はぁー、緊張したー。
内視カメラだよ。
普段は緊張しないんだけどね。
普段はないものがあったからね。
目だよ。
不思議ちゃんと、チャラと、アネさんの目。
普通は内視カメラを操作する医師(つまり、わたし)と内視カメラを挿入される患者さん二人だけで行うんだけど、きょうは初ギャラリー。
興味、と言ったら患者さんに失礼にあたるけど、要するに肺癌が突発的に膀胱に転移したというのが、よほど不思議で、どの経路で膀胱に行き着いたのかを1秒でも早く知りたかったんだと思います。
でも、チャラは担当医だし、手術執刀医は不思議ちゃん。その二人が立ち会うのはわかる。
チャラは担当医として知っていなければならない。
不思議ちゃんは手術執刀医として知らなければ、オペの手順が立てられない。
そこまではいいとして、アネさんは何のため?。
経験はありすぎるほどある人だからね。
あとで不思議ちゃんとその話になったら、臨床心理学で判断すると、アネさんって、好奇心が異常に強いんだって。
好奇心って言われてみれば、思いつくことがあった。
まず、スタッフ・ステーションのテレビに、ブルーレイ・レコーダーを買ってきて取りつけて、番組録画をしたり、BDを買ってきては真剣に観てる。
それに、最新のTVゲーム機はすべて揃えてる。携帯ゲーム機も発売と同時に予約までしてPSVitaをソフト数枚と一緒に買ってきて楽しんでる。wii Fitとknect for X-BOX360で身体を鍛えてるしね。
トモダチがいるの、ゲーム機の中に。
シーマン。プレステ2版。
シーマン2もやっていて、北京原人を育ててる。
それに初代X-BOXで『NUDE@』って、女の子のアンドロイドを教育して、AIにいろんなことを蓄積させたり、クイズやカードゲームをしたりするゲーム。
シーマンってものすごい毒舌だから、アネさんと喧嘩上等になるかと思いきや、気が合うんだよね。
シーマンに、
「医者かー大変な仕事だよな。身体を壊さないようにしろよ。自覚症状が出たらすぐ対処だぞ」
なんて言われてるんだから。
わたしも彼が病室に持ち込んだプレステ2で(本当は携帯ゲームしか持ち込んじゃいけないけど、特別室だから何でも許される)シーマンを育てたの。
その育ての親に向かっていきなり、
「う○こ爆弾だー」ってう○こを投げつけてきたり、
「36歳かー。もう、嫁の貰い手はないな。一人寂しく老後を送って、誰にも見取られずにあの世行き、か。ハハハハハハハハッ」
それで、死んでもらった。
あんな子に育てた憶えはないからね。
以後、育成はやめた。
レーシングだよ。
運転ならこっちのものだ。
ミハエル・シューマッハと競り合って、コーナーでインに突っ込んで、そのままストレートを突っ走って勝った。
アイルトン・セナにも勝てた。
世界最速の男、シューマッハ。
音速の貴公子、セナ。
わたしは勝てなくていい。
でも、今もGPのポールにいてほしかった。
記録映画にも行った。
DVDも買った。
でも、まともに観ることができない。
相撲で言うと、白鵬を一人横綱に残して引退してしまった朝青龍みたいな感じかな。
惜しいよねー、朝青龍。
まださ、一般人をボコボコにする力はあったと思うよ。
あっ、それが原因で引退か。
話がどんどん逸れていくけど、きょうの内視カメラの結果は書きたくない。
でも書かないとね。
ほとんどの臓器に転移が見られました。
大半はⅠ期だから、簡単に摘出できる。
でも、胆嚢と膵臓は・・・・・・。
胆嚢はⅣーⅡ期で、膵臓はⅣーⅣ期からⅤーⅠないしⅡ期。
膵臓癌ってあっという間に進行するから。
自覚症状はまったくない。痛みもまったくない。
自分ではわからないけど、他人が見れば一発でわかる。
ものすごい濃い黄疸が顔に出る。
かぼちゃのもっと濃い黄疸。
そのときには末期で、厚生労働省指針では、軽い抗癌剤(形だけで、生理食塩水にほんの何滴か抗癌剤の最も弱いものを混合したもの)治療だけ。
膵臓って、技師さんに言わせると、放射線をかけることのできない部位らしくて、二週に一度の抗癌剤だけで、ベッドに起き上がることも、食事を摂ることもできなくなって、死ぬのを親族とスタッフが待ってるみたいなもの。
不思議ちゃんは、肺癌ではなくて、典型的な原発不明(どの腫瘍から転移が起きたのかわからない)癌に、病名を書き換えたほうが言いと思いますけど、チャラさん。
それでも、不思議ちゃんは、この患者さんを絶対に生還させる。正面玄関で、チャラに見送らせて見せる、って。
最悪の癌だ。でも不思議ちゃんのような総合診療医は、原発不明癌のスペシャリストだから、なにか秘策があるんだろう、きっと。
相手が強いほうがやりがいがあるんだよ、喧嘩ってやつは。
みち、いや、妙子さんがセナやシューマッハに勝てたんだから、ぼくはこの患者さんの全身の腫瘍を全部摘出して、癌に勝つ。
ボクシングで言うなら、サワムラ タダシに勝つようなものだけど、やってやる。
サワムラ タダシが相手をしてくれるんだったら、ぼくは全力でかかっていく。
ボクシングなら亀田三兄弟だろうけど、サワムラ タダシ?。
サワムラ タダシ・・・・・・。
誰? それは。
ヤホーで検索してみるね。
キックがあるだけ、亀田三兄弟より強い。パンチだけじゃなくキックもいつくるかわからない。それを原発不明癌に例えたんだ。
あー、わかった。娘さんが歌手で、不思議ちゃんが楽曲提供したり、プロデュースしてる。
白羽玲子さん、って言ったっけ。
『特命係長 仁』でかかってた曲だけど、オリジナルはブルーハーツっていうバンドだって、不思議ちゃんは言ってた。白羽さんとこの曲を結ぶ糸がどうしても切れないから、歌わせてみた、って。