ねえ、UFOって本物だと思う?
彼は昼食を摂る手を止めた。
「どうしたの?いきなり」
きのうのラーメン屋さんで、UFOを見たって言っていたサラリーマンがいたから
「ああ。あれは単なる酔っ払いの虚言かもしれないよ」
それは置いといても、UFOって本当に現れると思う?
ひとりで何回もUFOの写真を撮っている人っているっていうし
「UFOは実在する。ただし名称の通り未確認飛行物体と言う意味であって、外宇宙から宇宙人が乗ってきているものではない。例えば、新型戦闘機の実験飛行とか」
でも、写真って、ちゃんとした円盤型か光の玉だよ
円盤型の戦闘機なんてありえる?
「ありえない。はっきりと円盤型をしたものが映っているフィルムも写真もFBI時代からいやというほど見てきたけど、すべてが作り物だったよ。円盤の木製模型だったり、上から吊っているピアノ線がはっきりと解るものだったり」
ちゃちな特撮映画みたいなものってことか
「特撮といえば、宇宙人の解剖フィルムというのがアメリカでものすごい話題になって、毎日三大ネットワークが取り上げて、本物だと騒いだ。解剖医や宇宙工学、宇宙物理学の有名な連中までが本物だと認めた。ところがぼくにはフィルムの映像がとても不自然なものにしか見えなかった。特撮映画ばかり観ていると、つい疑うことから始めるんだ。飛行物体を見るとピアノ線を探すし。あの宇宙人の遺体も、メスを入れるシーンで気がついたんだ。これはラテックスという軟質プラスティックで、特殊メイクに使う素材だと。だから信じられなかった。からくりはまもなくわかった。TV局にフィルムを提供した人間が自分で製作した特撮フィルムで、製作費は1億円。それをTV局は数十倍の値で買った。製作した人間の思い通りになったんだよ。彼は金儲けのためにフィルムを製作した。1億円の借金を返しても、一生遊んで暮らせる金を手に入れたんだ。でも逮捕はできない。なぜなら、彼はTV局にフィルムを提供する時に、宇宙人の解剖フィルムだとは言ったけど、本物だとは言ってなかった。TV局が勝手に本物だと思い込んで放映してしまった。宇宙工学も宇宙物理学も、おまけに医者もいい加減な人種だよ。あるいはTV局の演出で、本物だと言わされたのかもしれないけど」
宇宙人が嘘だとすると、UFOっていうのは新型戦闘機の実験なわけか
「そうとは限らない。日本でもUFOと思われる現象の記録は古くからある。日蓮上人って知ってる?
当たり前でしょ
日蓮宗の開祖で、祈りによって台風を起こして、蒙古の侵略から日本を守った僧侶だよ
歴史で習った
「蒙古のことは後回しにして、UFOだ。日蓮はこの国が消えてなくなるような悪い予言ばかりをして、時の幕府に警告した。そのため、人心を惑わす罪人として処刑されることになった。幕府の2人の処刑人が日蓮の両脇を抱えて、闇の中を処刑場へ向かう途中で、目もくらむばかりの光の球を見た。日蓮が経文を唱えると、光の球は巨大になり、処刑人に襲い掛かった。恐ろしくなって、そこに日蓮をおいて逃げ出してしまった。季節は夏の夜とある」
だから、何?
世界のあらゆるUFOの目撃談は夏の夜なんだよ。真冬の目撃談は1つもない。不思議だと思わない?宇宙人は寒さが苦手なのか、あるいは花火大会でも観たいのか」
そんな、ばかな
「答えは夏の夜にあるんだよ。UFOの正体は夏の夜にのみ起きる自然現象が9割だ」
自然現象?
