今夜から、またいつもの喧騒の中に戻った。
午後7時頃から、患者さんたちが次々と、一時退院から戻ってくる。
各担当医は、1人ずつ、変わったことはなかったかという問診から診察をスタートさせて、すべての担当患者さんの診察を行う。午後9時には消灯時間になるため、2時間でどれだけのことを患者さんから聴き出して、診察を正確に行うか。
”要領”という言葉ではこれだけは片付けられない。
4F病棟では特に、”チーム”という、医師と看護師がいつも同じグループで動く体制を取っているから、他のチームには負けられない、という競争心も生まれる。
シャーク団とジェット団みたいなものだ。
それは何か?って。
『ウエストサイド物語』だよ。
ミュージカルの定番。
アネさんが、わたしのチームと、彼のチームにそのニックネームをつけた。
張り合っているチーム同士。でも、心でつながっている者が1名ずついる。
彼がトニーで、私がマリア。
ミュージカルでは、チノというストリート・ギャングが、マリアと抱き合おうとしたトニーを背中から撃って、トニーを殺す。それがラストだけど、病棟ではそんなことはない。
ゴールデンウィークもきょうでラスト。
なるべく人ごみの中には出ないように心がけた。
晴れて気温があがったおかげで、街は人ごみで埋まっていた。
彼は社会性不安シンドロームという病気を持っているため、人ごみの中に出ると過呼吸を起こして、苦しみだす。
イオン・ショッピングモールのような超巨大な施設だと、どれだけ多くの人が入っていても、、それぞれが分散しているので、人ごみにはなることはないけど、毎日行っても楽しめないしね。
だからレンタルDVDが必要になる。
レンタルしてきて2人の病室でゆっくりと観る。
動物園なんかだと完全にアウト。
過呼吸が酷くなると、心不全や心筋梗塞になりかねないからね。
本当にトニーとマリアになるから。
社会性不安シンドロームの原因は躁鬱病。
鬱症状が原因だと、精神科医は説明してくれた。
つまり、鬱病が治らないと社会性不安シンドロームも治らない。
彼は精神科医からはっきりと、躁鬱病は一生治らないと言われてる。
だから当然、社会性不安シンドロームも治らないことになる。
わたしも人ごみは苦手だから、別に気にしてないしね。
わたしのは親の教育がそうさせたんだけど。
とにかく街で遊ぶ、ということを認めてもらえなかったから。
そんな時間があるのなら勉強しなさい。
医師になれなかったらどうするの。
現役合格現役卒業でなければ、何の意味もないだろう。
わたしの居場所は、学校と進学塾と、自宅の机の前しかなかったから。
だから、人ごみを観ると、その中に飛び込む勇気がないんだよね。
バーゲンに群がる人たちも、あれはバカの集団だと教えられたから、いまだに馬鹿げてるとしか思えないし。
映画も昼間は混んでいるからダメ。だからレイトショーの上映回しか観ない。
彼のきのうのライブも満席で、ある意味人ごみ。
でも、彼は客席から2m近い高さにいて、客の中に飛び込んでるわけじゃないからなんともない。
もしも、ステージがなかったら、過呼吸で死んでいたかもしれない。
だから、ゴールデンウィークは人が集まるところには出ないようにしようと決めて、実行できた。
彼の病気を理由になんかしない。
人ごみの中にいるとインフルエンザをもらうかもしれないしね、ってことにした。
今年は異常で、4月の下旬にもインフルエンザが猛威を振るっている。
しかも、ワクチンの存在しない型が。
治療薬はタミフルしか使えないんだけど、副作用が危険だし、効果が出ない。
それで彼が日本ではまだ認可されてない治療薬を薬剤師に頼んで、製薬会社から買ってもらって、病棟の患者さんに投与した。
これは効いた。肺癌患者さんのインフルエンザほど怖いものはない。
でも、未認可の薬剤だから、継続して使えないだろうと医師6人は話してたら、アネさんが使えという。厚生労働省は日本という国で未認可にしている。日本という国では未認可でも、この病院では私がルール・ブックだ。役人に好き勝手は言わせない。
それで、彼の通っている耳鼻咽喉科から、アネさんに連絡が入った。
2人は、元・赤十字病院で同僚だったし、病院が隣同士で、耳鼻科でどうにもできないレベルの風邪やインフルエンザなどの患者さんを紹介状でウチに回してくる。
今回も案の定、回されてきた。
未認可薬の投与で回復した患者さんは、口コミ行動に出る。
