彼と出会って、きょうでちょうど、つい先ほど17年が過ぎていきました。

 この、炎に包まれて壊滅してしまった、神戸市の長田区で。


 きょうは、神戸に来ています。

 昨夜中に、病院のヘリポートからヘリで。

 彼の所属するNPOで、去年、わたしも入会が認められた「サンダーバード」の茨城県つくば学園研究都市にある日本支部から、支部を代表して式典に参加して欲しいと要請があって、アネさんに話したら、

 「行くべきだろう、おまえたちが被災民の心を救ったからこそ、あんなにすばやく復興したんだ。あのとき、TVの報道特番に出ていた専門家たちは誰もが、復興に少なく見積もって30年はかかると断言した。それがどうだ、以前よりも素敵な街になってるじゃないか。あれはボランティア元年といって、個人が、自分のできることを探して、何十キロも徒歩で神戸をめざした結果なんだ。救うことのできなかった命もあるだろう。その人たちも含めて、二人は神戸のおかげでこんなに幸せになりましたって報告してこい。病院はわたしにまかせろ。残念ながらまだ、ぶっ倒れてそのまま這いつくばってくたばっちゃいないからな。わたしの分も祈りを捧げて欲しい」

 ということで、昨夜遅くに、「サンダーバード」のヘリが、ウチの病院のドクターズ・ヘリ用ヘリポートに迎えに来てくれて、今朝、震災が発生した時刻である午前5時46分から行われた式典に参加させてもらいました。

 神戸の街は、きょう一日祈りに包まれます。

 亡くなられた方々の合同慰霊祭とか、たくさんの行事があって、そのすべてに参加させてもらいました。


 合間に、彼の案内で街を散策させてもらって。

 彼は世界一、神戸の街が好きなんです。

 ニューヨークも嫌いじゃない、でも神戸ほど好きな街は世界中に存在しない。

 神戸の話になると、必ずそう断言するんですよね。

 だから、彼の書いた小説やコラムもすべて舞台が神戸であったり、神戸の話題であったり、読むと、神戸以外は文にならないみたいな感じがするんです。

 神戸に対する愛は、はっきり言ってわたしに対する愛より深くて大きいですよ。

 においが好きなんだ。

 彼は言います。

 確かに、日本、それも関西というこってこっての地区にありながら、日本ではないような匂いがするんですよね。

 不思議な街だと思います。

 

 震災のとき、真っ先にヘリからの報道を行った、彼と同じ年齢の有名人・著名人たちの運営するNPO団体「42’s(フォーティーセカンズ)」の女性アナウンサーともお会いできました。

 今は家庭に入り、立派な母親でもありますが、彼女が自身が所属していたTV局へ連れて行ってくれ、あの震災のライブラリーを観ながら、地上から一番乗りレポートを行った男性アナウンサーとともに、いろんな取材の裏話をしてくれました。

 中でも、驚いたのが、その男性アナウンサーが長田区を取材しているときに、突然炎が勢いを増した。どう見ても自然の力じゃなくて人工的にしか思えなかった。

 長田区を取材クルーと徒歩で移動中に、他局のレポートを見かけた。

 消防士が自分の命を投げ出して消火したあとの燃え残りにガソリンをかけて、もう一度火をつけて、アナウンサーに絶叫させる、いわゆるヤラセを行っている。

 それを見たらだまっていられなくて、

 「そんな絵はいらないでしょう。何も燃やさなくてもいい。それは犯罪ですよ」って声を荒げたけど、耳にも入れてくれなくて。まあ、あまり言いたくないけど、東京から来たフジテレビっていうところの朝のワイドショーのクルーだったと後で知りました。ぼくらマスコミは、多少の演出はすることもありますよ。だけど時と場合によります。あのときはそんなことをすべきじゃなかった。それで、局の報道局長に抗議したら、TV局がTV局を直接告訴することはできないが、それに近いBPO(放送倫理審査会)に講義しておく。こっちでもフジの絵は観てる。俺もマスコミだ、あれが自然か人工的なものかは十分わかる。今からBPOに連絡を取るから、おまえは取材に専念しろ。いいか、ウチはヤラセだけはするな。しょぼい映像でも構わん。目の前に救助すべき人がいたら、取材よりそっちを優先しろ。その間はスタジオでつなぐ、って言ってくれて。ですが放火という罪には問えませんでした。なぜならそのときのBPOのトップはフジテレビのトップだったんです。いわゆる揉み消し、ってやつで」

