生きてたっ!
 生きてるんだよね、わたし!
 生きているから、更新ができるんだよね。
 
 きょうは起き抜けから、死を覚悟してました。
 猛吹雪なんですよ。
 猛吹雪の前に何か形容詞をつけたいんだけど、日本語にはないくらいの猛吹雪です。
 よりによって、日曜ですよ。
 教会に礼拝に行かなければならない日曜日。
 でも、きょうは行くことはできないだろうとあきらめてました。
 まず、何よりも車をどこに駐車してあるのかがわからない。
 職員駐車場が吹雪に埋もれてフラットな状態で、車があるのか、何もない空き地なのかがわからない。
 でも、毎週一緒に通っている仲間は全員が行くと言う。
 車は、普段駐車しているところをイメージして、掘り出してみる、って。
 サコちゃんも同感だ、って。
 わたしだけが無理だと反対しても、採用されないのが民主主義じゃないですか。
 
 いざ、スコップで駐車場までの道を作っていると、雪が重たいんですよ。
 雨が夜中に雪に変わっているから。
 絶対に腰を痛めると思いました。
 医者が湿布を貼って、一時退院から戻る患者さんを迎えられないじゃないですか。
 「この担当医で大丈夫か?」って不安に襲われますよ。
 少なくとも、わたしだったら襲われるね。 転院を願い出るよ。
 なんとか、職員駐車場があったと思われる場所まで近づいたところで、彼がいきなり、
 「離れて!!」
 なんていうわけ。
 おかしなもので、人間って、いきなり不意をついて命令されると、反射的に聞いてしまうんですね。
 彼が腕時計を操作すると、エンジン音がして、彼のトヨタ86が飛び出してきた、と同時に、周囲の雪が崩れて、他の車に積もった雪が雪崩を起こしたように崩れて、姿を現したんです。
 彼の車には、ラジコンと同じ機能がついているんです。 もちろん警察用特殊車両の装備として。
 腕時計を発信機として、車を操作できる機能。
 なんとか、駐車場からの脱出はできたんですが、 路面に出ると、視界ゼロ。
 止めるべきだって、教会は
 部屋で祈ればいいって
 「大丈夫だよ。 視界ゼロでも走れるから、こいつは。 ドップラー・レーダーがついてるから」
 ドップラーレーダー。 目標物識別レーダー。 愛称はドルフィン。
 文字通り、イルカの機能から発明された、艦船搭載用レーダー。
 イルカは、視力がほとんどゼロに近いから、 脳から常に超音波を出して、反射してきた音波から周囲の状況を組み立てて知るんですね。
 それと同じように、車から超音波を発射して、反射してきた音波を組み立てて、カーナビのディスプレィに再構築することによって、前方何mに何があるのか、建物か車か歩行者か。 だからその機能を使えば目視運転は必要ないってことです。
 それを思い出してホッとした途端に、
 「あれっ、反射波が戻ってこない。 照射方向を変えても戻らない。 何も映ってない。 ドルフィンもダメか・・・・・・目視しかない、か」
 なんで人を安心させた瞬間に地獄に突き落とすようなことを言うの!
 「まさか、ドルフィンが使えないとは思いもよらないから。 こんなこと初めてなんだからしかたないでしょ。 大丈夫、目視でなんとかなる」
 きょうは日曜で国道も除雪されてなくて、凍結路面の上に吹雪がわだかまって、車が腰を振るんですよ。
 それでも、彼はなんとかテクニックで車を抑えきって、やっと協会に着きました。
 
 きょうはおそらく誰も来ていないと勝手に決めていたのに、駐車場が一杯。
 でも、市役所の隣だから、市役所の関係者が休日出勤でもしてるんだろうと思って、扉を開けると、礼拝堂は既に満杯で。
 牧師さんが、
 「公共交通がすべてストップしている中、よく集まってくれました。 教会の行き帰りは神がお守りくださるから、絶対に事故にはならないという御言葉をごぞんじで、大変嬉しいです」
 そして、礼拝の開始。