すると少しずつ、外来にインフルエンザの患者さんが増え、今では本来の肺癌患者さんを上回ってしまった。
ワクチンも、彼が短期間で研究して、新型インフルエンザのワクチンを作り出してしまった。
ほんとに、仕事の合間に2,3日で。
ホームメイドで数人に投与したところ、完璧な効果が上がってきたから、製薬会社に資料を渡して、製品化してもらった。
彼に内緒で、アネさんは、彼の名前で特許を申請してしまった。
これで、また所得税につながる。
白色申告だから、再来年の2月には、また彼を悩ませる結果になると思う。
今年の所得税くらいのものに、ワクチンの特許料が上乗せになるわけで、インフルエンザの予防接種を受ける人々が増えれ場増えるだけ、彼の所得税も増えることになる。
今年の所得税に特許が乗って・・・・・・最低で1500万円は越えるね。
場合によっては、製薬会社がオープンになって複数の会社で大量に製造されれば、3000万円とか5000万円とか。
特許って不労所得に入るんだよね。だから税率が高い。
でも、国は安易に不労所得だと決め付けるけど、確かに肉体的労働がないから不労という見方をするのかもしれないけど、頭脳労働は肉体労働よりも消耗が激しいからね。
でも、役人にはそれが理解できないんだから、どうしようもない。
彼は真面目だから、いつもニコニコ一括納入。
金額が大きすぎて、国が指定した銀行の窓口での納入。
小さな金額だと、市民税(住民税)の納入窓口である信用金庫でいいんだけど、大きな金額は都市銀行(みずほ銀行)でのみ取り扱える。
まあ、2年後が楽しみだね。ワクチンの特許だと、経費も認められないし。
彼のチームの新人の安積看護師の車が運ばれてきた。
親は新車を許可しないから中古を買ったという。
スズキCARA。
彼のAZ-1と何もかもが同じ。
双子だからね。
スズキがマツダに対してAZ-1のエンジンを供給する代わりに、マツダがスズキのためにAZ-1をOEM生産した。それがCARA。
ボディーカラーはレッド。ボディーの下半分はブラック。
ノーマルのAZ-1と性能もガルウイング・ドアも同じ。AZ-1の一卵性双生児だけど、彼はM2スピードヴァージョンに警察用特殊装備が搭載されているから、違う車種に見える。CARAはボンネットにフォグランプがついてないし、リアウィングもない。
もちろん特殊装備のドップラーレーダーとか針を射出して、逃げる車両のタイヤを潰して強引に止めたりもできない。
「いくつもの中古車ディーラーを回ってみて、軽自動車にはない形状と、日産スカイラインRSを思わせるレッドとブラックのカラーリングが気に入って」
AZ-1の危険性がわかってない。
横転やスピンで死ななければいいけど。
彼が危険性については説明して、ハンマーを100円ショップで買ってプレゼントしたらしい。
「もし横転したら、これでフロントガラスを叩き割って脱出しろって言っておいた」
しかし、AZ-1にしてもCARAにしても、中古で出回ることはないから、ものすごい運の持ち主なんだ。
中古で出たとしても、他の車の新車より高値がついてるはず。
まあ、病院の娘だから、親にしてみればそんなことは気にしてないんだろうけど。
一時退院から戻った患者さんの診察はどっちのチームが勝ったか。
判定員のアネさんは言った。
「ドローだな。2チームとも短時間で丁寧な診察をしてデータをあげることができた。見事だ。それから、ハンチョウ、どうだ、またオペの必要のある患者さんを見つけたか?」
「ええ。まず、一通り検査をしてから判断します。今の診察で、腫瘍が散ってる可能性のある患者さんがいたので」
「原発不明か、また?」
「いえ、原発は肺です。電子カルテに記録されてるので。肺からの転移、縦隔転移つきという」
「縦隔転移か。やっかいなことだな。志村は」
「腫瘍が肥大している可能性のある患者さんが。ゲフィニチブ投与ですけど、効果が上がらなかったみたいで」
「男性だろ。まったく、ゲフィニチブってやつは女性には効果があるのに、男性にはない。でも副作用は平等に現れる。まったくやっかいな。一通り検査してオペだな。彼にばかり頼るな。できる範囲なら、彼を前立ちにして、おまえが執刀しろ。5cmだの6cmじゃ仕方ないけどな」
はい
明日からまた浅い眠りの日々が続く。
それが日常に戻るということ。
それに対して文句は言えない。
なぜなら、それはわたし自身が選んだ医師という道なのだから。