 そういい残して、男性アナウンサーは、『情報ライブ ミヤネ屋』という番組の取材に飛び出していきました。

 「そうだ、あのときだよね、サコちゃんが、そのフジのクルーのやったことを目撃して、真正面からぶつかったのは。それでカメラを奪ったり破壊しようとして取材の妨害をしてる、って、巡回中の警官に突き出されて、警察に連行されて。今のアナウンサーが同じ光景を観たって、警察署に行って証言して、サコちゃんは釈放されたんだったっけ」

 「そうなんだ。ガソリンをかけて何をするかと思ったら、火をつけたから、それは犯罪だろうって。フジのクルーは、衝撃的な絵を送らないと視聴者は観ない。報道の現場ではこれは許される行為なんだ。取材側が悪いんじゃない。衝撃を求める視聴者が悪いって言ったから、頭のどこかがプッツーンといってね。喧嘩っ早かったから、まだあの頃は」

 「それでええんとちゃうの。マスコミにも最低限の常識があるべきやと思うわ、私」

 いきなり関西弁になったっ!。言葉尻がやわらかくてわたし大好き。

 「でも、ノリもよくやったよね。ヘリの下では自宅が火災になっていて、両親や兄弟がどうなっているのかわからない状態で」

 旧姓を脇浜紀子さんというんですね。『ズーム・イン朝』の地方局キャスターの一人でした。

 「いやん、めっちゃとりみだしてたやん。涙で声になっとらんかったやないの、さっきのVを観たら。所詮、私も三流アナウンサーや。一流みたいに冷静にレポートできへんわ」

 それでいいんじゃないですか

 自分の心に素直になれたからこそ、感情を移入してくれる視聴者がたくさんいたと思いますよ

 ヤラセで視聴者を喜ばそうって、わたしも一視聴者として許せません

 ありのままをみせてほしい

 作り物でも、衝撃的な映像を好む視聴者もいるかもしれないけど、わたしは真実を知りたい

 しょぼい映像でも、それが真実ならいいじゃないですか

 「ありがとうございます。そういっていただけると救われますわ」

 あの日、彼女は前日、わたしたちの街で行われた「42’s」のチャリティーショーに出演していて、交通費を浮かすために羽田から東京までモノレールで出て、高速都市間バスに乗った。その中で、ポケベルが鳴り、目を覚まして、バスの中の公衆電話で局に連絡すると、次のPA(パーキングエリア)でバスを降りろ、緊急取材だ。ヘリをPAに降ろすから、それに乗ってレポートしろ。

 場所がどこかを上司は言わなかった。

 それで、ヘリが向かったのは、自分が生まれ育った街だった。

 彼女の実況は改めて観なくてもわかってる。

 『ズームイン朝』が特別枠で放送された中で、彼女のレポートを観て、わたしは取るものもとりあえず、学生用のメディカルキットを持って、数人の同級生と空港に向かった。

 ある場所から、道路がきれいに消えて、マウンテンバイクでさえも先に進めない。

 道を絶たれた人々はうなづきあって、徒歩で神戸をめざした。

 わたしを突き動かしたのは彼女のリポートなんだ。

 嗚咽で言葉が出ない、あのリポートが、何よりも街の惨劇を物語っていた。

 


 夕方からは広場に集められた、竹を斜めに切って作られた灯篭に火を入れて、その場で祈った。

 それから、合同慰霊祭への出席。

 わたしたち医療班が救えなかった命もたくさんある。

 わたしは、そんな命に謝罪をし、これからは一人の命も亡くさないと誓った。

 彼がよくいう、戦争で虐殺を繰り返したから、もう誰の命も奪いたくない。そう思って医者になった。だから、国がどう言おうと、ぼくのやり方でやる。

 その言葉の意味がやっとわかった。

 この街に教えられたんだ。


 今年は阪神・淡路はもちろん、東日本大震災の人々に向けてもメッセージを発するという。

 神戸の人々はものすごく3・11の被害者の方々に共感しているんだよね。

 国もなんだ、あの態度は、被災者がいることなんて忘れてるだろう

 復興ももたついて、観ていてイラつくんだよ

 おれたちが乗り込んでちゃっちゃと街を元通りにしてやるよ

 ああなる前の写真が一枚あれば、元と寸分違わない街にしてやる

 5年もかかるかかからないかでやれる

 約束してもいいぞ

 おれらは復興のプロや

 なんなら今から乗り込もうか?