「光る球と書いて光球と呼ばれる現象。雷の置き土産だ。夏の夜に突然ものすごい雷が光って、土砂降りになることがある。その雷が光った後にその光る球が上空に現れるんだ。雲と言うのは上層部は+の電気を、下層部はーの電気を帯びている。地面は+の電気だ。これが雷の起こるメカニズムなわけだけど、激しくぶつかった+とーの電気が一種の爆発を起こす場合がある。それが光球なんだ。自宅に自分で撮影した光球現象のビデオが何本かあるよ。本当にUFOに見えるんだ。雷が消えて数秒後にいきなり現れるからね」
気象の現象なんだ
「気象予報士ならみんな知ってるはずだよ。残る1割は特撮だ。目立ちたがり屋さんのお遊びってとこだよ。UFOは懐中電灯1本で作ることができる。的場先生がよくやって写真を撮らせてた。JAXA相模原キャンパスみたいな、街から離れた場所だと、懐中電灯を夜空に向けるだけで光る球が現れる。それをめちゃくちゃに振り回すと、いかにもUFOが飛んでるように見えるんだよ。街の中でも懐中電灯をレーザ^ポインターに置き換えるだけでUFOになるよ。いつも怒られてたな、的場先生は。AMICAってはやぶさのカメラチームの連中にね、実験の邪魔になるだろうって。先生は文科省で何度も頭を下げ続けて、相模原に戻ってきて、ほっとして飲みすぎて酔っ払っていて、口をもつらせながら謝るんだけど、またやるんだ。子供みたいなところがあって。ああいう人じゃないと対外協力室は務まらないよ。プレッシャーに潰されてしまう」
的場室長って、本当に西田さんと性格的にも似てるの?
「似てるよ。20世紀FOXも、まあ堤幸彦監督がキャスティングしたんだろうけど、はやぶさプロジェクトの映画化の中で、最高の的場先生だ」
そうか、UFOは気象現象が作り出した幻だったのか。
でも、心のどこかで信じていたい。
外宇宙からこのくだらない星にやってくる異星人は必ずいる。
彼らとのコンタクトをきっかけに、地球は人種や宗教の違いを乗り越えてひとつになり、国を越えて地球として交流し、惑星連邦という巨大な組織の一員として機能する。
「蒙古を祈りによって嵐を起こして撃滅したというのも、単に自然現象だ。その年月日の日本のその場所の天候を、スーパーコンピューターにかけて割り出したことがあるんだ。低気圧が前日から停滞していて、暴風雨が起きては止みを繰り返していた。日蓮が祈りを始めて数十分後に低気圧の停滞による暴風雨が発生していた。日蓮も修行を積んだ僧侶だとはいえ、一個の人間だ。気象を操れるわけがない。日蓮宗の信者さんは日蓮の力だと信じているし、歴史の授業ではいまだに日蓮が祈りによって暴雨風を起こして蒙古を撃退したと教えている。逸話としてはおもしろいけど、ちょっと考えたらわかることだろう。まあ、日蓮宗の方々には耳の痛い話か、いや、彼らは頑なに信じるだろうね。それはそれでいい。でも、歴史の授業で嘘を教えるのはまずいんじゃないかな。ぼくの言うことも嘘かもしれないよ」
いいんじゃない
いわしの頭も、って言うから
蒙古の話はわたしも信じてなかった
祈りで気象をコントロールできるなら、気象庁もいらない
遠足の前の日は照る照る坊主をぶら下げて祈れば必ず晴れるんだからね
でも、考えてみたら、雨になった日のほうが多いんだよね
だから、願いって通じないものだと思ってた
はやぶさが還ってくるまではね
でも、今はちがう
願い続ければかなうこともあるんだって思ってる
「JAXAのプロジェクトチーム全員が思いを共有したからかなったんだ。そしてはやぶさの帰還を信じてくれていた日本中の人々の思いが通じたんだよ。そういうことでいいじゃない」
珍しい
科学で解けないことはないと自認する彼が、非科学的なことを言っている。
「いつか、UFO探知衛星でもあげてみたいな。文科省には相手にされないけど」
彼も宇宙からの訪問者の存在を否定はしてないんだ。
そうか。
その日がきたら、ふたりでしようね。
このくだらない星に乾杯!
