよしので食事をして、病院へ戻った。
泣いてたよ、サコちゃん。
リハーサルでダメ出しを連発されて、目にうっすらと涙を浮かべてた。
どうしても、子供をテーマにすると、拒絶反応が起こって雑になってしまう。
本番は決めるのがプロのジャズマンだからね。
ジャズってリハーサルはそんなに真剣にしないという。
でも、本番になったらものすごいSPECを発揮するというから、心配なし。
明日は満員の観客の前で本来の力を見せよう、ねっ、サコちゃん。
紙吹雪はどうしたって?。
自分で片付けてたよ。
ドラマじゃないから。