 「お仕事が」

 なにがお仕事やて・・・・・・そんなもんはどうにでもなります

 それでクビにするやつは、震災経験者やないで

 今は国がどうこう言って妨害しよるけどな、隙を見つけたら、重機ででかい穴開けて、みんなでそこから突入するで

 関西人をなめたらいかん

 もろた恩義は必ず返す

 スズメ百まで踊り忘れずや

 東北のみなさん待っとけやー

 東北の人口よりもたくさんの人間が神戸から乗り込むからなー


 それが、復興に30年はかかると言われた街を5年で元通りにして、その上ルミナリエや、震災前よりもさらに素敵な街にしてしまった、関西人パワーなんだ。

 そうだよ、できるんだ。

 神戸の人たちにインフラや新たな街の建設をお願いして、わたしたちは、人々の心を救う。協力して分担を決めて、東北を元通りにしようよ。


 神戸の時には、チェコやポーランドなど東欧諸国のボランティア・チームが大挙してきていて、どこかで見たことがあると思ったら、チェコの元大統領とポーランドの連帯議長。

 チェコの元大統領は建築士兼大工出身で、仮設住宅を次から次へものすごい速さで仲間と共に建てていくし、ポーランドのワレサ議長は元・電気工事技師で、後から仮設に電気配線を施していく。そのうちに電気配線が、仮設の建設を追い越して、議長が怒ってね、もっとスピードを上げて建てろ。小便に行く暇があるなら壁の一枚でも建てるくらいに白ーいボス。って。痩せてのっぽなチェコの元大統領とチビで恰幅のいいポーランドの議長はずっと漫才だった。

 ポーランドの議長なんか、ヘルメットを斜めにかぶって、完全に土建屋(建設業者)の現場監督に見えた。あれで防寒作業着の胸に「アルプス工業」って入ってたら、完全に、世界の北野さんのキャラクターだよ。「冗談じゃないよ、おめぇ」って。

 そういう要職にあった人たちが、他のボランティアと一緒に缶詰とか、炊き出しを食べてるの。

 彼はアレキサンダーズ・テクニック(アレキサンダー大王がヨーロッパ全土制圧に出かけたときに、一番下の位の兵士と同じものを食べて、同じところで眠った。すると兵隊の士気が上がって制圧が驚くべき速さで現実のものになった、というところから、アレキサンダー大王がしたのと同じようなことをトップの人間がすることを心理学ではそういうんだけどね)か、と言っていた(その頃にはもう、臨床心理学を突き詰めていたんだね)けど、本人たちには、日本のおにぎりとか味噌汁が結構おいしかったみたいだけどね。おにぎりは素晴らしいって言ってた。仕事しながら片手に持って食べることができる、って)


 もっとも話の内容がわかるのが彼だけで、時々処置中に大爆笑したりして周囲をびっくりさせたけど。

 十四ヶ国語を操る彼だから、ほんとにボケとツッコミが日本語のように聞こえてたんだろうね。

 ほんとにあの二人はおもしろかった。

 漫才の本場、関西でよくやったよ。

 あのあとも、世界の至るところで起こった震災に駆けつけて漫才している、って彼が言ってたけど、すごいよ。

 日本で、元首相が復興の現場でヘルメットかぶって自分で仮設集宅を建てたり、インフラの復旧をしたりする?。

 安倍元首相は年齢的にはまだやれるけど、過敏性大腸炎だから、トイレにこもって仕事にならないでしょう。

 閣僚だって官僚だって、誰一人として実働はしないよね。

 訳のわからないことを永田町周辺でわめいてるだけで。


 現場にでてほしいな。

 事件は会議室じゃない。現場で起きてるんだ! 室井さん!