午後7時頃から、患者さんたちが次々と、一時退院から戻ってくる。
各担当医は、1人ずつ、変わったことはなかったかという問診から診察をスタートさせて、すべての担当患者さんの診察を行う。午後9時には消灯時間になるため、2時間でどれだけのことを患者さんから聴き出して、診察を正確に行うか。
”要領”という言葉ではこれだけは片付けられない。
4F病棟では特に、”チーム”という、医師と看護師がいつも同じグループで動く体制を取っているから、他のチームには負けられない、という競争心も生まれる。
シャーク団とジェット団みたいなものだ。
それは何か?って。
『ウエストサイド物語』だよ。
ミュージカルの定番。
アネさんが、わたしのチームと、彼のチームにそのニックネームをつけた。
張り合っているチーム同士。でも、心でつながっている者が1名ずついる。
彼がトニーで、私がマリア。
ミュージカルでは、チノというストリート・ギャングが、マリアと抱き合おうとしたトニーを背中から撃って、トニーを殺す。それがラストだけど、病棟ではそんなことはない。
ゴールデンウィークもきょうでラスト。
なるべく人ごみの中には出ないように心がけた。
晴れて気温があがったおかげで、街は人ごみで埋まっていた。
彼は社会性不安シンドロームという病気を持っているため、人ごみの中に出ると過呼吸を起こして、苦しみだす。
イオン・ショッピングモールのような超巨大な施設だと、どれだけ多くの人が入っていても、、それぞれが分散しているので、人ごみにはなることはないけど、毎日行っても楽しめないしね。
だからレンタルDVDが必要になる。
レンタルしてきて2人の病室でゆっくりと観る。
動物園なんかだと完全にアウト。
過呼吸が酷くなると、心不全や心筋梗塞になりかねないからね。
本当にトニーとマリアになるから。
社会性不安シンドロームの原因は躁鬱病。
鬱症状が原因だと、精神科医は説明してくれた。
つまり、鬱病が治らないと社会性不安シンドロームも治らない。
彼は精神科医からはっきりと、躁鬱病は一生治らないと言われてる。
だから当然、社会性不安シンドロームも治らないことになる。
わたしも人ごみは苦手だから、別に気にしてないしね。
わたしのは親の教育がそうさせたんだけど。
とにかく街で遊ぶ、ということを認めてもらえなかったから。
そんな時間があるのなら勉強しなさい。
医師になれなかったらどうするの。
現役合格現役卒業でなければ、何の意味もないだろう。
わたしの居場所は、学校と進学塾と、自宅の机の前しかなかったから。
だから、人ごみを観ると、その中に飛び込む勇気がないんだよね。
バーゲンに群がる人たちも、あれはバカの集団だと教えられたから、いまだに馬鹿げてるとしか思えないし。
映画も昼間は混んでいるからダメ。だからレイトショーの上映回しか観ない。
彼のきのうのライブも満席で、ある意味人ごみ。
でも、彼は客席から2m近い高さにいて、客の中に飛び込んでるわけじゃないからなんともない。
もしも、ステージがなかったら、過呼吸で死んでいたかもしれない。
だから、ゴールデンウィークは人が集まるところには出ないようにしようと決めて、実行できた。
彼の病気を理由になんかしない。
人ごみの中にいるとインフルエンザをもらうかもしれないしね、ってことにした。
今年は異常で、4月の下旬にもインフルエンザが猛威を振るっている。
しかも、ワクチンの存在しない型が。
治療薬はタミフルしか使えないんだけど、副作用が危険だし、効果が出ない。
それで彼が日本ではまだ認可されてない治療薬を薬剤師に頼んで、製薬会社から買ってもらって、病棟の患者さんに投与した。
これは効いた。肺癌患者さんのインフルエンザほど怖いものはない。
でも、未認可の薬剤だから、継続して使えないだろうと医師6人は話してたら、アネさんが使えという。厚生労働省は日本という国で未認可にしている。日本という国では未認可でも、この病院では私がルール・ブックだ。役人に好き勝手は言わせない。
それで、彼の通っている耳鼻咽喉科から、アネさんに連絡が入った。
2人は、元・赤十字病院で同僚だったし、病院が隣同士で、耳鼻科でどうにもできないレベルの風邪やインフルエンザなどの患者さんを紹介状でウチに回してくる。
今回も案の定、回されてきた。
未認可薬の投与で回復した患者さんは、口コミ行動に出る。