 礼拝を終えて教会から出ると、吹雪は一層激しくなっていて、もしかしたら永遠に病院に帰り着くことはできないかも、とは思いながら、教会に住み着くわけにも行かず、信者さんはみんな、神が守ってくれるから大丈夫ですよ、なんて、ぞくぞくと車を発車させ帰途につくし、なるようになるだけだろうと思って、帰途につきました。
 
 あー、電信柱に車が突き刺さってるー
 「どこ、どこ」
 お前は横を見るな。
 前だけ向いて運転して!
 そんなの見なくていいから!
 「前だけ見てと言っても、前は全く見えない。 ワイパーを目いっぱい振ってるけど追いつかないから。 大丈夫だよ、神が守ってくれるから」
 御言葉もいいけど、まずは目の前の現実でしょうが。
 「あれっ、後ろにいたプリウスがいない。 まさか事故?」
 いいの。 変なおじさんが死んでくれるだけだから。
 「戻ってみようか」
 必要ないよ
 「だけど」
 神が守ってくれてるから
 この車以外は
 「バルセロナ・テストよりも過酷だね、きょうは」
 当たり前だよ。
 ここは整備されたサーキットじゃない、除雪もしてない一般道。
 前が見えてる?
 「いや、全然」
 うそー。
 「大丈夫だよ」
 神は守ってくれないよ。
 「ナイジェル・マンセルよりもぼくのほうがドライビングテクニックは上だから。 ピットの出口でたいやが外れて転がって、中嶋さんにめいわくをかけたりしたことはないから」
 タイヤ事件はマンセルが悪いんじゃないの。 ピット・クルーが慌てすぎた結果。
 あの人は被害者の1人だから。
 彼の携帯が鳴った。
 こんなときに電話をするんじゃない!。
 電話、鳴ってるよ
 「申し訳ない、出てくれる?」
 誰だ、こんな時に優雅に電話なんかかけるバカは。
 チャラか・・・・・・ってなんの用?。
 救急搬送があったから急いで戻れとかじゃないだろうね。
 恐る恐る電話に出ると、
 「あっ、あの、グランブルードリームス・オーケストラから連絡があって、今日の練習は中止だそうで、まっすぐ病棟へ戻っていいということで」
 だよね。
 親たちが車で子どもを送ってくるわけで、この状況ははっきり言って危険だからね。
 「かすかに前が見えてきた。 吹雪は収まるかな?」
 かな、じゃないでしょ。
 気象予報士なら正確な答えを出しなって。
 でも、言われてみれば、心持ち視界が開けたかもしれない。
 イケる。
 この隙に一気にね、病院まで。
 イトーヨーカドーも見えてきたし無事に帰ることができるね、って、なんでイトーヨーカドーが見えるの?。
 道が全く逆じゃん。
 「道を間違えたかもしれない・・・・・・」
 かもしれないんじゃなくて、間違えたんだよ
 ここからUターンする?
 「いや、このまま18丁目まで出て、39号線をスーパートライアルの向こうまで進んで、セリ市場の上を通過して、病院に戻ったほうがいい。 下手なUターンは危険だから」
 なるほどね。
 座布団1枚。
 「AZー1ならこんな苦労はしないのに」
 もう忘れなさいって。
 二度と戻ってこないんだから。
 それよりも現実に目を向けること。
 心なしかまた吹雪が激しくなったんじゃないかな。
 「あー、明日の午前中にマツダの営業所長が検査に来るんだ」
 だから、何?。
 「電子レンジを見ておかないと」
 えっ、今、なんておっしゃいました?。
 なんでーすかー?。
 電子レンジとマツダの営業所長とどういう関係があるの?
 マツダでも電子レンジを生産してるとか?
 「何が電子レンジだよー。 いやだなー、電子カルテ。 一度、耳の検査をしてもらったら?」
 電子レンジって言ったでしょ
 「ないよ」
 言ったって
 「まさか」
 言ったの!
 「電子カルテって言ったけど」
 電子レンジって言った!!
 「帰ってから続きは話そう。 運転に集中しないと危険だから」
 うわー、病院が見える!。
 天は見放さなかったんだ。
 来週は献金に色をつけるからね。