 前東京都知事と同じ名前の刑事さんが、警視庁の中で眉間にしわを作ってる、上をめざす管理官に言ってたでしょ。



 1・17のいろいろな行事はそろそろ全面的に廃止すると、自治体から発表があった。

 だめ。あの日を風化させるのは絶対にダメ。

 第二次大戦だって、いまだに戦没者慰霊祭が行われ、靖国で議論が割れてるでしょ。

 そりゃ、戦争に比べれば震災なんかとてもちっぽけなものでしかない。

 国からの予算が大幅に減額されて、式典費用を出してたら、行政が破綻する、それはわかるよ。

 でも続けないとダメ。

 詐欺的な生活保護需給に、莫大な老齢加算は廃止する。

 普通の受給者は旅行なんかできないのに、老齢加算分で、沖縄も行きました、京都も行きました。海外旅行も行きたいから、取り上げられているパスポートも返して欲しい。福祉課でそういうことをいけしゃーしゃーと言う年寄りがいるんだよ。

 生活保護法で、需給が始まる前に、申請が通りましたという文書が来て、福祉課に呼び出される。そのときに生活保護費を振り込んでくれる預金通帳以外の預金通帳やキャッシュカード、クレジットカード、運転免許証、パスポートは没収。生命保険などの個人保険はすべて解約して、返金されたお金も没収。それと家の中をケースワーカーが二人で調べにきて、贅沢品とされている貴金属、豪華家電品(例えば、3年前から液晶とかプラズマのテレビなんかは市のごみ収集業者のトラックで保管庫に没収。だから、彼がまだマンションにいた頃はブラウン管だった。もちろん新品のブラウン管は売られてないから、リサイクル・ショップで買うと、簡易地上デジタルチューナーが総務省から無償貸与される。それが1局もチャンネル取得できないすごいやつで、実質テレビは観られない。新聞も解約させられるし、世の中から取り残されるのね。それでも以前は子供のおもちゃまで没収していたと、古い生活保護法にはあるから、だんだん改正はされてきてるんだろうけどね。


 わたしは彼の保護廃止届を提出するのについていって、記入させられる書類がたくさんあって、なおかつ就職が決まった先の病院の正式名称がわたしも彼も福祉課でもわからなくて、書類に記入するのに手間取って、福祉課の職員が電話帳にでてるだろ、いや五十音だからわからない。タウンページは病院の名称が変わってからのがないから旧名称だ、結局、他の階の障害者手帳や自立支援医療の窓口までメモを持って調べに行ってやっとわかったみたいな調子で、時間がかかるから周囲の話を聴いてたら、そういうことを訴えてる老夫婦がいたの。

 片方は月に食事は4~5日で、あとは水を飲んで飢えをしのいでいたために3日で70kgも痩せてふらついてるのにだよ。

 お年寄りって言うだけでみんなが何でも言うことを聴いてくれると思って、どんどん付け上がって。ふざけるな!。


 国会議員は歳費(給与)の二重取り。本人が平気な顔で、中継されてる国会でそれを言うかね、普通。民主党の元NHKアナウンサーだよ。二重取りの何が悪いかって口ぶり。

 それに政務調査費という、無限に調達できるお小遣い。

 そういうのをすぱっとなくして、地方に必要な予算を降ろせばいいでしょ。


 節電してください。

 病院でも暖房を極力下げた。室内温度9℃だよ。

 有床病院(入院私設のある病院)は法律で25℃って決まってる。

 でも18℃までなら、毛布を増やしたり(あれも患者さんには苦痛なんだよ。重くなるから身体が痛いの)でしのぐけど、9℃はねー。

 それでいて国会の中ってあったかいでしょ。水呑みが汗をかいて白くなってる。冷たいものを暖かいところへ出すと起こる現象。中学生の理科。

 9℃の世界じゃそれは起きない。20℃以上はあるはずだよ。

 

 とにかく、1・17は風化させちゃいけない。式典も続けていくべきだよ。

 仏教では50回忌まであるでしょ。

 それを十七年あるいは21回忌までで取りやめるなんて、まともな人間の発言じゃない。

 式典を止めてしまえば、人は自然と、1995・1・17を忘れる生き物だから。

 

 それでいいの?