テレビではきょうになっても、きのう北朝鮮が弾道ミサイルの打ち上げに失敗したと報道している。
 しかも北自体が早急に「地球衛星を軌道に乗せることに失敗した」とニュースで、あの独特な口調で認めている。
 彼もスタッフ・ステーションのテレビで観ていて、つぶやいた。
 「体制が変わったことでここまで変わるのか。納得がいかない」
 新しい国防委員長は若いから、国を改革していくんだよ、これから。
 
 若い女性臨床心理士2人は、突然言った。
 「拍手していても、人民代大会で賛成の赤いカードを上げるときも、目に感情がない」
 まさか、臨床心理学上では意思的行動ってやつでしょ。感情がないなんて、心理士が自分の存在を否定するようなことをね、
 「心ここにあらず、ってやつだ。しかも考えていることが眼球の動きから読み取れない。眼球の動きと行動が一致しない。つまり完璧なポーカーフェイスだ」
 彼が続けた。

 つまり、何をやろうとしているのかわからない目だ。日本を壊滅させるようなことを考えているのか、和平に出ようとしているのか、誰にも分からないってこと?。

 「ひよっとすると、あのミサイル自体、計画的に自爆させて失敗に見せかけておいて、本命の核実験から世界の目をそらす作戦なのかもしれない。近いうちに日本にミサイルが降る可能性も大きい。世界をはめてくれたか」
 そういう方向で物を考えない。鬱方向にいったらどうするの?。
 医師は医師の言うことを訊いて行動しなさい。

 でも、失敗は失敗でしょ。
 笑ってやればいいじゃない。
 彼宛にアメリカから来た、彼のコロンビア大時代の友人のメールでは、アメリカではもうギャグのネタになって、みんな笑ってるって書かれてたじゃない。

 あんな失敗ってものすごいお金の損失なんでしょ。日本だと5億5千万だよね
 「まあね。国民の税金でね。申し訳ないよ、国民に」
 でも、JAXAが失敗したのは、田中眞紀子科学技術庁長官時代の1回だけだから
 「はやぶさ」も「あかつき」も「のぞみ」も「イカロス」もちゃんと打ち上がったでしょ
 「あれは、偶然いいほうに出ただけで。「はやぶさ」の打ち上がったときなんか管制室でお祝いにビールで乾杯をしたんだ。対外協力室長のおごりで。打ち上がる方が珍しいんだよ。日本の場合は地球の重力圏を離脱できないという、国民には見えない失敗がほとんど。やっぱり落ちてきたら危険だから自爆させるんだ。失敗の原因は重力圏を突き破るだけの燃料がないからさ。文部科学省が燃料をケチるの。1回の打ち上げに足りない予算しかくれないから、必要なだけ燃料を搭載できないの。「はやぶさ」は本当に最初から最後まで神様がついていてくれたと思ってる。打ち上げに成功しただけじゃなく、任務を果たして帰ってきてくれたんだから。JAXA相模原本部の屋上で、大気圏で燃え尽きる「はやぶさ」を観ていて、なんだかとてもせつなくてね。素晴らしい仕事をしたにもかかわらず燃え尽きるなんて」
 彼が遠い目をしてる。
 「はやぶさ」が好きなんだよね。

 準夜勤務に入る佐橋看護師と紺野看護師が出勤してきた。2人は必ず同じローテーションで動く。
 それに宇野看護師と新人の安積看護師。
 彼の隠し子のねって、ドラマでは親子で、警官で自分の班を率いるハンチョウだし、娘は看護師だしね。それだけ。本当の隠し子じゃないよ。死んだおじいちゃんに訊いてもいいんだから。
 これが深夜といって午前0時から翌朝午前6時までは2人体制。

 「そんな、失敗するようなミサイルに大金を使うなら、国民に食料を配れって。豪勢な、わたしでも食べられないような料理を食べることができるのはほんの一部で、後の国民は餓死するか、雑草を食べて生きてるんだから。贅沢をするからあんな豚みたいな気持ち悪い体になって。何が国防委員長だ。国民を敬え!」
 佐橋看護師の痛烈な言葉に、彼は突っ伏した。

 「他人事じゃないよー。JAXAの打ち上げ成功率は0.0005%。北朝鮮の方が成功確率ははるかにうえなんだ。それだから、もう宇宙探査はきっぱりあきらめて、資金は国民からはぎ取った税金。国民に戻さないといけないよね。国民を敬ってないなーJAXAは」
 
 打ち上げ成功率は0.0005%ね。おもしろいことを言ってくれるじゃない。

 わたしの税金を返せっ、この野郎!。

 2014年の「はやぶさ2」が失敗したら、税金を返すまでフライパンで殴り続けてやるから!