 視界が横に流れてる?
 「横からの防風だ。 架橋の上だからなおさら強く吹き付けるんだ」
 このまま、吹だまりに突っ込んで、脱出不可能になって、排気ガスが逆流して死んでしまうんだ・・・・・・。
 でも、彼と一緒ならいいよ、それでも。
 ・・・・・・。
 「着いたよ」
 えっ、天国って意外と近いね
 「病院の職員駐車場」
 あっ、あー。
 って、生きてるの?
 「当たり前だよ、何を言ってるの? 正面で除雪を行ってた。 日曜に動いてくれる業者さんがいるんだね」
 まさか。
 救急入口から見えたのは、たしかに大型のブルドーザーと、停められているユンボ。
 ほんとだ
 いい業者さんもいるんだね
 ブルドーザーが停まり、降りてきたのはなんと麻酔科長。
 無免はまずいって。
 いくら構内に当たるといっても、無免はまずいって。
 救急入口から入ってきたから、わたしは言った。
 大型特殊の免許は持ってないですよね?
 「あるよ」
 えっ?
 「ほら」
 差し出されたのは、大型特殊免許。
 すごーい
 麻酔科長で大型特殊って必要なんですか?
 「学生時代にバイトをするために取得したんだ。 ドカチンは時給がいいから。 その上に重機のオペレーターができると千円近くなるからね」
 ドカ・・・・・・チン?
 うわっ、下ネタ。
 「ドカチン。 今風に言えばガテン。 いわゆる肉体労働者。 建設作業員。 人足やヨイトマケ、人夫は差別用語だから使えない」
 彼。
 あーなるほどね。
 わざわざ除雪に来てくれたんですか?
 「日曜は業者は動かないから。 休日出勤だと給与が1・25倍だろ、会社は支払いたくないから、どんな状況でも動かさないんだよ。 ぼくがやるしかないし、自宅にいても暇を持て余すしカミさんがギャーギャーうるさいしね。 スーパーの日曜特売に行けないもんだから、八つ当たり」
 病院のためによく頑張った。
 感動した!。
 おめでとう!!。 ・・・・・・じゃない、ありがとう。か
 ベンダー(紙コップ式の自販機)で、アツアツコーヒーを買い、麻酔科長に渡した。
 ありがとうございます
 一息入れてください
 「済まないね、気を使わなくてもいいのに。 好きで勝手に来てるんだから」
 気持ちですから
 「職員駐車場に車、入れた? できれば、正面に移動してくれるとありがたいんだけど。 これから職員駐車場に入るから」
 わたしがスコップでやりますよ
 そんなに迷惑はかけられませんので
 「ダメだって。 絶対に腰を痛めるよ、この雪は。 雨を含んでるから。 しかし、どうなってるんだろうな、この雪は。 立春から1ヶ月以上経ってるのに」
 異常気象ですね
 「うん。 かもしれない。 だけど、夜明けの前が一番暗いっていうしね」
 次々と礼拝に参加した仲間が戻ってきた。
 変なおじさんはいない。
 やっぱり吹だまりに突っ込んで、あの世へ行ったか。
 あえて捜索はしないよ。 わたしが二次被害者になるからね。
 家族葬くらいは出してやるから。 10万円コースで。
 「あっ、脳神経科長から伝言でした。 自宅の除雪があるから、まっすぐ帰るって」
 佐橋看護師。
 なーんだ、つまらない。
 「妹さんも、帰って寝るからって」
 今朝までで深夜勤務が終わったからね。
 明日からは準夜か。
 寝てろ、ずっと。
 変なおじさん、大丈夫かね。
 除雪で腰を痛めて、ここに運ばれてきたら笑いものだよ。
 わたしも、彼も妹も、家族として笑いものだ。
 辞める覚悟をしないとね。
 だけど、アネさんと離れるのは絶対に嫌だよ。
 患者さんをベッドに収めたら、さっさと、
 「夕食、買ってくる」
 って、ふらっと出かけていって、5人前入の握り寿司桶を6つも買ってきて、
 「ほら、しけた顔をしてないで、みんなでつまもう。 夕食くらいにはなるだろ」
 だって。 男気があるねー。
 いっ、違う違う。 女性ですよ、立派な。
 東大卒の才色兼備ですから。