コーヒーは飲めないからトマトジュースで。
彼は昼食を摂る手を止めた。
「どうしたの?いきなり」
きのうのラーメン屋さんで、UFOを見たって言っていたサラリーマンがいたから
「ああ。あれは単なる酔っ払いの虚言かもしれないよ」
それは置いといても、UFOって本当に現れると思う?
ひとりで何回もUFOの写真を撮っている人っているっていうし
「UFOは実在する。ただし名称の通り未確認飛行物体と言う意味であって、外宇宙から宇宙人が乗ってきているものではない。例えば、新型戦闘機の実験飛行とか」
でも、写真って、ちゃんとした円盤型か光の玉だよ
円盤型の戦闘機なんてありえる?
「ありえない。はっきりと円盤型をしたものが映っているフィルムも写真もFBI時代からいやというほど見てきたけど、すべてが作り物だったよ。円盤の木製模型だったり、上から吊っているピアノ線がはっきりと解るものだったり」
ちゃちな特撮映画みたいなものってことか
「特撮といえば、宇宙人の解剖フィルムというのがアメリカでものすごい話題になって、毎日三大ネットワークが取り上げて、本物だと騒いだ。解剖医や宇宙工学、宇宙物理学の有名な連中までが本物だと認めた。ところがぼくにはフィルムの映像がとても不自然なものにしか見えなかった。特撮映画ばかり観ていると、つい疑うことから始めるんだ。飛行物体を見るとピアノ線を探すし。あの宇宙人の遺体も、メスを入れるシーンで気がついたんだ。これはラテックスという軟質プラスティックで、特殊メイクに使う素材だと。だから信じられなかった。からくりはまもなくわかった。TV局にフィルムを提供した人間が自分で製作した特撮フィルムで、製作費は1億円。それをTV局は数十倍の値で買った。製作した人間の思い通りになったんだよ。彼は金儲けのためにフィルムを製作した。1億円の借金を返しても、一生遊んで暮らせる金を手に入れたんだ。でも逮捕はできない。なぜなら、彼はTV局にフィルムを提供する時に、宇宙人の解剖フィルムだとは言ったけど、本物だとは言ってなかった。TV局が勝手に本物だと思い込んで放映してしまった。宇宙工学も宇宙物理学も、おまけに医者もいい加減な人種だよ。あるいはTV局の演出で、本物だと言わされたのかもしれないけど」
宇宙人が嘘だとすると、UFOっていうのは新型戦闘機の実験なわけか
「そうとは限らない。日本でもUFOと思われる現象の記録は古くからある。日蓮上人って知ってる?
当たり前でしょ
日蓮宗の開祖で、祈りによって台風を起こして、蒙古の侵略から日本を守った僧侶だよ
歴史で習った
「蒙古のことは後回しにして、UFOだ。日蓮はこの国が消えてなくなるような悪い予言ばかりをして、時の幕府に警告した。そのため、人心を惑わす罪人として処刑されることになった。幕府の2人の処刑人が日蓮の両脇を抱えて、闇の中を処刑場へ向かう途中で、目もくらむばかりの光の球を見た。日蓮が経文を唱えると、光の球は巨大になり、処刑人に襲い掛かった。恐ろしくなって、そこに日蓮をおいて逃げ出してしまった。季節は夏の夜とある」
だから、何?
世界のあらゆるUFOの目撃談は夏の夜なんだよ。真冬の目撃談は1つもない。不思議だと思わない?宇宙人は寒さが苦手なのか、あるいは花火大会でも観たいのか」
そんな、ばかな
「答えは夏の夜にあるんだよ。UFOの正体は夏の夜にのみ起きる自然現象が9割だ」
自然現象?
