進化系ノロウイルスのパンデミックから1日。
 彼の奇抜なアイディアで患者さんたちは救われ、きのうの夜、外泊に出た。
 家族には日中起きたことをすべて説明し、もし、外伯仲に容態が急変したら連絡をくださいと頼んでから、見送った。
 「わかりました。 もし、また、ひどい下痢と嘔吐が起きたら、大人用おむつをして、スーパーのレジ袋を口にがっちりガムテープで貼り付けて連れてきます」
 ある御家族の言葉です。
 救急車を呼ぶ、と安易に言わないのが、長期入院患者さんを持つ家族ですね。
 
 今のところ、大人用おむつをした患者さんは見ていません。
 「ぼくが調合した薬もいつまで効くかわからないよ。 あの薬を取り込んで数日のうちに進化を続けるかもしれない」
 緊急搬送はきょうの午後3時過ぎまで続き、ぴたりと止みました。
 スタッフは寝てない、食べてないでふらふら。
 「おそらく低体温症になってるだろうから、あたたかいものを作るよ。 それとおにぎりがあればなんとかなる。 豚汁を作りながらおにぎりを握るとどっちもうまくいかないから、おにぎりは信用の置けるお店で握ってもらう。 以前、ぼくの住んでいたマンションのそばに、店に行ってからオーダーによって握ってくれるんだけど、きょうは電話で頼んでおいて引取りに行くよ」
 わたしにできるようなことはない、ね
 「疲れたろう。 できることはあるよ。 ゆっくりと休むこと」

 彼と2人でおにぎり40個を引き取ってきて、あたたかい、というかまだ熱い豚汁で一息。
 みんなの口からやっと世間話が出始めました。
 「治療法がみつかったことで、救急搬送があっても楽に対応できる。 たかがノロウイルスごとき荷負けてたまるか。 ガンバですよ、ガンバ」
 ガンバ・・・・・・もう救急搬送は来ないでほしいと、みんなは思ってるよ。
 「薬剤が切れたんじゃない?」
 彼がウチの妹の病棟薬剤師に訊いた。
 「午前中に補充しておきました。 倉庫にぎっしりと詰め込んであるから百や二百人分にはなるでしょう。 他の病棟に回してもいいしね」
 土曜日にMRがきたわけ?
 土日は製薬会社の営業所って休日でしょ
 「ちょっと脅したら喜んで運んできたの」
 脅したって、あんた
 「きょう揃わないと月曜から出入り禁止になると思うよ、って言っただけだよ。 きょう持って来いとは言ってない。 MRが選択したんだよ」
 我が妹ながら恐ろしい術を身につけている・・・・・・。

 夕食は各自で摂った。
 でも、外食はさすがに誰もしなかった。
 コンビニで買う者、コープで買う者、ドンキホーテで買う者。
 とにかくすばやく買って、すばやく病棟に戻って、もしも救急搬送があっても対応できるように待機状態。
 といっても、それぞれの私室で、TVを観たり、ゲームをしたり、本を読んだり、いつもと変わりない状態だけど。

 それより、ぽつりぽつりとインフルエンザで学級閉鎖というニュースが聴こえてきた。
 インフルエンザも最近はどんどん進化しているから、既存のワクチンではどうにもならないかもしれない。
 
 そのときは、頼むよ、サコちゃん!。