 握り寿司、ラッキー!。
 ドンキとはいえ、1Fは鮮魚問屋が集まっているから、ネタの活きは最高だから。
 回らない高級店並み。
 「佐橋、残念」ってとこかな。
 準夜は、安積、紺野、看護師長、人間血管探知機か。
 おー、深夜にナベちゃんの名前が。
 チームA、エースを投入か。 
 わたしのチームBは黒木看護師。
 彼はチームAであることが何より嬉しいの。
 リーダーでしょ。
 チームAのリーダーと言えば、篠田麻里子さまだからね。
 
 黒木看護師は他人の技術を盗むのが得意。
 ナベちゃんもうかうかできないよ。 
 技術を見て盗むのは犯罪じゃないんだから、やっちゃえ。

 とにかく、みんなよく生きて帰ってきてくれたよ。
 
 明日はいよいよ3月11日。
 もう2年なのか、まだ2年なのか。
 言いたいことが一杯あるので、明日はかなり荒れた記事になります。、覚悟をお願いします。

 あの、電子レンジ論争。 答えが出ないまま、止めました。
 紺野看護師に言われたんです。
 「ノッチ夫婦ですね。 志村先生に何かを言われている時のハンチョウの目がものすごく泳いでる」
 ノッチ?・・・・・・。
 もしかして、偽バラク・オバマ大統領の。
 結婚してからたしかに、わたしは強くなってる、立場的に。
 だけど、パスタの煮え湯を顔に向けてわざと弾いたり、パスタに練りわさびを1本まるごと入れたりはしてないから。


 最後に、先日から2度、癌総合科のお医者様からメッセージを頂きました。
 スキルス癌に関することなのですが、私の言葉が足りなかったのと、知識が足りなかったので、まともな答えをお返しすることができませんでした。
 スキルスには全身温熱療法という治療が一番、ということでしたが、上手く答えることができなくて、地元の医師会の見解である、全身温熱療法は対処療法であり、効果はない、ということを返信してしまいました。
 そのことで、彼に相談したところ、できれば全身温熱療法を第一選択にしたい。 フィンランド研修のときのことを思い出してごらん、と言われて、研修当時の記録をめくったところ、全身温熱療法はたしかに、フィンランドではすべての癌に対して第一選択でした。 第二選択が、粒子線療法。 日本では粒子線が注目されていて、それ以外に癌を治す方法はないと言われています。
 たしかに、日本に戻って、医師会と厚労省に全身温熱療法のことを報告したところ、あれは対処療法だよ。 ここはフィンランドじゃないから。 日本なんだよ。 と一蹴されてしまって、それきりだったんです。
 彼は厚労省に無断でオペでスキルスと戦っていますが、全身温熱療法がしたいと言う。 不思議な話なんですが、実はオペは怖いと言うんです。 他人の体を切り刻む行為ですから、怖いし、癌の5年生存率にずっとつきまとわれて怯えてる、と。 だから、データ的に北欧で成果を挙げている全身温熱療法に切り替えたい。
 でも、国立病院で、施設を作る予算を要求しても、従来の癌治療以外の、訳のわからない治療に予算は取れないと繰り返されるばかりで。
 彼にメッセージと、わたしの返信とを見せたところ、ちょっときみの答えは勘違いしてるね。 だからといって、一蹴された情報から得られた成果を信じることも難しいし。 すばらしい御教示をいただけることに感謝しないと。 癌が治るサプリメントなんかだったら、ほとんどが嘘で、何の効果もないけど、全身温熱療法は違うから。 施設さえ揃えばオペなんかは辞めたい。 でも与えられた選択が1つきりだからしかたない。 病棟の患者さん用の浴槽を代わりに使用できないかとも考えたけど、イマイチだし。 とにかく、自分の未熟さを謝罪してアドバイスに感謝するべきだよ。

 アドバイスを頂いた癌総合科の先生。
 医長も、わたしの答えは間違ってる、と怒られてしまいました。
 2度目の返信での謝罪も、物足りなかったと思っています。
 すばらしいアドヴァイスをありがとうございました。
 なんとか、全身温熱療法を第一選択にできるようにがんばります。