すると少しずつ、外来にインフルエンザの患者さんが増え、今では本来の肺癌患者さんを上回ってしまった。
ワクチンも、彼が短期間で研究して、新型インフルエンザのワクチンを作り出してしまった。
ほんとに、仕事の合間に2,3日で。
ホームメイドで数人に投与したところ、完璧な効果が上がってきたから、製薬会社に資料を渡して、製品化してもらった。
彼に内緒で、アネさんは、彼の名前で特許を申請してしまった。
これで、また所得税につながる。
白色申告だから、再来年の2月には、また彼を悩ませる結果になると思う。
今年の所得税くらいのものに、ワクチンの特許料が上乗せになるわけで、インフルエンザの予防接種を受ける人々が増えれ場増えるだけ、彼の所得税も増えることになる。
今年の所得税に特許が乗って・・・・・・最低で1500万円は越えるね。
場合によっては、製薬会社がオープンになって複数の会社で大量に製造されれば、3000万円とか5000万円とか。
特許って不労所得に入るんだよね。だから税率が高い。
でも、国は安易に不労所得だと決め付けるけど、確かに肉体的労働がないから不労という見方をするのかもしれないけど、頭脳労働は肉体労働よりも消耗が激しいからね。
でも、役人にはそれが理解できないんだから、どうしようもない。
彼は真面目だから、いつもニコニコ一括納入。
金額が大きすぎて、国が指定した銀行の窓口での納入。
小さな金額だと、市民税(住民税)の納入窓口である信用金庫でいいんだけど、大きな金額は都市銀行(みずほ銀行)でのみ取り扱える。
まあ、2年後が楽しみだね。ワクチンの特許だと、経費も認められないし。
彼のチームの新人の安積看護師の車が運ばれてきた。
親は新車を許可しないから中古を買ったという。
スズキCARA。
彼のAZ-1と何もかもが同じ。
双子だからね。
スズキがマツダに対してAZ-1のエンジンを供給する代わりに、マツダがスズキのためにAZ-1をOEM生産した。それがCARA。
ボディーカラーはレッド。ボディーの下半分はブラック。
ノーマルのAZ-1と性能もガルウイング・ドアも同じ。AZ-1の一卵性双生児だけど、彼はM2スピードヴァージョンに警察用特殊装備が搭載されているから、違う車種に見える。CARAはボンネットにフォグランプがついてないし、リアウィングもない。
もちろん特殊装備のドップラーレーダーとか針を射出して、逃げる車両のタイヤを潰して強引に止めたりもできない。
「いくつもの中古車ディーラーを回ってみて、軽自動車にはない形状と、日産スカイラインRSを思わせるレッドとブラックのカラーリングが気に入って」
AZ-1の危険性がわかってない。
横転やスピンで死ななければいいけど。
彼が危険性については説明して、ハンマーを100円ショップで買ってプレゼントしたらしい。
「もし横転したら、これでフロントガラスを叩き割って脱出しろって言っておいた」
しかし、AZ-1にしてもCARAにしても、中古で出回ることはないから、ものすごい運の持ち主なんだ。
中古で出たとしても、他の車の新車より高値がついてるはず。
まあ、病院の娘だから、親にしてみればそんなことは気にしてないんだろうけど。
一時退院から戻った患者さんの診察はどっちのチームが勝ったか。
判定員のアネさんは言った。
「ドローだな。2チームとも短時間で丁寧な診察をしてデータをあげることができた。見事だ。それから、ハンチョウ、どうだ、またオペの必要のある患者さんを見つけたか?」
「ええ。まず、一通り検査をしてから判断します。今の診察で、腫瘍が散ってる可能性のある患者さんがいたので」
「原発不明か、また?」
「いえ、原発は肺です。電子カルテに記録されてるので。肺からの転移、縦隔転移つきという」
「縦隔転移か。やっかいなことだな。志村は」
「腫瘍が肥大している可能性のある患者さんが。ゲフィニチブ投与ですけど、効果が上がらなかったみたいで」
「男性だろ。まったく、ゲフィニチブってやつは女性には効果があるのに、男性にはない。でも副作用は平等に現れる。まったくやっかいな。一通り検査してオペだな。彼にばかり頼るな。できる範囲なら、彼を前立ちにして、おまえが執刀しろ。5cmだの6cmじゃ仕方ないけどな」
はい
明日からまた浅い眠りの日々が続く。
それが日常に戻るということ。
それに対して文句は言えない。
なぜなら、それはわたし自身が選んだ医師という道なのだから。