「光る球と書いて光球と呼ばれる現象。雷の置き土産だ。夏の夜に突然ものすごい雷が光って、土砂降りになることがある。その雷が光った後にその光る球が上空に現れるんだ。雲と言うのは上層部は+の電気を、下層部はーの電気を帯びている。地面は+の電気だ。これが雷の起こるメカニズムなわけだけど、激しくぶつかった+とーの電気が一種の爆発を起こす場合がある。それが光球なんだ。自宅に自分で撮影した光球現象のビデオが何本かあるよ。本当にUFOに見えるんだ。雷が消えて数秒後にいきなり現れるからね」
気象の現象なんだ
「気象予報士ならみんな知ってるはずだよ。残る1割は特撮だ。目立ちたがり屋さんのお遊びってとこだよ。UFOは懐中電灯1本で作ることができる。的場先生がよくやって写真を撮らせてた。JAXA相模原キャンパスみたいな、街から離れた場所だと、懐中電灯を夜空に向けるだけで光る球が現れる。それをめちゃくちゃに振り回すと、いかにもUFOが飛んでるように見えるんだよ。街の中でも懐中電灯をレーザ^ポインターに置き換えるだけでUFOになるよ。いつも怒られてたな、的場先生は。AMICAってはやぶさのカメラチームの連中にね、実験の邪魔になるだろうって。先生は文科省で何度も頭を下げ続けて、相模原に戻ってきて、ほっとして飲みすぎて酔っ払っていて、口をもつらせながら謝るんだけど、またやるんだ。子供みたいなところがあって。ああいう人じゃないと対外協力室は務まらないよ。プレッシャーに潰されてしまう」
的場室長って、本当に西田さんと性格的にも似てるの?
「似てるよ。20世紀FOXも、まあ堤幸彦監督がキャスティングしたんだろうけど、はやぶさプロジェクトの映画化の中で、最高の的場先生だ」
そうか、UFOは気象現象が作り出した幻だったのか。
でも、心のどこかで信じていたい。
外宇宙からこのくだらない星にやってくる異星人は必ずいる。
彼らとのコンタクトをきっかけに、地球は人種や宗教の違いを乗り越えてひとつになり、国を越えて地球として交流し、惑星連邦という巨大な組織の一員として機能する。
「蒙古を祈りによって嵐を起こして撃滅したというのも、単に自然現象だ。その年月日の日本のその場所の天候を、スーパーコンピューターにかけて割り出したことがあるんだ。低気圧が前日から停滞していて、暴風雨が起きては止みを繰り返していた。日蓮が祈りを始めて数十分後に低気圧の停滞による暴風雨が発生していた。日蓮も修行を積んだ僧侶だとはいえ、一個の人間だ。気象を操れるわけがない。日蓮宗の信者さんは日蓮の力だと信じているし、歴史の授業ではいまだに日蓮が祈りによって暴雨風を起こして蒙古を撃退したと教えている。逸話としてはおもしろいけど、ちょっと考えたらわかることだろう。まあ、日蓮宗の方々には耳の痛い話か、いや、彼らは頑なに信じるだろうね。それはそれでいい。でも、歴史の授業で嘘を教えるのはまずいんじゃないかな。ぼくの言うことも嘘かもしれないよ」
いいんじゃない
いわしの頭も、って言うから
蒙古の話はわたしも信じてなかった
祈りで気象をコントロールできるなら、気象庁もいらない
遠足の前の日は照る照る坊主をぶら下げて祈れば必ず晴れるんだからね
でも、考えてみたら、雨になった日のほうが多いんだよね
だから、願いって通じないものだと思ってた
はやぶさが還ってくるまではね
でも、今はちがう
願い続ければかなうこともあるんだって思ってる
「JAXAのプロジェクトチーム全員が思いを共有したからかなったんだ。そしてはやぶさの帰還を信じてくれていた日本中の人々の思いが通じたんだよ。そういうことでいいじゃない」
珍しい
科学で解けないことはないと自認する彼が、非科学的なことを言っている。
「いつか、UFO探知衛星でもあげてみたいな。文科省には相手にされないけど」
彼も宇宙からの訪問者の存在を否定はしてないんだ。
そうか。
その日がきたら、ふたりでしようね。
このくだらない星に乾杯!
コーヒーは飲めないからトマトジュースで。